歴史に染まる
アタシ達三人は緑の街から逃げ続けていた。
森、川、さまざまな場所を抜けて、、、
そんな時ある人物に会って足を止めてしまった。
女神、、、様、、、?
アタシをこの世界に誘った彼女が
誰かと一緒に歩いていたんだ。
女神様!
アタシがそう叫んだ。
その瞬間!
とてつもない殺気がアタシ達三人に襲いかかってきた。
その殺気は女神様の隣にいた奴から出てきていた。
それと同時に奴はこう言った。
俺の名はチュウジュウ!
貴様らは何者だ!
アタシは答える。
アタシの名は透!
アンタの隣にいる彼女の知り合いだ!
少しの間話をさせてほしい!
しかし、女神様は、、、
ワシの名はヒヨージョ!
お主は知り合いだと言うが、、、
透ぅ?
そんな奴知らんのぉ?
そう言った。
あんな特徴的な喋り方をしてるんだ。
他人の空似な訳がない。
じゃあ何故しらばっくれるんだ?
アタシは困惑する。
更に続けて女神様は言った。
緑の街から脱走者が三人出たから来いという
要請を受けたんじゃが、、、
もしかしてその三人というのはお主らか?
なら逃すわけにはいかんわなぁ。
やれ!チュウジュウ!!
するとチュウジュウという男が手から光弾を放つ!
そしてみるみる動物の形になっていった。
ヘラジカだ。
アタシ達に向かって突進してきている。
アタシは植物を前方に生やし、ガードしようとするも
難なく破壊されアタシ達は横に避けざるを得なかった。
チュウジュウに視線を合わせる。
すると奴はホッキョクグマ、ライオン、トラなどの
猛獣を生み出していた。
奴の能力は光を集めて動物を具現化することらしい。
間髪入れず猛獣三匹と先に生み出されたヘラジカの
攻撃が入る。
するとガガっと何かが刺さる音がした。
アタシの仲間の女看守が堕天使モードになっていた。
動物達にあの禍々しい矢のようなものが
無数に刺さっている。
そして彼女は言う。
猛獣が増えるならキリがない!
さっさと逃げるぞっ!
こうしてアタシ達は一斉に逃げ始めたが、
何故か女神様達は追ってこなかった。
透たちが逃げた後、チュウジュウが声を出す。
ヒヨージョ様、、、何故止めるのですか?
彼の背中にヒヨージョの拳がとんと当たっている。
そして彼女は言った。
石持たせたヒゲワシを数匹飛ばしとったじゃろ。
殺意が高過ぎじゃ。
それにワシはお前に言ったよなぁ。
奴はこの世界を変える逸材じゃから
強くなってもらわんと困ると。
するとチュウジュウは機嫌が悪そうに言う。
大体あなたは!
透が捕まった時に生け捕りにしとけって
緑の街の下っ端に伝えて!
本来、あんな奴その場で殺すのが光の一族の常識です!
それを阻止するなんて!
挙句には逃すなんてあなたの評価が悪くなるでしょう!
彼に様々な文句を言われたが、
ヒヨージョは全く反省している様子では無かった。
そして彼女は言う。
ワシはなぁこの光の一族が調子に乗ってる、、、
この世の中が気に食わんのじゃ。
これくらいのことでビビっておいては
ダサいじゃろうが!
お前はこの思考を持った
ワシに出会ったからこそお前の今があるんじゃろ?
その言い草に対してチュウジュウは
まあ、それはそうですけど、、、
不満げにそう言った。
それにしても光と闇属性を同時に手に入れるとは、、、
透は本当にワシをワクワクさせてくれるのぉ!
彼女はそう言って笑みをこぼした。
場面が変わって、、、
逃げ切ったアタシ達は森で洞穴を見つけ、
ようやく話し合うことができた。
アタシは言う。
さっき名乗ってたけど、、、
アタシの名前は透。
アンタらは?
