第三十二話 行商人さんの誘惑です!
食事を終えたラテル一行。
そこにたわわな胸を揺らした行商人がやってきて……?
どうぞお楽しみください。
食事を終え、ラテル一行は一息つきました。
「はーっ! 美味しかったぁ!」
「あぁ、満足だ。では明日の動きを確認しよう」
「それが終わったら今日は寝るとすっか!」
「賛成」
ラテルが先程の件を思い出す前に話を終わらせようと、三人は目で合図を交わします。
「まずは船を手に入れられる場所、造船所か販売店かに当たろう」
「後で俺様が店員か客かに当たって、確認しておくぜ」
「了解」
「そこで船の値段とか、作るのにかかる時間とかを聞いて、この先の動きを決めるんだよね?」
「そうだな。一旦宿に戻って今後の方策を練る事になるだろう」
「早めに済ませてよー、ここで昼ってのもいいんじゃねーか?」
「反対。他の店も見てみるべき」
「確かにそうだよね。他にも美味しいお店、たくさんありそうだし……」
そこでエトワルが席を立ちました。
「ならちょっと待ってな。船の情報ついでに旨い店の話も聞いてくるからよ」
するとそこに、
「魔道士の兄さぁん、無駄な事はやめときなよぅ」
たわわな胸を前面に押し出した、行商人風の女がエトワルの行手を阻みます。
ラテルの目は、その服を押し上げる質量に目を奪われました。
(わ、胸おっきい……。僕もいつかあんな風になれたら……。あー、でも隠すの大変そうだな……。魔王を退治してからなら……)
そんな呑気な事を考えている前で、エトワルは不愉快そうに行商人を睨みつけます。
「あ? 何だてめーは。無駄だなんて何でわかるんだよ」
「そりゃああたしが行商人だからさぁ。この町の商売に関する情報はぁ、片っ端から耳に入れててねぇ? 今新しく船を手に入れるのはほとんど不可能なのさぁ」
「だからそりゃ何でだって聞いてんだよ」
「んもぅ、野暮だねぇ。行商人がカ・ラ・ダを使って稼いできた情報だよぉ? ただって訳にはいかないだろぉ?」
「あーそうだな。悪かった。じゃあどこか別のところで売りな。俺様達は自分で調べるとするからよ」
「やだよぅ、怒ったのかぁい? そんな冷たいところも格好良いねぇ」
まとわりつくような話し方。
仕草の端々で揺れる胸。
(……何か、やな感じだな、あの女の人……)
エトワルを誘惑しようとするかのように立ち回る行商人に、ラテルは何とも言えない不快感を覚えます。
(……あんなのに、エトワルは負けたりしないよね……?)
ラテルの不安をよそに、エトワルは行商人に対して冷たい態度を崩しません。
「おめーが商売のために女を武器にするのは構わねー。相応の危険と天秤にする覚悟でやってんだろーからな。ただ俺様には通じねー。無駄な事はやめときな」
「……く……」
行商人の顔が、苛立たしげに歪みます。
ぴしゃりとした言葉に、ラテルの不快感が吹き飛びました。
(男の人って、おっぱいの大きい美人の言う事を何でも聞いちゃうってお母さんが言ってたけど、そんな事ないんだね……! エトワル格好良い……!)
ラテルがそんな風に見直しているとも知らず、エトワルは行商人を手で追い払う仕草をします。
「さー、行った行った。時は金なり。商売になりそうにない奴相手にするのは、行商人の理に反するだろ?」
「……このあたしの色香が通じないなんて……! そこの坊やは凝視してたってのに……!」
「えっ、僕!?」
思わぬ流れ弾に、ラテルは声を上げました。
「何!? ラテルお前、こんなでかいだけのがいいのか!?」
「……まぁ、男の子なら仕方ないとは思うが、うん、まぁ、そうなのか……」
「ラテル。胸は大きさじゃない」
「ち、違うよ皆! 僕はそういうのじゃなくて……!」
説明しようとして、ラテルははっと気が付きます。
(ここで変に否定したら、女だって事がばれちゃうかもしれない……! うう、皆にそう思われるのは嫌だけど……!)
ラテルは覚悟を決めました。
「……うん、おねえさんのおっぱい、おおきいからみてた……」
「そ、そっか……。ま、まぁ、男なら仕方ねーよ、うん」
「……それが自然だ。私達は何も責めない。安心してくれ」
「でも女は胸だけじゃない。忘れないで」
「あはは……、うん……」
先程とは違う意味で闇に染まるラテルの瞳。
エトワル、ソレイユ、リュンヌは、それを複雑な表情で見つめる事しかできないのでした。
読了ありがとうございます。
男の全てが大きな胸に屈服すると思ったら大間違いです。
嘘だと思うなら、私の隣に巨乳の美女を侍らせてみるとよいでしょう。
……あ、『まんじゅうこわい』をご存知……?
そーですかー……。
次話もよろしくお願いいたします。