思い出の泉の地下
雅一達を宿泊棟に連れて行った同時刻、本部にいるシュラストは、
異邦人の行動について少し考えていた。
・ラッペン前線基地 本部
シュラスト「・・・。」
兵士「どうかしましたか?シュラスト様」
シュラスト「お前、さっきの異邦人の行動、どう見る?」
兵士「どう・・・と言われましても・・・。」
兵士「まぁ、少なくとも時間をかけても我々につくことはなさそうですけど。」
シュラスト「やはり、お前もそう思うか。」
兵士「そうですね。でもなぜ彼はあんな行動をとったのでしょう。」
シュラスト「あの場で言い争いをしても無駄に浪費するだけだと
思ったんだろう。」
兵士「では、3日間の猶予を与えたのは?」
シュラスト「彼らの仲間であるエラ・ラフェスタを捉える時間を作るためさ。」
シュラスト「流石の我々もあの後すぐに森の中を探し回るのは骨が折れる。」
シュラスト「ましてや彼女はあの監視網で発見した後の情報が一つも入っていない。」
兵士「捜索に時間がかかることを見越して・・・。
でもそれは彼らも気づいているのでは?」
シュラスト「そうだろうね。だからこそ、我々が先に彼女を見つけ出し、
捕獲するんだ。」
するとシュラストは兵士に命令を下す。
シュラスト「良いか、今からエララフェスタの捜索を開始する。」
シュラスト「見つけ次第捕獲し、こっちに連れてこい!」
兵士「わかりました。」
兵士はラフェスタの捜索を行うための準備を行うため部屋を後にする。
シュラスト「さて、どこまで逃げれるかな・・・。」
~一方ラフェスタサイド~
ラフェスタは森の中を縦横無尽に走り回り、ラッペンからかなり離れた泉が
ある場所へとやってきた。
ラフェスタ「はぁ・・・はぁ・・・。」
ラフェスタ「どうしよう・・・結構奥まで来ちゃった・・・。」
ラフェスタ「早くみんなの所に戻って救出しないと・・・。」
ラフェスタ「でも・・・あの包囲網・・・私一人の力だけじゃ・・・。」
ラフェスタは自分ひとりの力では難しいと判断し、綾香とレイシンの援軍が
来るのを待つことにしようとするが・・・。
ラフェスタ「でも、綾香とレイシン。私達の居場所わかるかな・・・。」
ラフェスタ「それに二人がいつ頃これるかもわからない・・・。」
ラフェスタ「情報を共有しようとしても、ここは敵の基地がある、
傍受されて私の居場所がバレたら・・・。」
ラフェスタは今の自分が何もできない状況にあることを悔やむ。
ラフェスタ「一体どうしたら・・・。」
ラフェスタは思い悩むが、泉の風景を見てふと子供の頃を思い出す。
ラフェスタ「そういえば、ここの泉・・・。」
ラフェスタ「小さい頃、お父さんに連れられてよく遊びに来てたっけ。」
するとラフェスタの小さい頃の記憶にお父さんからよく注意されていた事も
思い出す。
ラフェスタ「泉の中心にある小さい島、あそこの大木に行こうとして
お父さんによく注意されてたなぁ。」
・数十年前 ラフェスタ5歳頃
幼少期のラフェスタ「おとうさーん!はやくーはやくー!」
お父さん「こらこら、そう慌てるなって!」
幼少期のラフェスタは泉で思いっきりお父さんと遊んでいた。
ラフェスタ(5歳)「おとうさーん!くらえー!」
お父さん「お、やったなぁー!」
無邪気に遊んでいると幼少期のラフェスタは次に泉の真ん中にある大木まで
競争しようとする。
幼少期のラフェスタ「ねぇねぇ、お父さん、次はあそこまで競争しようよ!」
するとお父さんは優しくラフェスタに注意する。
お父さん「ラフェスタ。ごめんな、あそこは神聖な場所なんだよ。」
幼少期のラフェスタ「神聖な場所?」
