第四十六話 すごい船をもらいました!
いよいよ船をもらう事になったラテル一行。
受け渡しは無事に済んだものの、新たな問題が浮上して……?
どうぞお楽しみください。
王様との謁見の後。
ラテル一行は王様がくれると言った船を見るために、波止場へと来ていました。
「こ、これが……?」
「うむ! 良い船であろう?」
「は、はい……。すごいです……」
ラテルが目を丸くするのも無理はありません。
その目の前には見たこともない船が、太陽の光を受けて輝いていたからです。
「外輪船、か……」
「旦那、何だそりゃ」
「初耳」
同じように驚いた様子のエトワルとリュンヌに、ソレイユも戸惑ったような声色で続けました。
「船の横についている大きな車輪のような物、あれで水をかいて海を進むそうで……。私も実物を見るのは初めてだが、風がなくても進める最新型の船、らしい……」
「すっごーい……!」
ラテルがきらきらした目で船を見つめていると、王様は満足そうに頷きます。
「動力は魔物の核じゃ。操縦も魔法演算装置を組み込んであるから簡単での。ここで操作した通りに動けるぞ」
「ぼ、僕でも動かせますか!?」
「勿論じゃ。儂もたまに操縦していたからの」
「わぁ……!」
「試しに動かしてみるかの?」
「はい!」
「わ、私も……」
「……俺様も……」
「全員ができる必要がある」
こうしてラテル一行は、その日一日を船の操縦に費やしたのでした。
日が落ち、船出に必要な物を船に積んでもらう手配をして、ラテル一行は宿屋に戻りました。
「楽しかったねー船!」
「……うん、久しぶりに高揚したよ」
「俺様もだぜ! 男の浪漫だよな、あーいうの!」
「堪能」
わいわいと盛り上がりながら、フイット最後の夕食を楽しみます。
「中で料理までできるなんてね! 本当にすごい!」
「ほう、ラテルは料理ができるのか?」
「え、あ……」
実はラテルは料理が好きで、家でも母と交代で作っていたりしました。
しかし、
(ここで料理が好きとか得意とか言ったら、僕が女って事がばれちゃいそう……。ここは他の皆に任せた方が安全だよね……)
そう考えたラテルは、
「……えっと、まぁまぁ、かな」
曖昧に誤魔化して話題をソレイユに振りました。
「僕よりもソレイユの方が、料理できそうな感じするなぁ」
「うーむ、遠征の際に野営の食事は何度も作っているが、厨房に立ってしっかりした料理というのは、あまり経験がないな」
「そうなんだ……」
期待と違う答えに若干の落胆を感じつつ、ラテルはエトワルに水を向けます。
「エトワルは何か料理とかも凝りそうだよね」
「俺様は肉でも魚でも、魔法でばーっと焼いて塩振って食う!って感じだな」
「お、男らしいね……」
「だろ!?」
嬉しそうに頷くエトワルに、引き気味のラテル。
最後の望みをリュンヌに向けました。
「リュンヌは手際良さそう! 何かさささーって料理作ったりしない?」
「得意料理は現地調達。ヘビとカエルは美味しい」
「……そ、そうなんだ……」
全ての望みが絶たれたラテルに、ソレイユが大きく頷きます。
「となると、船での料理はラテルが一番向いていそうだな」
「え……」
そこにエトワルとリュンヌも続きました。
「お、期待してるぜ!」
「楽しみ」
こうなってはラテルも断りようがありません。
「あ、あんまり期待しないでね……」
料理ができるという嬉しさと、正体がばれるかもしれないという不安で、ラテルは複雑な笑みを浮かべるしかできないのでした。
読了ありがとうございます。
帆船が素人四人で、しかも思い通りに動かせるイメージがどうしても浮かばなかったので、オーバーテクノロジーで補完しました。
そうしないと某大海賊漫画(初期)みたいになりそうなので。
手懐けた海竜に引かせてる説も考えたのですが、運河を通ると悲劇が待っていそうで、外輪船にしてみました。
『舞台が違うやんけ!』とわかった方、僕と握手!
あの召喚魔法、ノーヒントで手に入れられた人、どれくらいいるんでしょうね……。
次話もよろしくお願いいたします。