第九話 お風呂は癒しの時間です!
一人でお風呂を意図せず勝ち取ったラテル。
しかしそのま幸せなバスタイムになるはずもなく……?
どうぞお楽しみください。
広々とした湯船。
漂う湯煙。
絶え間なく響く水音。
「ふわぁ……! 大きいお風呂、最高……!」
ラテルは湯船いっぱいに身体を伸ばしました。
あの後お風呂に入る順番を相談し、
「安全を確認する」
とリュンヌが一番風呂を申し出て、
「なら次は俺様だな」
とエトワルが声を上げ、
「私は鍛錬をして最後に入るから、エトワルの次にラテルが入るといい」
という事で、三番目にラテルが入り、最後にソレイユが入る事となりました。
「今日は色んな事があったなぁ……」
ラテルはお湯をすくったりこぼしたりしながら、今日一日の出来事を思い返します。
王様から勇者の任命。
ソレイユの同行。
酒場でのエトワルとリュンヌとの出会い。
魔物を退治しての村までの道のり。
宿の部屋を分けたいという提案を受け入れてもらえた事。
食事の時のそれぞれの変わった食べ方。
自然とラテルの顔に笑みが広がります。
「皆いい人だなぁ……。しっかりしてるソレイユ、強くて格好良いエトワル、色々教えてくれる優しいリュンヌ……。皆と旅ができて、僕って幸せだ……」
ラテルがとろけそうな笑顔を浮かべたその時です。
(!? 鎧の音!?)
脱衣所から聞こえてきた鉄の擦れる音に、ラテルは文字通り跳ね起きました。
ソレイユが脱衣所に入ってきたという事実に、ふわふわしていた幸せな気持ちは吹き飛びます。
(と、とにかく僕が入ってるって言わないと! あ、でもそうしたら『一緒に入ろう』とか言うかな!? ど、どうしよう!)
その間にも、ソレイユが鎧の金具を外しているであろう音が聞こえてきました。
もはや一刻の猶予もありません。
「あ、あのさ! ソレイユ! ぼ、僕まだ入ってるんだ!」
「ラテル!? ま、まだ入っていたのか!」
「ご、ごめんね! ちょっとのんびり入ってたんだ! すぐ出るから、その、ちょっと、そ、外で待っててくれない、かな……?」
言いながらラテルは絶望感に支配されていました。
ソレイユは既に鎧を脱ぎ始めています。
そしてラテルを男と思っているはずです。
脱衣所から出る理由がありません。
(こ、こうなったらソレイユにだけは、僕が女の子だって事、話しちゃおうかな……)
しかし、
「す、すまない! すぐに出るから、ちょっと待ってくれ!」
「え!? あ、う、うん、ありがとう……?」
慌てた様子のソレイユの声と共に、慌ただしい金属音が響くと、扉を開けて閉める音が聞こえました。
思いもしなかった展開に、ラテルの心を安堵よりも困惑が支配します。
「助かった、のかな……?」
少しの放心の後、ラテルは脱衣所に上がり、服を身に付けました。
「……バレて、ないよね……?」
読了ありがとうございます。
おや……!? ラテルの様子が……!
いや……!? ソレイユの様子が……!
へんかがとまった……!
誰だBボタン押した奴!
次話もよろしくお願いいたします。