第二話 最初の仲間ができました!
女の子だという事を隠して魔王討伐に向かう勇者ラテル。
王様から旅に同行させるように言われた騎士ソレイユと、うまく関係を築けるでしょうか?
どうぞお楽しみください。
城を出て、町へと向かうラテルとソレイユ。
初対面の二人の間には緊張が感じられます。
ラテルが秘密を抱えている事、そしてソレイユが顔の全面を覆う兜を被っていて表情が見えない事も、緊張を高めていました。
「……えっと、ソレイユさん」
それでも意を決したラテルが口を開きます。
「呼び捨てで構いません勇者様。歳こそ少し私が上ですが、王様の勅命を受けた勇者様の方が立場は上ですから」
「そ、そう? じゃあソレイユって呼ぶね!」
「よろしくお願いいたします」
兜越しにも伝わる柔らかな対応。
緊張が少し解けたラテルが、さらに一言続けます。
「でも歳上だったら、僕にも様とか敬語とかなしで、普通に話してほしいな」
「……わかった。よろしく頼むよ、ラテル」
「うん! よろしく!」
二人の間にあった堅い空気が、微笑み合いと共に消えていきました。
「そしたらソレイユ、まずは仲間探しかな?」
「そうだな。王様の仰った通り、魔法が使える者がいると多くの魔物と戦う時に有利だし、怪我や毒への対処も素早く行える」
「魔法かぁ。僕ちょっとしか使えないや」
「使えるだけ大したものだ。私なんてからっきしだぞ」
「騎士だけに?」
「……忘れてくれ……」
顔を兜に隠されていても、ラテルにはソレイユが恥ずかしがっているのが伝わります。
「ごめんごめん。あるよね、そんなつもりないのにダジャレになっちゃう事」
「……え? あ、あぁ、理解してくれて助かる……」
貴族の子として厳しく躾けられてきたソレイユにとって、あっさりと失言を許された事が意外でした。
「気にしない気にしない! さ、仲間を探しに行こー!」
「……あぁ、ありがとうラテル」
そしてその戸惑いが晴れた時、ソレイユの中にラテルに対する親愛の情が湧いてきます。
しかし軽く咳払いをしてその感情を胸に収めると、口調を戻して話を続ける事にしました。
「さてラテル。一人は魔法を使える者はいいとして、あと一人は慎重に選ぶぞ」
「え、何で?」
「罠や敵の気配に敏感な者は、盗賊上がりな事がある。途中で路銀を盗んで逃げられたとなると、旅が立ち行かなくなるからな」
「うーん、どういう人なら大丈夫かわからないから、ソレイユに任せる!」
「! ……あぁ、任せておけ」
顔を覆う兜にそっと感謝しながら、ソレイユは酒場へ向かうラテルの後に続くのでした。
読了ありがとうございます。
騎士ソレイユの名前は、フランス語で『太陽』を表す『Soleil』から取りました。
ひとまず信頼関係は築けた様子。
次話もよろしくお願いいたします。