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六、朱に染まる三方ヶ原

 夕陽に紅く染まる草原に武田軍の諸将の号令が飛び交い、戸惑う徳川・織田軍に対して鉄砲の音の後に矢の雨が容赦なく降り注いだ。


「うあああああああああ‼︎ ……いったい! 何が起きとるか⁉︎」


 何が起きたかも分からぬまま、徳川・織田の前衛の将兵はバタバタと倒れていく。

 更に武田軍は手を緩めず、得意の騎馬特攻で連合軍に襲いかかった。

 山縣・内藤・馬場といった武田の主力が徳川の兵を討ち取っていく。


「いけっ! 家康の首を取れ‼︎ 敵将の首を取るのはこの赤備えよ‼︎」


「うわぁぁぁぁぁ‼︎ 山縣隊だぞ‼︎ あの赤備えが攻めてくるぞ‼︎」


「こっちは馬場隊だぁ‼︎ クソッ‼︎ 武田の兵が強いじゃねえか……!」


「……うっ‼︎ ぐぅ! おのれ! 武田めぇ……!」


 態勢の整わぬまま、徳川軍は陣奥深くまで武田の侵入を許す。

 騎馬兵の一隊が大将の一人と思しき士を見つけ、たちまちのうちに側近もろとも包囲すると殲滅し、大将を馬上から引き摺り下ろす。


「大将見つけたぞ‼︎」


 そして、地に組み伏せると刀をその首に向けて振り下ろした。


「グッ‼︎ ぐはあっ‼︎」


成瀬藤蔵なるせとうぞう討ち取ったりーー‼︎」


 同様の戦果は戦場の所々で繰り広げられる。


「中根正照討ち取ったぞーー!」


「青木貞治討ち取った‼︎」



 邂逅から数分もせぬ内に次々と徳川軍の諸将が討ち取られていく報告が家康と佐久間の元へと寄せられる。


 織田の陣の佐久間は陣とも言えぬ奥の馬上で冷や汗を流しながら続々と運び込まれる凶報に唇を噛む。


「……くっ! まずいぞ! まずは徳川殿を撤退させねばならぬ……!」


 飛び込んできた伝令兵が膝を突き、佐久間に青い顔で報告する。


「ご報告します! 平手汎秀さま、お討ち死に‼︎ 敵陣に突入する見事なご最後でございました!」


「……なにぃ⁉︎ 織田方にも損害が出始めておる! まずいぞ……」


 平手と言えば織田の有力武将である。

 遂には織田方の将にまで損害が出始めた。

 武田は鬼のように恐ろしく強い。

 ……そろそろ撤退を考えないといけない


「はっは! こりゃあ、ダメじゃな。どんだけ死人が出るか見ものだわ」


 馬鹿笑いが考え事をまとめる佐久間信盛の癇に障り、思わずその若侍の頭を思い切り叩く。


「ええい‼︎ 貴様はわろとる場合かっ‼︎」


 頭を押さえながらその太々しい侍は佐久間の肩をどんと叩き、不敵な笑みを浮かべた。


「いってぇ‼︎ ああ! もう! いちいち叩くなや! とっつぁん‼︎ アンタは兵を纏めて逃げな。これ以上損害が出ないうちにな」


 そう言うと仙石秀久は馬に乗ると背を見せパカパカと歩き始める。

 佐久間は戸惑いながら側近を見遣った。


「お、おい! 仙石‼︎ お前はどうするんじゃ⁉︎」


「儂も逃げてえのは山々ですがね、藤吉郎さまに厳命されとるんですわ」


 言うことを聞かないらしい仙石に呆れなから、気を取り直した佐久間は全軍に撤退命令を下した。


「どこへ行く⁈ ええい! もういい! 全軍撤退する‼︎」

※この頃の武将たちの年齢 参考までに

佐久間44歳

仙石 20歳

忠勝 24歳

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