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第三十八話 さらわれた人を取り返します!

ペパの種を扱う店の娘アンジェがさらわれたと知ったラテル一行は、助けに行く事を決意します。

しかし町の若者サンセルは、それを歓迎していない様子。

果たしてアンジェを無事に助ける事はできるのでしょうか?


どうぞお楽しみください。

 ナフの町から東に進んだところにある洞窟。

 ラテル一行は、その入口に立っていました。


「……ここだな」

「うぅ、き、緊張する……!」

「大丈夫だラテル。前の塔みたいに、俺様がぱぱっと片付けてやるからよ」

「う、うん」

「罠とか伏兵ならリュンヌに任せりゃ間違いねーし。な? リュンヌ」

「その前に」


 リュンヌはくるりと振り返り、後ろの茂みに声をかけます。


「そこにいるの分かってる。出て来て」

「……敵か」

「っ!」

「……つら見せな。そしたら丸焼きだけは勘弁してやるぜ?」


 ソレイユが剣を抜き、ラテルが慌ててそれに続きました。

 続くエトワルの言葉に、茂みが小さく揺れます。


「敵じゃない」

「え?」

「……とするとアフェリか?」

「……ったく、じゃ……、危ねーからあえて置いて来たのについて来たのか……?」

「早く。エトワルが茂みごと世界から消す前に」

「いやそこまではしねーよ!」

「……」


 すると茂みから先程の若い男が現れました。


「あっ、さっきの……!」

「確かサンセル、と呼ばれていたな」

「んで、その木の棒で何するつもりだ?」

「……頼む、と、通してくれ……!」


 サンセルは手に持った木の棒を振り上げ、ラテル一行に向かって走り出します。


「無駄」


 その瞬間、矢のように飛び出したリュンヌが手をサンセルの目の前に突き出し、


「うわっ!?」


 驚いたサンセルの足が止まったところで瞬時に後ろに回り、襟首を掴んで引き倒しました。

 尻餅をついたサンセルの手から、木の棒が転がり落ちます。


「自分一人に勝てないのに盗賊に勝つのは無理」

「ち、違うんだ……! 盗賊なんかじゃなくて……!」

「……何か訳がありそうだな。ラテル、この者の話を聞いてからでも良いか?」

「うん、勿論!」


 ソレイユの言葉にラテルが頷いたその時。


「おう! 来たか兄ちゃん!」

「待ってたわサンセル!」

「!?」


 洞窟から野太い男と若い女の声が聞こえて来ました。

 振り返ったラテル一行の目に入って来たのは、


「お! お前ら! 何でこんなところに!?」


 つい先日捕らえたムキムキの盗賊の姿。

 今回は外套をまとっていたので、エトワルはすんでのところで魔法の発動をこらえました。


「て! てめぇ! 何でここにいるはこっちの台詞だ! お前捕まったんじゃねーのかよ!」


 すると盗賊はにやりと顔を歪めます。


「くっくっく……。あの王様には助けられたぜ……。『病気の弟に薬を買うためだった』と言ったら、解放した上に金までくれてよぉ……!」

「えっ、弟さんが……!?」

「……! 下衆め……!」

「お仕置きが足んなかったみてーだな……!」

「成敗」


 驚くラテル。

 そして殺気立つソレイユ、エトワル、リュンヌ。

 しかし、


「お陰で弟の病気も良くなってよぉ……。あの王様は神様だぜ……!」

「良かったぁ……!」

「……に、逃げるための嘘ではなかったのか……」

「紛らわしい言い方するんじゃねーよ!」

「納得いかない」


 あっという間に空気が緩みました。


「そんで部下の魔術師がナフの出身でよ、帰還魔法で一緒に連れて来てもらって、これからは心機一転頑張ろうと……」

「それで女の子をさらっちゃったの!?」

「何も変わっていないではないか!」

「むしろ悪化してやがるぜ!」

「やはり成敗」


 再び張り詰める空気。

 そこに、


「違うの! これはお芝居なの!」


 さらわれていた女の子の言葉で、


「え!?」

「何!?」

「はぁ!?」

「不可解」


 今度こそ完全に真剣な空気は砕け散ったのでした……。

読了ありがとうございます。


ムキムキの盗賊再び。

盗賊との再会及び弟の病気のくだりは、かなり初期からやりたかったネタでした。

ベタな嘘っぽい本当の話とか大好きです。


次話もよろしくお願いいたします。

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