四十八話 美味しいって言ってほしいです!
いよいよラテルのお料理披露。
そのお味はいかに……?
どうぞお楽しみください。
ラテルが作った料理が、三人の口に運ばれました。
その様子を、ラテルは固唾を飲んで見守ります。
(皆の口に合いますように……!)
すると、まずソレイユが声を上げました。
「美味しい……」
「ソレイユ、本当!?」
「あぁ。しっかりと甘辛い味の染みた鶏肉が、柔らかく口の中でほどける……。これは初めて食べる味だが、何というか落ち着く味だな」
「良かった……」
胸を撫で下ろすラテル。
そこにリュンヌが空の皿を差し出しました。
「おかわり」
「え、もう食べたの!?」
「美味しくて止まらなかった。おかわり」
「う、うん! 今持って来る!」
喜んで厨房に降りようとするラテルの背に、エトワルが慌てて声をかけます。
「おい! 俺様ももう少しで食べ終わるからおかわり頼む! やっべ! うっめ!」
「わかった!」
「その、私も頼む」
「うん!」
三人の反応に、嬉しさが止まらないラテルは、新たに肉を焼き始めると自分用の料理を三人分に取り分けます。
(やった! やったやったぁ! 不安だったけど作って良かったぁ! ありがとうお母さん!)
飛び跳ねたくなるような嬉しさを胸に抑えて、ラテルは料理を三人の元に運ぶのでした。
「……いやー、食った食ったー」
「ありがとうラテル。とても美味しかった」
「喜んでもらえて良かったよ」
「晩御飯も楽しみにしてる」
「うん! 頑張る!」
食事を終えた四人は、穏やかな空気に包まれていました。
そんな中、ソレイユがふと疑問を口にします。
「これほど見事な料理を、ラテルはどこで学んだのだ?」
「あ、それは……」
一瞬ひやっとするラテルですが、用意した答えを思い出し、
「おか……、母が料理が得意でね、色々教わってるんだ! 男だって料理くらいはできた方がいいからって!」
若干慌てながらも答えました。
「そうか。良い教えだな」
「うん! おか……、母の事はすっごく尊敬してるんだ!」
「そうだな。ヴァーラント殿が旅立った後、女手一つでラテルを立派な勇者に育てた方だ。アン王国に戻ったらきちんとご挨拶をしたいものだ」
「……うん!」
ソレイユに母を褒められて、ラテルは嬉しそうに頷きます。
するとリュンヌがぴっと手を上げました。
「リュンヌ? どうしたの?」
「ラテルの母上は料理人なのか」
「えっと、違うけど、何で……?」
「この料理ならお店出せる。出したら毎日でも通う」
「そ、そんなに美味しかった……!?」
「毎食あれでも良い」
「そう、なんだ……。えへへ……」
手放しでの賞賛に、自然とラテルの頬が緩みます。
(魔王を退治したら料理人になるのもいいかな……。なんて気が早いけど)
そんなラテルに、エトワルが衝撃的な言葉を口にしました。
「確かに旨かった! 俺様が女だったらラテルと結婚してーくらいだぜ!」
「結、婚……!?」
驚くラテルに、エトワルが慌てて手を振り回します。
「あ、いや、それくらい旨かったって事で! 男同士でどうこうとか考えてる訳じゃなくてだな……!」
「だ、大丈夫! わかってる! わかってるから……」
そう言いながらも、ラテルの動悸は治まる様子を見せません。
(魔王を退治したら、僕は普通の女の子に戻るって事で、そうしたら結婚とかもできるのかな……)
そんな気持ちで三人を見つめると、更に動悸が高まりました。
(ソレイユは頼り甲斐があって優しいし、エトワルは面白くて緊張しないし、リュンヌはいつも僕の事大事に考えてくれてるし……、って何考えてるんだ僕はっ!)
考えまいと思えば思うほど、ソレイユ、エトワル、リュンヌそれぞれと結婚する想像が広がっていきます。
(……馬鹿な事を考えるな! 皆は仲間! 魔王を退治するための仲間! 変な気持ちで見ちゃ駄目だ!)
頭の中を切り替えようと、ラテルは勢いよく立ち上がると、
「皆! お皿洗うから貸して!」
「あ、あぁ、ありがとう……」
「た、頼むわ……」
「……感謝」
気圧された様子の三人を背に、厨房へと駆け降りて行くのでした。
読了ありがとうございます。
ラテルから見たら逆ハーレム状態。
さてこの先どうなる事か……?
次話もよろしくお願いいたします。




