第四十四話 船を買う許可を貰いに行きます!
朝を迎え、いよいよ船の購入許可を貰いに城へと向かうラテル一行。
しかし行商人アフェリに不穏な動きがあって……?
どうぞお楽しみください。
翌朝。
ラテル一行は船の購入許可を貰いに、城へ行く事になっていました。
しかし前日決めた時間になってもリュンヌが現れません。
行商人アフェリの姿も見えません。
「……どうしたのかな」
不安に耐え切れず、口を開くラテル。
その様子を見て、ソレイユが落ち着かせるように穏やかな声で答えました。
「リュンヌに限って万が一という事もない。落ち着いて待とう」
その言葉にエトワルも続きます。
「あれじゃね? あの行商人がペパの種を独り占めして逃げようとしたのを、追いかけて捕まえてるとかじゃねーの?」
「ほぼ正解」
「ぬわぁ!?」
「リュンヌ!?」
「……と、アフェリさん?」
エトワルの背後からの声に全員が振り向くと、足と手を縄で縛られたアフェリを小脇に抱えたリュンヌが立っていました。
「ど、どうしたのリュンヌ!? アフェリさん、何かしたの!?」
「内緒で宿を引き払って逃げようとした。だから捕まえた」
「ご、誤解ですよ! 勇者さん達がナフに簡単に行き来できる事が知れ渡ったら、ペパの種の値段が下がると思ったので、今のうちに売ってしまおうと……」
「それならそれを何故昨日のうちに話をしない? 私達はお前の商売に協力するつもりではあったし、謁見の時間をずらす事もできたのに、だ」
ソレイユの言葉に、アフェリの顔色が青くなります。
「い、いやー、それは、私事で勇者さん達の手を取らせるのはどうかと思いまして……。ほ、ほら、勇者さん達なら城にも入れるし、案内はいらないかなって……」
「何か隠してやがるな? それも城に行ったらばれて、相当やばいやつを……」
「そ、そんな事は……」
「なら連れて行く。逃がさない」
「……はい」
大人しくなったアフェリの縄を解くと、ラテル一行は城へと向かいました。
勇者ラテルと名乗ると、城にはすぐ通されました。
王様に謁見できるとの事で、ラテル一行は控え室で待ちます。
「あ、あの、ここまで来たら、あたしいなくても大丈夫ですよね……? そろそろ商売に……」
「駄目だ」
「逃さねーぞ」
「却下」
「ひいぃぃぃん……」
「……」
怯えるアフェリを哀れに思ったラテルが、そっと声をかけました。
「あの、何か悪い事しちゃったなら教えてください。ちゃんと謝ればきっと皆許してくれますから……」
その言葉に縋るような目をするアフェリ。
数度唾を飲み込んだ後、恐る恐る口を開きます。
「あ、あの、実は……」
しかし現実は非情。
「王様のご準備が整った! 玉座の間に通られよ!」
「あ、そうですか……」
「え、あ、あの、あたし……」
「話は謁見の後で聞くとしよう」
「おら行くぞ」
「逃げても無駄」
「……はい」
アフェリの懺悔の前に、ラテル一行は玉座の間へと通されました。
玉座の間では、恰幅の良い王様が、玉座でにこにこと笑っています。
「グルマン王。この度は拝謁できました事、誠に嬉しく思います」
「おお! アンシャンテ王の騎士ソレイユ! 久しいの! 一年ぶりか?」
「覚えていただき、歓喜の極みにございます」
ソレイユの挨拶に続いて、ラテルが頭を下げました。
「ゆ、勇者ラテルです! お会いできて光栄です!」
「そなたが勇者か! 我が国も魔物によって少なからぬ損害を被っておる! 魔王討伐に協力は惜しまぬつもりじゃ! 何か望みがあれば言うが良い!」
「では」
王様の言葉に、ソレイユがペパの種の入った大袋を前に出します。
「ナフの町で手に入れたペパの種です。これで船の購入許可をいただけますでしょうか」
「何……?」
目を丸くする王様。
その変化した雰囲気に、戸惑うラテル一行。
そして震え出すアフェリ。
「いや、希少なペパの種を献上してくれた事はありがたい。じゃがそんな事をせずとも、勇者一行になら船の購入許可は出すぞ?」
「え?」
「確かに船の購入制限はしておるが、それは商人や漁師に限っての事。冒険者など魔物を討伐できる者達には、むしろ積極的に売るよう指示していたはすじゃが」
「……成程」
「そういう事かこいつ……」
「理解」
「……!」
視線が集中し、アフェリが脂汗を流します。
王様の言葉とその様子で、ラテルにも察しがつきました。
「……アフェリさんはペパの種を仕入れるために、僕達に嘘をついたんですか?」
「……えっと、その……」
「答えろ。陛下の御前で偽りを許されると思うな」
「今更言い逃れできるなんて思ってねーよな?」
「早く」
四人から詰め寄られ、アフェリは力なく頷きます。
「……はい。ペパの種の仕入れのために、腕ききの冒険者だと思って声かけました……。勇者さんと知って驚きましたが、うまくやれば一攫千金だと思って……」
「……それで今朝逃げようとしたんですね。夜は魔物が危険で町から出られないから……」
「……は、はい」
「……」
黙り込むラテルを見て、ソレイユ、エトワル、リュンヌが殺気に近い怒気を発しました。
「一刻も早く魔王を討伐に行かなければならない私達を、商売のために足止めするとはな……」
「さぁて? 国の法を偽って勇者一行を騙そうとした罪はどんなもんだろうなぁ?」
「重罪」
「ゆ、許してください! 出来心だったんです!」
三人からの圧力に、必死に許しを乞うアフェリ。
その時、
「あー! 良かったぁ!」
「!?」
ラテルの言葉に、あらゆる緊張の糸がふっつりと切られるのでした。
読了ありがとうございます。
やはりラテル……!
ラテルは殺伐とした空気を解決する……!
次話もよろしくお願いいたします。




