第二十八話 新しい冒険に出発です!
国王の誘いを断り、旅を続ける事にしたラテル。
さて、次なる目的地は……?
どうぞお楽しみください。
城を出たラテルは、嬉しさを抑えきれない様子で、小さくぴょんぴょんと跳ねながら歩きます。
「ラテルご機嫌」
「だってさー! ソレイユとエトワルに、『勇者はラテルしかいない』って言ってもらえたのが嬉しくて!」
その言葉に、ソレイユとエトワルが目を逸らしました。
「……あー、うん、何というか、正直な気持ちではあるのだが、気恥ずかしいな、これは……」
「……けっ! あの王様が余計な事言わなきゃ、あんな小っ恥ずかしい事言わねーで済んだのによ!」
「僕は嬉しかったよ! ありがとう!」
「……あぁ」
「……おぅ……」
兜と仮面で表情は見えませんが、明らかに照れた様子のソレイユとエトワル。
するとラテルの後ろを歩いていたリュンヌが、ラテルの外套を小さく引きます。
「? 何、リュンヌ?」
「自分もそう思ってる」
「え?」
「ラテルが勇者がいいって思ってる」
「リュンヌ……!」
「口下手だから二人に任せた。でも気持ちは一緒」
「……ありがとう! リュンヌ!」
「ん」
それを聞いたリュンヌは、ラテルの外套から手を離しました。
ソレイユが咳払いをして、全員に話しかけます。
「んんっ……。さてこれからの進路だが、北に行くと森人の住む村があり、人間嫌いで交渉は難しいが、貴重な魔法の道具が手に入る可能性がある」
「俺様はそこが気になるな。森人の魔法は人間のとは色々違うみてーだ」
興味深そうに腕を組むエトワル。
「東に行くと険しい山脈に当たり、そこから南下した砂漠にはとある王家の古代の墓があり、財宝が眠っているそうだ。死霊系の魔物の巣となっていて未発掘らしい」
「古代の財宝。興味ある」
こくこくと頷くリュンヌ。
「西に向かうと海洋交易都市があり、色々と珍しいものが手に入るそうだ。船の建造も盛んで、資金さえあれば個人用に船も売ってくれるらしい」
「船が手に入ったら、世界中を冒険できるね! 楽しみだなぁ」
新しい冒険に目を輝かせるラテル。
「さて、どこへ行こうか」
「うーん……」
ソレイユの言葉に、ラテルは悩みました。
どこに向かうのも魔王退治に必要そうで、何よりどこも楽しそうです。
「どこがいいのかな……。ソレイユだったらどこから行く?」
「ふむ……。私ならまずは海洋交易都市に行き、船の値段と建造にかかる時間を確認し、それに合わせて他の場所を探索するかな」
「確かにな。作るったって一日二日じゃねーだろーし、それが一番効率良さそうだ」
「合理的」
「うん! じゃあそうしよう!」
全員の意見が一致しました。
「じゃあ西に向かって出発だ!」
「あぁ」
「おう!」
「ん」
ラテル一行は食料など旅に必要な物を買い込んで、町を出ます。
その明るい前途を示すように、空は青く晴れ渡っているのでした。
読了ありがとうございます。
最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ。
……本当に……。
次話もよろしくお願いいたします。