お父さん「そう、我々猫族が代々ずっと大切に守ってきた場所なんだ。」
お父さん「下手に近づいて荒らしたりなんてしたら呪われてしまうぞ~。」
幼少期のラフェスタ「の、呪われるの!?こ、怖いよー。」
お父さん「大丈夫。何も変なことをしなければ何にも起きないから。」
幼少期のラフェスタ「本当?」
お父さん「あぁ、本当だ。」
幼少期のラフェスタ「わかった。お父さんの言う事、守る!」
お父さん「お、いい子だ。流石は我が自慢の娘だ!」
・そして現在
ラフェスタ「あの時は、お父さんの言葉が怖くて遠くから見るだけだったけど」
ラフェスタ「よくよく考えてみたら、詳しい事は全く教えられてなかったな。」
ラフェスタ「おじいちゃんにも聞いてみたものの似たような回答だったし・・・。」
ラフェスタ「やっぱり気になるな・・・行ってみるか・・・。」
ラフェスタは腰を上げて泉の中心にある小島へと向かった。
ラフェスタ「ひぃぃぃ!?水冷たぁぁぁ!!」
冷たい泉の中をゆっくりと歩いていきながら中心の島にたどり着く。
・泉の小さい島
ラフェスタ「つ、冷たぁ・・・。やっぱり冬の真水は・・・。」
ラフェスタは炎魔法と風魔法で濡れた所を乾かして、大木の根元にたどり着く。
ラフェスタ「この木ってこんなに大きかったんだ・・・。」
ラフェスタは大木の大きさに感心していた。すると大きい大木の根本に
なにかのリング上のくぼみがある石壁を発見する。
ラフェスタ「なにこれ・・・。」
ラフェスタ「このくぼみ・・・なんだろう?リングっぽいけど・・・。」
ラフェスタ「もしかして、ここにリングをはめろって事なのかな?」
ラフェスタ「でも・・・こんなリング私持ってたっけ・・・。」
するとラフェスタは誕生日プレゼントでもらったリングを思い出す。
ラフェスタ「まさか・・・。」
ラフェスタはリングを取り外し、石壁のくぼみに合わせてみる。
するときれいな形でリングがくぼみにハマる。
ラフェスタ「はまった・・・。」
すると次の瞬間、石壁が一瞬光りだし、石壁の中から
地下につながる階段が突然現れたのだ。
ラフェスタ「階段?なんでこんな所に・・・。」
しかし中は明かりがなく1m先も見えないほど真っ暗である。
ラフェスタ「リライト!」
ラフェスタ「いって・・・みるか・・・。」
ラフェスタは小さい光の玉を生み出し、
リングを回収した後に慎重に階段を降りていく。
階段を降りていくと地下はすべて石造りの人工物で
構成されているそこそこ空間へとたどり着く。
ラフェスタ「こんな人工物が・・・。」
ラフェスタは光を照らしながらあたりを見回す。すると石壁には様々な壁画が
描かれており、この空間の歴史の古さを体感する。
ラフェスタ「なんて古い壁画・・・。」
ラフェスタが更に奥へ進むと、台座を見つけその台座の上には古代の絵と古代文字が
掘られている石板を発見する。
ラフェスタ「石板・・・。絵は・・・これは・・・崇めてるのかな?」
ラフェスタ「一人の猫族の少女が、みんなから崇められてる感じだけど、
神として崇めてる感じではなさそう・・・。」
ラフェスタは上に書いてある古代文字を確認する。
しかしあまりにも古すぎる為に全く読めない。
ラフェスタ「駄目だ、なんて書いてあるのかさっぱり・・・。」
ラフェスタ「レイラやペイセルが翻訳した時よりも更に古い文字っぽいし・・・。」
すると、ラフェスタの持っていたリングが赤く光りだす。
ラフェスタ「リングが・・・光ってる?」
ラフェスタ「もしかして・・・。」
ラフェスタはゆっくりとリングを石板の上に近づける。
すると石板の置いてある台座を中心に空間全体に美しい青い光が灯り始める。