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第五十二話 宝には試練が付きものです!

魔王の城へ向かう『天球儀』の存在を知ったラテル一行。

その起動に必要な『蒼の鉱石』を手に入れるために、『星の腹』と呼ばれる洞窟を目指しますが……?


どうぞお楽しみください。

 『星の腹』。

 魔王の城に行くために必要な『天球儀』を起動させるための核となる『蒼の鉱石』を始め、多くの鉱石を産出する洞窟です。

 海賊達のアジトで一泊したラテル一行は、翌朝『星の腹』のある島へと船を進めていました。


「うーん、快調快調!」

「この分なら昼過ぎには着けそうだな」

「そしたら天球儀を探して、見つかればいよいよ魔王との決戦か! 腕が鳴るぜ!」

「旅も終盤」


 そんな中、ラテルがふと疑問を口にします。


「そう言えば、おかしらさんが言ってた『星の腹の試練』ってなんだろう?」

「ふむ、『噂程度の話で詳しくは知らない』と言ってはいたが、確かに気にはなるな」

「あれじゃねーの? 盗掘防止に噂を流しておいた、とかそんなもんじゃねーの?」

「一理ある」

「……」


 エトワルとリュンヌの楽観的な言葉にも、ラテルの不安は拭えません。


「……大丈夫かな」

「何、私達は魔王を倒すという大きな試練に向かっているのだ。その程度の試練など、簡単に乗り越えてみせよう」

「そうだぜラテル。俺様達がいるんだ。どんな試練だろうとちょちょいのちょいだぜ!」

「余裕」


 不安に沈みかけていたラテルの心が、三人の頼もしい言葉で上向きになりました。

 大きく頷いたラテルは、満面の笑みを浮かべます。


「そうだよね! 四人で力を合わせれば絶対乗り越えられるよね!」

「その通りだ」

「任せとけって!」

「気楽に」

「うん」


 そうこうしているうちに、船は目的の島へと到着したのでした。




 島に着いたラテル一行は、島民から話を聞いて、『星の腹』の入口までやってきました。


「あの、ここで『蒼の鉱石』っていうのが採れるって聞いたんですけど……」


 入口に立つ聖職者風の男にラテルが尋ねると、男は静かに頷きます。


「えぇ、ここで採れますよ」

「良かった! じゃあそれをもらうにはどうしたらいいですか?」

「この『星の腹』は普通の人ではまともに採掘などできませんので、必要とあればご自身で採ってきていただく事になります」

「……中は危険なのか?」

「魔物が出るのか? それとも罠か?」

「どちらも問題ない」


 男は今度は静かに首を横に振りました。


「ここに魔物は存在しません。罠もありません。ただ、特殊な鉱石のせいなのか、この中では自らの心の声が音として聞こえるようになります」

「!?」

「思った事全てが、まるで洞窟から語りかけられるように響くのです。故に採掘場としてよりは、修行の場として使われる事の方が多いのです」

「……!」


 男の言葉に、全員が絶句します。

 短くない沈黙の後、ソレイユがかろうじて口を開きました。


「……その、心の声というのは、自分だけに聞こえるものなのですか?」

「いえ、誰もが聞く事ができます。あなた方四人で入れば、四人分の声が洞窟の中に響く事でしょう」

「……それを防ぐ方法は……?」

「心を澄ませる事です」

「……それ以外には?」

「それ以外に方法があれば、この『星の腹』は希少な鉱石を求める者達に掘り尽くされていたでしょう」

「……成程」


 再び重い沈黙が降ります。

 次に口を開いたのはエトワルでした。


「や、やめとかねーか? 別に天球儀が魔王の城に行く唯一の方法って訳でもないだろうしさ!」

「……うむ、確かにそうだな。ここで危険を冒す必要もあるまい」

「同意」

「う、うん……」


 島に来るまでの勢いはどこへやら。

 及び腰になる三人に、ラテルも頷きかけました。


(この中で「僕が女ってばれたらどうしよう……)って考えたら、それがみんなに聞こえちゃうって事だよね……。でも『蒼の鉱石』がないと……)


 その時です。


「そうだ! 僕一人で行けばいいんだよ!」


 ラテルは自分の思い付いた考えに興奮しました。


(それなら僕が女って事もばれないし、声が聞こえるだけで魔物がいないなら楽勝だもんね! うん! 名案!)


 しかし他の三人は目を剥いて反論します。


「何を考えているんだラテル! 危険が過ぎる!」

「そうだぜ!? 中で動けなくなっても助けに行けねーんだぞ!?」

「無謀。止めて。お願い」

「え、え!? 危険って何が!?」


 ラテルの言葉に、三人は言葉に詰まりました。


「……いや、だって自分の心の声など、聞き続けたら頭がどうにかなってしまうだろうし……」

「確実に拷問だろ……。修行なんて生優しいもんじゃねーぞ……」

「無理」

「何で?」


 きょとんとするラテル。

 その様子にソレイユは溜息をつき、エトワルは頭を掻き、リュンヌは覆面の下で小さく笑いました。


「……そうだな。私と違い、ラテルなら大丈夫かもしれない」

「自分の心の声が怖くねーとか、どんだけだよ」

「純粋」

「? ? ?」


 三人の反応に目をラテルは目を白黒させます。

 しかし認められ、任せられた事を理解して、


「うん! 僕行ってくる!」


 ラテルは大きく元気よく頷くのでした。

読了ありがとうございます。


ソレイユ達の反応が普通です。

ラテルは何が驚かれているのか、わかってもいないでしょう。

ア◯マイト光線無効化できたりして……。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラテルくんは相変わらず純真で素直で可愛い! 色々な秘密がばれてしまいますが、4人が同時に入ったらそれはそれで色々と面白そうに思ってしまいました(笑) [一言] 心の声が聞こえる洞窟、口下手…
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