まずは女看守から名乗り始めた。
私はヤミィだ。
私がいて助かったな。
お前。
アタシは思った。
生意気なくせにえらく可愛らしい名前だと。
次に緑属性の子が名乗った。
私はリーファです。せっかく助けてもらったのに、、、
さっきから役立たずですみません、、、
アタシは思った。
礼儀正しい子だな。
誰かと違ってと。
それぞれが名乗り終わった後、ヤミィが話を切り出す。
お前は一体何なんだ?
闇属性も効かない、光の一族に反抗する。
何もかも無茶苦茶だ。
それに続くようにリーファも言う。
そうです!
私もあなたが現れてからは召喚されたり、
能力を模倣されたり、、、
不思議なことの連続なんですから!!
アタシは
こいつらいきなりぶっ込んでくるな。
でもまあ長い付き合いになるだろうからと思い、
昨日からあったことを一から十まで二人に話した。
二人は困惑する。
異世界だと?
何がどうなっているんだ!?
ヤミィがそう言う。
突拍子もないですけど、、、
あんなこと体験してしまっては、、、
リーファがそう言う。
しばらく経った後、ヤミィがアタシに話しかけてきた。
お前、私の手を取ってみろ。
堕天使モードになったヤミィがアタシに手を差し出す。
アタシがヤミィの手に触れてみた瞬間!
アタシの体からあの堕天使の羽が少し生えてきた。
そしてアタシの目に映るヤミィの色が変わった。
その事に喜ぶアタシ。
だがそれと同時に激しい痛みが手を襲ってきた。
恐る恐る手を見ると黒い何かが侵食してきている。
まさかと思い能力を解除したら
一気にそれは無くなっていった。
なるほど、、、
アタシは光✖︎闇という相性最悪の力を使った。
属性で弱点を突かれるとこうなるわけか、、、
どうりでリーファが闇属性を恐れていたわけだ。
アタシはそう思った。
アタシの様子を見てヤミィはこう言った。
成程、お前は本当に手を触れた相手の能力を得られる。
そしてそれを全て解除した今の状態、
名付けるなら無属性、、、
それで相手と弱点関係なく戦えるという事だな。
アタシの手の心配をしろコノヤロォ!
アタシは奴にキレかけたが、
それより言いたい疑問が出てきたからやめた。
お前なんでアタシみたいにならないの?
そうアタシは言った。
なんであんな激痛の中数十いる相手に攻撃できるんだ?
そう思ったからだ。
それに対してヤミィは返答する。
言っておくが、、、多分お前のような激痛はない。
それについては私にもよくわからん。
だが、心当たりがある。
私は光の一族の中でも上流階級の生まれでな、、、
かつて上流階級には他種族と交配し、
全ての属性を扱える、、、
最強の子孫を作ろうと言う時期があった。
今ではトップ層の許可がなければできない。
何故ならこれのせいで
光の一族間で大きな格差が生まれてしまったからだ。
それにあまりにも手段が強引なものだった。
なんせ結婚相手がいる人間にもやってたらしいからな。
もしトップ層の許可なくやると、、、
相手の他種族を闇属性にする決まりになっている。
ハイハイ血統ですか
ってえぇ!?
アタシはヤミィの話を聞いてこう驚いた。
そしてアタシはヤミィに問いかける。
他種族を闇属性にするってどういう事だ!?
光の一族は闇属性から市民を守るんじゃないのか!?
それに対してヤミィはこう答えた。
ああ、お前はこの世界の歴史を
何も知らなかったんだよな。
説明してやる。
かつてこの世界は闇属性に支配されていた。
女子供を襲う奴がいるのも当たり前、
土地も低品質にされてしまっていたんだ。
そんな時に現れたのが光の一族だ。
闇属性の位置がわかる仕様を作り、
即座に裁けるようにした。
土地も能力で肥沃なものにした。
この世界は段違いに豊かになったのだ。
だが、
闇属性でない昔の一般住民にも悪い奴が一定数出始めた。
そこで光の一族がそいつらを闇属性化し、
裁くというルールを作る事となったのだ。
罪を犯すごとに闇属性が表面化していくというわけだ。
悪者が誰にも救われず、人を傷つけて孤独になるという
呪いをかけるためにな、、、
昨日お前が邪魔した儀式もそのためにある。
何故アタシはこうもこの世界の闇に触れてしまうんだ。
ただ色集めしたかっただけなのに、、、
アタシはそう思った。
重苦しい空気になる。
するとリーファが
つっ次、、、どこに行くか決めましょうかぁ!?
