表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/58

第三十四話 行商人さんは強敵です!

胸のたわわな行商人に翻弄されるラテル。

しかし仲間はそれには惑わされないようで……?


どうぞお楽しみください。

 席に着いた行商人は、さばけた態度で話を始めました。


「まずは自己紹介だね。あたしはアフェリ。見ての通り行商人さ」

「あ、ぼ、僕はラテルです」

「私はソレイユ、職業は騎士だ」

「……俺様はエトワル。大魔術師だ」

「リュンヌ。斥候」

「成程、じゃあ君が勇者なんだね」

「あ、は、はい」

「ふぅ〜ん……」


 アフェリの目がすうっと細くなります。

 その品定めをするかのような視線に、ラテルの背に悪寒が走りました。

 しかし、


「っ……!」

「おっと、嫌われちゃったかな?」


 強い目で睨み返すと、肩をすくめるアフェリ。

 そこに苛立った様子のエトワルが口を挟みました。


「で? とっとと話せよ。俺様達が船を手に入れられない理由ってやつを」

「はいはい。せっかちな男は嫌われるよ?」

「けっ。お前にはむしろ嫌われたいね」


 エトワルに敵意に近い感情を向けられても、アフェリは動じた様子もありません。


「ははっ。じゃあ話そう。一つは遠洋の危険度が上がった事さ。魔物の活動が活発化して海路の安全が大きく揺らいでいる」

「それで船が壊されて造船所がてんやわんや、って事か?」

「そう、それが一つ」

「だが待てよ。そんな状況なら船を放棄する船主もいるだろう? それを買えばいいじゃねーか」

「へぇ、大魔術師ってのもはったりじゃなさそうだねぇ」

「うるせぇ。続きを話せ」

「……」


 アフェリの言葉に全く態度を変えないエトワルに、ラテルは小さく驚きました。


(いつもだと『そうだろう? 流石俺様!』って感じに嬉しそうになるのに、アフェリさんの事、そんなに警戒してるのかな……)


 アフェリは表情を変えずに続けます。


「そしてもう一つ。海難事故の頻発による、国としての立場と対策」

「は? 何だそりゃ!?」

「……成程な。国民が犠牲になるとなれば、国として規制を設けざるを得ない、と」

「さっすが騎士様、理解が早い!」

「……」


 ソレイユの言葉に、手を叩いて賛辞するアフェリ。

 しかしそれを見ているエトワルの態度は変わりません。

 その様子をちらりとだけ見て、ソレイユは言葉を続けます。


「つまり、国から規制がかかっていて、新しい船の建造も所持も制限がある、と」

「素晴らしい! 騎士の旦那は」

「そしてお前はそれを打破する手を知っている。そうだな?」

「……っ……!」

「そうでなければここまで強気には出られない。その切り札は何だ?」

「……ははっ、それは行商人の宝だよ? おいそれと話すわけがな」

「命と宝。どちらが大事か。失ってみればわかるか」


 言葉の途中で、アフェリの首元に刃物を当てるリュンヌ。


「ごごごごめんなさい! 何でも話しますから命だけは助けてください!」

「……」


 ラテルはアフェリと仲間三人とのやり取りを見て、ただただ見守るしかできないのでした。

読了ありがとうございます。


行商人泣くべし。慈悲はない。


次話もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