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幕間 勇者たちはお休み

私がこの相談所に来た初日。オッドさんはお店のあらゆるものや設備について教えてくれた。と言っても相談所部分は簡素なソファと机、いくつかの本が置いてある棚や、物が乱雑に入った木箱などが置いてあるだけでとてもシンプルだった。


相談所の奥に二人の居住スペースがありリビング、寝室、キッチンや風呂、トイレなど全てがそこに集約されていた。


「あ、あのーっ…私のベッドは……どこで寝ればいいんでしょうか?」


来て初日で不躾ではあるが見渡しても一つしかないベッドと恐らくシアさんが寝ているであろう棚に置かれたクッションしか見当たらず、湧いた疑問が口から滑ってしまった。


「あ、それなんだけどね。僕たちからのプレゼントってことで…取り敢えず外に出てくれる?シアさん、準備は出来てるよね?」


「ふぁ〜あっ、しょうがないわね…」


シアさんは欠伸をしながら面倒くさそうにてくてくとオッドさんの後ろを着いて行った。


「?」


何が行われるか全く検討もつかなかったが取り敢えず言われるがまま二人に着いて外に出た。


建物の横には木材やレンガ、様々な大きさの石が並べられており未だに何が起こるかりかいできなかった。


シアさんがそれらの前で止まったかと思うと、洞窟で見せた時と同じように高速で呪文を唱え始めた。


その瞬間、積んでいた木材などが空中に浮かび高速で何かが組み立てられていった。


唖然としながら見ていたがものの数十秒で立派な建物が建造されてしまった。


「す……凄いです!」


「離れになっちゃうけど、良かったらここに住んで。家具も一通りは中にあるからさ。」


ようやく理解した。二人は私の為に魔法で家を建ててくれたのだと。決して広い家とは言えないが温かみのある創りの外装にベッドやいくつかの棚や机まで用意してくれていた。


「気に入ってくれた?」


優しく微笑みかけてくるオッドさんと自慢げにこちらを見てくるシアさんを見て思わず涙が出てきた。


「な、なによっ!そ、そんなに嫌だった?!もうちょっと時間があれば…もっと広く作れるって…泣かないでよ、もうっ!」


心配そうにオロオロしてるシアさんを見て涙はより一層溢れ出てきてしまった。


「ぢ、ぢがうんでずぅー、うれ、うれじぐで……わだじのだめにっ、ヒグッ、わざわざ、ヒグッ、ごんなにずでぎなおうぢ、よういじでぐれで……」


状況を理解したシアさんが安心そうにホッと一息ついて先程までの感じに戻り、語りかけて来た。


「ま、まぁ?こんくらい余裕だから適当に作っただけだし?、と、とにかく有難く住みなさいよねっ。」


やがてしばらくの時間が経ち涙も収まってきたが、何か心の中にじーんと暖かいものを感じた。


「有難う、ございます……大切に、使わせていただきます。」


精一杯のお辞儀と感謝を述べるとオッドさんがニヤニヤとしながらわざとらしくこちらに近づいて私の肩を叩きながらシアさんに向けて喋り始めた。


「いやぁ〜、シアさん。昨日張り切りながら木とか石を集めてきてたもんねぇ〜、鼻歌まで歌いながらさ。一回作っては壊し作っては壊し、何度もデモンストレーションしてたもんね。良かったねぇ〜。アズちゃんが喜んでくれて。」


言い終えたところでそれを聞いていたシアさんはプルプルと震えだし、その瞬間にはオッドさんの顔面に向けて飛び掛っていた。


「シャァーーーッ、殺すっ!!!!」


じゃれ合う二人を余所目に私は笑顔が暫く止まなかった。

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