第三話 仲間、二人目です!
魔王討伐の仲間を探すべく、冒険者の酒場にやって来たラテルとソレイユ。
果たして仲間は見つかるのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
「こんにちはー!」
ラテルの元気な言葉に、酒場の中から鋭い視線が幾つも向けられました。
「何だガキ! やかましいぞ!」
「う」
スキンヘッドの冒険者らしき男がラテルを睨みます。
「親の迎えならとっとと……、!?」
しかしその言葉は、続くソレイユを見て生唾を飲み込む音に変わりました。
「お、王国騎士!? な、何でこんなところに……?」
「私の自己紹介は要らないようだな」
ソレイユは目を丸くしている男を尻目に、ラテルの背中をそっと押しながら酒場の真ん中まで進みます。
「諸君! よく聞いてもらいたい! この方は先代勇者ヴァーラント様の息子、ラテル様だ! 国王陛下から魔王討伐の勅命を賜り、勇者様となられた!」
朗々と響き渡る声に、酒場の中にざわめきが走りました。
(良かった……! 息子って思ってもらえてる……!)
その陰でこっそりほっとするラテル。
「我々は旅の同行者に魔術師と斥候を求めている! 勇者の一助となり、その名を英雄として刻みたい者は前に出よ!」
まるで芝居の一場面のようなソレイユの立ち振る舞いに、ラテルを含めた酒場の大半の者が、ほうっと感嘆の溜息を吐きました。
「……面白そーじゃねーか」
「……ほう、お前は魔術師か?」
「違うな。俺様は大魔術師エトワル様だ。魔法にかけちゃ、右に出る者はいねー」
「ほう……」
ソレイユはエトワルをじっと観察します。
大きなつば広の魔法使い帽子。
黒く長い髪は腰ほどまで伸びています。
ゆったりとしたローブに道化師の仮面。
年齢も性別も曖昧な姿に、ソレイユは警戒の色を緩めません。
(素性が知れないが、信用して良いものか……? 指名手配の者が身を潜めるために変装しているかもしれない……。いや、魔族の変装という可能性も……)
しかし、そんな緊張は、無警戒にエトワルに駆け寄ったラテルによって破られました。
「すっごい! 魔法ってあんなに難しいのに、エトワルはいっぱい使えるんだ!」
「え、あ、あぁ、俺様は天才だからな。色々な魔法を使えるぜ!」
「わあぁ……!」
きらきらした目に見つめられて、エトワルは満更でもない笑みを浮かべます。
「よーし、ちょっと見てろ」
エトワルが目の前のグラスに魔力を注ぐと、中の液体が持ち上がり、形を変え、羽を広げた鳥の姿になると、一瞬で凍りました。
「すごーい!」
「酒場の中じゃこんなもんだが、外で魔物相手にならもっと派手な魔法もぶっ放せるぜ?」
「わー! じゃあ一緒に旅してくれる?」
「任せとけ!」
「あ、ラテル……」
ソレイユが止める暇もなく、ラテルとエトワルは手を握り合います。
(まったく……。魔法の腕は確かなようだし、悪人でもなさそうで良かったが……。このラテルの無邪気さ、今後は気をつけないとな……)
こうして魔術師エトワルが仲間になりました。
ソレイユの深い溜息と共に……。
読了ありがとうございます。
魔術師エトワルは、フランス語で『星』を意味する『Étoile』から取りました。
俺様キャラながら若干チョロいエトワルが加わり、魔法戦力は強化されました。
後は斥候ですが……。
次話もよろしくお願いいたします。