第五話 いよいよ冒険です!
仲間を揃えていよいよ冒険を始めるラテル。
意気揚々と町を出ますが……?
どうぞお楽しみください。
仲間を揃えた勇者一行は、町の外へと踏み出します。
「うーん! ここから僕達の冒険が始まるんだねー! 何だか空気まで新鮮な気がするよ!」
「ふふっ、ラテルは可愛いな」
「!」
ソレイユの言葉に、ラテルはドキッとしました。
(それって子どもっぽく見えたって事かな……! それとも女の子みたいに見られた……!?)
ラテルは勇者ヴァーラントの娘として生まれましたが、物心付く前に父ヴァーラントは魔王討伐の旅に出て行方不明となり、それ以降男として育てられました。
しかし十六歳となった今、ラテルは自分の身体が女である事を理解しています。
同時に魔王討伐の希望である勇者が女であっては、人々に不安を生む事もわかっていました。
(何だろう、このドキドキ……)
ラテルには今の動揺が、隠し事が理解されそうで嬉しいのか、それとも正体がバレて勇者として失望される恐怖なのかわかりません。
「ど、どうしたラテル? 私が笑ったのが気に障ったか?」
「あ、ううん、そんな事ないよ。ちょっと自分がお気楽だったかなって思っただけ……」
「そんな事は……」
失言を悔やむソレイユの横で、エトワルが親指で仮面の鼻の部分を弾きます。
「ま、そんぐらいの気持ちの方がいいんじゃねーの? 最初から気を張ってたら疲れっちまうからな」
「……うん! そうだね!」
明るさを取り戻したラテルに、ソレイユが胸を撫で下ろしました。
その時です。
「ラテル。敵」
「!」
リュンヌの言葉に全員が武器を構えました。
「数は五。足音からして角ウサギ」
「よーし、俺様の魔法で一網打尽にしてやるぜ!」
一歩前に出るエトワルに、眉をひそめるソレイユ。
「ラテル、どうする?」
「エトワルの実力を見てみたいから、ここは任せよう。次はソレイユやリュンヌにもお願いするから」
「わかった」
「どんな魔法使うのかなー! 楽しみだなー!」
「それが本音か……」
目を輝かせるラテルを見てソレイユは溜息をつきます。
するとエトワルが肩越しに尋ねてきました。
「お、どんな魔法が見たいんだ?」
「え、えっと、僕は火の玉の魔法しかまだ使えないから、それ以外だったら何でも!」
「よーし。騎士の旦那は?」
「私か? ……角ウサギ相手なら、消耗の少ないものがいいだろう」
「ははっ、らしいな。斥候、お前は?」
「魔物は核だけ残して消える。食べられないから何でもいい」
「あーはいはいそーですか。んじゃ、サクッとやるか!」
言うと同時に、仮面の奥の目が光ります。
すると手に風の力が集まり、小さな旋風を生みました。
「あらよっと!」
放った旋風は、唸りを上げて草を薙ぎ倒し、角ウサギへと襲い掛かります。
「ギィッ!」
「ピギッ!」
「ギャッ!」
「ギギィ!」
「ピギャア!」
切り裂かれた角ウサギは、核と呼ばれる小さな石を残して消えました。
「どうだ? 俺様の魔法は」
「すっごーい! 格好良かった!」
「そうだろうそうだろう! はっはっは!」
目を輝かせるラテルに高笑いするエトワル。
それを横目に、ソレイユとリュンヌは前に出ます。
「大した腕なのはわかったから、核を回収するぞ。手伝え」
「大事な路銀」
その言葉に、エトワルは不満そうに鼻を鳴らしました。
「俺様が倒したんだから、そういう雑用は」
「僕も拾うー!」
「えっ」
「どういうやつ? どういうやつ?」
「あぁ、この青い石だ」
「両手の中に入れる。光を遮るとちょっと光る。見分けがつかない時はそうするといい」
「そうなんだ! ……ホントだ!」
「……」
ラテルを中心にして盛り上がる核の回収に、
「し、仕方ねーな! 俺様も参加してやるぜ!」
エトワルは誰に言うともなくそう言って駆け出していくのでした。
読了ありがとうございます。
エトワルがチョロすぎる……。
えっと、それぞれの秘密を隠すべく、ソレイユは甲冑、エトワルは仮面、リュンヌは覆面としたはずなんですが……。
内心がダダ漏れしてません……?
だ が 私 は 謝 ら な い 。
次話もよろしくお願いいたします。




