第四十二話 僕の秘密を打ち明けたいです!
ナフの町での騒動を終え、フイットの町へと戻ったラテル一行。
目的は果たしたものの、ラテルの胸には引っかかるものがあって……?
どうぞお楽しみください。
無事にアンテトの店からペパの種を買えたラテル一行は、エトワルの帰還魔法でフイットの町に戻って来ました。
宿に戻ると食堂に集合し、アフェリを加えて祝杯を囲むラテル一行。
「いやー! やっぱりあたしの目に狂いはなかったね! こうもあっさりとペパの種を手に入れられるなんて!」
「……あっさり、とは言い難いがな」
「お前はサンセルとアンジェの面倒くせー芝居を知らねーから、そんな呑気な事が言えんだよ。ったく」
「しかも作戦は無視」
「あはは……。まぁ最終的にはうまくいったから良かったじゃない……」
上機嫌なアフェリと対照的に、ラテル一行はあまり機嫌が良くありません。
特にラテルはサンセルの言葉がずっと引っかかっているため、なかなか食事も進まないのでした。
『アンジェとは結婚したい! でもこんな騙すような方法じゃ、胸を張ってアンジェの夫と言えない! アンテトさんの義息子と名乗れない!』
その言葉を反芻するたびに、ラテルは小さく溜息をこぼします。
(今僕は皆を騙してる……。女なのに男だと嘘をついて……。これで僕は勇者だって言えるのかな……)
その様子を見ていたリュンヌが声をかけました。
「ラテル」
「うぇっ!? な、何!?」
「表情が暗い。疲れか。悩み事か」
「あ、うん、えっと……」
「力になりたい。言える事なら言って」
「う……」
リュンヌの真剣な言葉に、ラテルの心が揺れます。
(……リュンヌも、ソレイユも、エトワルも、きっと僕が女だからって怒ったり旅を辞めたりしないと思う。だったらいっそ……!)
しかしこれまでの旅での三人の姿に、ラテルはその気持ちを振り払いました。
(……駄目だ! 今でもかばわれたり守られたりしてるのに、女だって言ったらもっとそうなる気がする! 言うにしても、ちゃんと仲間と認められてから!)
そう思ったラテルは、精一杯の笑顔でリュンヌに答えます。
「えっと、あのね、ちょっと考えてる事はあるんだけど、大丈夫! 自分で何とかして、話せるようになったらちゃんと話すから!」
「……分かった。でも手に負えないなら言って」
「うん!」
ラテルの返事に小さく頷くと、リュンヌは食事に戻りました。
(……やっぱり心配してくれてる。それは嬉しいけど、ちゃんと勇者として、仲間として立派にならないと!)
新たな決意を胸に抱くラテル。
(そうと決めたら体力をつけなきゃね! ご飯をしっかり食べて、明日からも頑張ろう!)
そしていつも通りの様子で食事を再開する姿に、ソレイユとエトワルもそっと安堵の溜息を漏らすのでした。
読了ありがとうございます。
神は言っている……。
まだここで明かす定めではないと……。
次話もよろしくお願いいたします。