そう叫んだ。
明らかに声が震えている。
天使か?
アタシはそう思い、ホッコリした。
それと同時に、某堕天使と二人だったら
こんな事にはならなかったなとつくづく思った。
ヤミィも
確かにそうだ。
だとすると、、、一番良いのは
ジャッジメントクロの所か。
アタシが聞いたことのある名前が飛んできた。
そういやジャッジメントクロって何だ?
アタシはヤミィにそう質問した。
ヤミィは答える。
闇属性になった者には
やむを得ずなった者も一定数いる。
例えば愛する者を殺された時に復讐をしてなったとか。
そういう不憫な者達を救おうと活動しているのが、
ジャッジメントクロだ。
奴らは全員が闇属性の人間で構成されている。
だが、光の一族はコイツらを見つけられない。
闇属性になった者は
位置情報が光の一族にバレるはずなんだが、、、
奴らは何故かそれをすり抜けている。
本当に不思議な組織だ。
でもそれが今の私達にとって厄介だ。
なんせ場所がわからないんだからな。
私達も見つけられないかもしれない。
というか匿ってくれるかも怪しい所だ。
つまり期待しないほうが良いってことだな。
アタシはそう思った。
それじゃあ、、、
そいつら探す前に赤の街、青の街どっちかで
アタシが強力な能力を手に入れるってのはどうだ?
戦力増強って奴だ。
アタシは二人にこう提案する。
二人はその意見に賛成してくれた。
でもこの意見にも問題あるなとアタシはすぐに気づいた。
アタシ達って顔割れてないの?
顔バレてたら街に入るなんて無理じゃない?
アタシらの似顔絵とか貼られたりしたらさ。
アタシはまた仲間に質問を投げかける。
するとヤミィが言った。
いや、、、多分大丈夫。
さっき私が言った通り、
光の一族は闇属性になった犯罪者を即裁くのが基本だ。
これのお陰で犯罪者の似顔絵を出したり、
顔を覚えたりする必要があまりなかった。
真面目に仕事をやってきた
私でさえ犯罪者の顔は半分くらい記憶にないからな、、、
それはそれでどうなんだとアタシは突っ込みたくなったが、
まあそれならアタシ達にとっては大丈夫かとも思った。
こうして赤の街に行くか、
青の街に行くかの多数決が始まった。
結果は、、、
赤の街 2人 アタシとヤミィ
青の街 1人 リーファ
だった。
リーファが泣きそうな顔で訴えてくる。
何で全員が有利取れてる青の街じゃないんですかぁ!?
私すぐ死んじゃいますよぉ〜!?
アタシは彼女にこう返答した。
アタシは敵意を見せないことが大事だと思う。
そうすれば相手の警戒も薄れるかもしれない。
アタシは戦いが好きなわけじゃないんだ。
というかアタシ達の能力って何もかも破壊しがちで、
戦ったら犠牲者が出そうで嫌だし、、、
ヤミィも便乗するように言う。
赤属性の人間は基本的に性格が良い。
だが、青属性の人間はかなりドライだ。
それに赤属性の人間は
闇属性を返り討ちにできるくらい強いから、
光の一族ががあまり寄ってこないのも良い。
しかもそこを守っている火神龍もいるしな、、、
心配するな。
万が一の事があったら逃がしてやるくらいできる。
それって結局危険じゃないですかぁ!!
リーファが文句を言う。
そう言われても
今のアタシ達に安心できる所なんて
そもそも無いのということで
強制的に連れて行く事にした。
恨みますからねぇーっ!
リーファの叫びが森に響いた。