第五十一話 お父さんはやっぱり強い勇者でした!
海賊マーレから、父であり勇者であるヴァーラントと共に航海したという話を聞いたラテル。
その話は魔王討伐へと繋がるのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
父親であり先代勇者であるヴァーラントの名前に、ラテルは驚きを隠せません。
「お、お父さんと一緒に旅したって本当!?」
「あぁ。ま、その時の頭は親父だったけどな。あたしはまだ小さくてさ。それでも親父と船が大好きだったから、時々一緒に乗ってたんだ」
「そうなんだ……!」
勇者としての父を知るマーレを前に、ラテルの気持ちはいやが上にも高まります。
「お父さんってどんな勇者だった!?」
「ヴァーラントさんは、そりゃあ強かった。両手持ちの斧を片手で振り回して、魔法もばんばん使う。何度危機を救われたかわからないくらいさ」
「ふわぁ……!」
「そうか。ラテルはヴァーラント様の活躍は目にしていないのだったな」
「今の話だけでもとんでもねー強さだってのはわかるな」
「豪傑」
ラテル一行の反応に、マーレは大きく頷きました。
「だからさ、ヴァーラントさんが火山で戦って、魔物もろとも火口に落ちたって聞いた時は信じられなかった……」
「う……」
「ヴァーラント様……」
「……だからこそ俺様達は四人で組んでんだ! へこんでねーで魔王退治をやり遂げようぜ!」
「前を向こう」
「……うん!」
決意を目に宿したラテルが、マーレをじっと見つめます。
「父さんの意志を継いで、僕は魔王を退治する! だから魔王の城への行き方を教えてください!」
「あぁ、勿論だ! それには必要なものが二つある」
「二つ……?」
「あぁ。天球儀とその核だ」
「天球儀……? 核……?」
聞き覚えのない言葉に首を傾げるラテル。
他の三人も同様に戸惑います。
「まぁ聞いた事ないだろうな。おい、裏の地下倉庫からあれを持ってきな」
「へい!」
マーレの言葉に手下が部屋を出ていき、丸いものを抱えて戻ってきました。
「これが天球儀さ。これに場所を示して魔力を込めると、一瞬でどこへでも行けるっていう代物だ」
「す、すごい……!」
「だが今こいつは使えない。壊れている上に、起動させるための核がないんだ」
「え……」
「だが話によると、天球儀は世界にいくつも存在するそうだ。ただの飾りとして金持ちの家にあったり、がらくた市で売られてたりするらしい」
「じゃあそれを見つければ……!」
ラテルの顔に希望が光ります。
「それともう一つ。核は『星の腹』っていう洞窟の中にある『蒼の鉱石』ってのを磨くと作れる」
「そうなんだ!」
「最後に魔王の城の位置は、天球儀のここ、激流と岩山に囲まれた、まさに陸の孤島だ。天球儀でしか行けない場所だが、お前達ならきっと行けるさ」
「……ありがとう!」
父の話を聞けた事。
道を示された事。
信頼された事。
その全てがラテルに力を与えます。
「ありがとうマーレさん! 天球儀を見つけて、きっと魔王を退治するよ!」
「あぁ、期待してる」
固い握手。
それは激励。
そして誓い。
熱い思いを受け取り、ラテルとマーレは微笑み合います。
「魔王を退治したら、またここに寄ってくれ。最高のもてなしを約束するぜ」
「うん!」
魔王の城へ行く手がかり以上に強く確かなものを手に入れたラテル一行は、再び船に乗り旅を続けるのでした。
読了ありがとうございます。
銀の宝玉に至る道が、考えてみると長すぎて……。
魔物に乗っ取られてた国を救う→手に入れた道具と引き換えに世界を彷徨う船への手がかりを得る→リア充の証をゲットする(血涙)→リア充の宴を目にする(血涙)→先代勇者の関係者からキーアイテムをもらう→道を切り開く→えげつないダンジョン→宝玉ゲット
……好きなものだけを好きでいて何が悪いのかな……(震え声)?
色々スキップしますが、次話もよろしくお願いいたします。




