第五十六話 魔王の城に突撃です!
いよいよ魔王の城へと向かうラテル一行。
果たして魔王を倒す事はできるのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
心の重荷を降ろしたラテル一行は、まさに破竹の勢いで魔王の城を突き進みます。
行手を塞ごうとする魔物を、ソレイユの剣が、エトワルの魔法が、リュンヌの体術が、そしてラテルの剣と魔法の複合技が蹴散らしていきました。
「みんな、大丈夫!?」
「あぁ、問題ない」
「少し物足りねーくらいだぜ! 魔力もまだ全然余裕があるし、こりゃ余裕だな!」
「慢心は危険。次の部屋に罠の気配」
リュンヌの言葉で全員に緊張が走ります。
手招きをされたエトワルが、後ろを警戒しながらリュンヌに並びました。
「どんな罠だ」
「音からして床に電撃」
「成程な。なら俺様の魔法で……」
エトワルが魔法を使うと、足元に現れた硬い感触に、全員の身体がわずかに持ち上がります。
「わ! 何これ!?」
「空気を固めて足場にする魔法さ。これは電気を通さないし、浮力があるから沼でも歩ける」
「うむ。これなら戦いにも支障はないな」
「では進む」
扉を開けて進むと、リュンヌの読み通り火花を散らす床が出迎えました。
しかしてエトワルの魔法がその紫電を全て弾きます。
「エトワルが仲間でいてくれてよかったよ!」
「お、おだてたって何も出ねーぞ!」
「おだててなんかないよ。心からそう思ってる!」
「……おう……」
エトワルは顔を逸らすと、もう必要のないはずの仮面をつけました。
「どうしたエトワル。何故仮面をつける?」
「う、うっせーな旦那、じゃなかった、そ、ソレイユ……!」
「顔が赤いのを隠す為」
「お前も余計な事言うなリュンヌ!」
魔王の城の中だと言うのに、隠し事のない四人の空気は明るく和やか。
しかしその空気をソレイユが引き締めます。
「しかしここは玉座の間のように見えるが、魔王の姿はないな」
「あぁ。ご丁寧に人間の骨まで置いて、侵入者をびびらせようって訳か」
「悪趣味」
「じゃ、じゃあ魔王はここにはいない、のかな?」
恐る恐る言うラテルに、三人は首を横に振ります。
「いや、ここまでの城の豪勢さからすると、ここが魔王の居城というのは間違いないだろう」
「それに魔力が感じられるんだよ。俺様程ではないが強い魔力をなぁ」
「世界はくまなく巡った。ここ以外に行けるところはない」
「そうだね……! じゃああの扉の先かな?」
ラテル一行は玉座の正面の扉を開きました。
その先には中庭、そして大きな池の中央に地下への階段が見えます。
「あの下、かな……」
「そのようだな」
「へっ、びびって隠れてんのか、それとも何かの儀式の最中か……」
「罠の可能性。慎重に」
最終決戦の予感に、全員が武器を握り直しました。
「じゃあ、行こう!」
「あぁ!」
「おう!」
「了解」
ラテルの号令に応える三人。
長い旅が今、終わりを迎えようとしていました。
読了ありがとうございます。
次回、いよいよ魔王との対面です。
そこにはラテル達が思いもしなかった展開が待ち構えていました……。
次回もよろしくお願いいたします。




