第十八話 同室なんてどきどきです!
盗賊退治の決意を固めたラテル。
宿に泊まって英気を養おうとしたラテルに、女バレの危機が……。
どうぞお楽しみください。
宿屋を見つけたラテル一行。
しかしそこでラテルは衝撃の事実を知りました。
「えっ!? 三部屋しかないんですか!?」
「はい、明日は市が立つ日なので、行商人が各地から集まって来ているんですよ。それでほぼ満室状態でして……」
「町が賑やかだと感じたのはそのためか……」
「ってー事はだ。他に行っても同じような状態って事か?」
「そうだと思います。先程他の宿に断られたと言う六名の隊商の方々をお断りしたばかりですので……」
「四人はどう」
「はい! 三部屋と申しましても、通常の一人用の部屋が二つと、豪華な二人部屋が一つ空いておりますので、四名ならお泊りいただけます!」
「さて、どうしようかラテル」
「えっと……」
明日は盗賊退治。
万全の態勢で臨みたい以上、宿に泊まる必要があります。
しかし、ラテルには不安がありました。
(お風呂どうしよう……。そんなに混んでるなら、一人で入れる時間とかないよね……。うー! お風呂には入りたい……!)
悩んでいるラテルを見て、もう一押しだと思った宿屋の店主は、ここぞとばかりにアピールを始めます。
「お客様方は幸運ですよ! 豪華な二人部屋は広くてゆったり過ごせますし、寝台も高級なものを用意しております!」
「はぁ……」
「勿論料金は勉強させていただきます! お料理も行商人から市に出す前の新鮮な食材を購入しておりますので、お食事もご満足のいく品をお出しします!」
「でも……」
「しかも二人部屋には何と専用のお風呂付き! どんなに混んでいてもゆったりお風呂に入れます!」
「! じゃ、じゃあここに決めます!」
「ありがとうございます!」
反射的にそう言った後、ラテルは少し後悔しました。
(今の感じだと、お風呂の事で決めたみたいに思われたよね……。変に思われちゃうかな……)
ラテルはおずおずと三人の方に向き直ります。
「ご、ごめんね。勝手に決めちゃって……」
しかし三人の反応は、ラテルの予想とは違っていました。
「いや、この状況なら、宿を確保する事が先決だった。いい判断だったと思うよ」
「俺様、風呂にはゆっくり入りてーからな。風呂付きの部屋なんていいじゃねーか」
「野宿は体力を消耗する。宿が正解」
思った以上の肯定的な意見に、ラテルはほっと胸を撫で下ろしました。
(良かった……。これでバレる心配はないかな……)
そう思った次の瞬間。
「では豪華な二人部屋にはラテルが泊まるとして……」
「誰が一緒の部屋になるか、だな!」
「どうやって決めよう」
「え、ちょ、ちょっと待って! 別に僕一人部屋でいいよ!?」
予想もしなかった三人の会話に、ラテルが慌てて割って入ります。
しかし、
「ラテルは勇者だ。勇者を差し置いて私達が豪華な部屋に泊まるわけにはいかない」
「ソレイユ……」
「旅慣れてねー奴は、知らず知らずに疲れが溜まるもんだ。柔らけー布団でゆっくり寝るといいさ」
「エトワル……」
「ラテルが決めた部屋。ラテルが泊まるべき」
「リュンヌ……」
三人の優しさに、ラテルには断る言葉が見つかりません。
(……こうなったら、何とか同じ部屋でも、何とか女って事がバレないように、何とか頑張ろう!)
誰がラテルと泊まるのかを話し合う三人を見ながら、ラテルは決意を固めるのでした。
読了ありがとうございます。
さて誰と同室になるのか……?
誰とになってもどきどきの一夜が始まります(色んな意味で)。
次話は来週月曜日に投稿予定です。
よろしくお願いいたします。




