第十七話 迷って悩んで前を向きます!
王様から盗賊退治の依頼をされたラテル。
困惑しながらも周りの勧めで引き受ける事にしたのですが……?
どうぞお楽しみください。
王様との謁見を終えたラテル一行は、城下町へと戻って来ました。
宿を探しながら歩く中、ラテルは大きく溜息をつきます。
「……盗賊退治かぁ……」
「ラテルどうした。疲れたか」
リュンヌの言葉に、ラテルは弱々しく首を横に振りました。
「ごめんね、心配させちゃって……。さっき引き受けた盗賊退治が不安でさ……。『盗賊の生死は問わない』とか言われると……」
「わかる」
ラテルの言葉にリュンヌが頷きます。
「魔物は倒せば核になる。でも人間は倒すと処理が面倒。気が重くなるのわかる」
「え? あの、ちょっと違うような気がするんだけど……」
戸惑いながらも、ラテルは自分の考えを口にしました。
「盗賊は悪い事だけど、死なせたくないっていうか……。相手は捕まえようとする僕達を本気で攻撃すると思うんだけど、それでも、何か……」
「……」
悩むラテルにかける言葉が思いつかず、黙って見つめるリュンヌ。
その沈黙に、ソレイユが割って入りました。
「ラテル。私達には使命がある。盗賊にやられて旅が続けられなくなれば、魔王によって世界は闇に支配される」
「……うん」
「だからこの話は断っても良い」
「えっ!?」
意外な言葉にラテルはソレイユを見つめます。
兜越しに見えたその目には、優しい色が宿っていました。
「さっきは国同士の関係の事を考えて、ラテルに盗賊退治を勧めはしたが、私達の本来の目的は魔王討伐だ。盗賊退治はこの国の兵士達に任せたっていい」
「ソレイユ……」
「大丈夫。あの王様ならわかってくれるさ」
「……」
ぴたりと足を止めるラテル。
三人も足を止めて、じっとラテルの言葉を待ちます。
「……やっぱり捕まえよう。魔王ほどじゃなくても、この国の人が困ってる事に違いはないもん」
「ラテル」
「……そうか。ありがとうラテル」
「へっ」
決意を固めた様子のラテルに、三者三様に嬉しそうな声をあげました。
するとエトワルが少しからかうような口調でラテルの肩を叩きます。
「大体よー、俺様にかかれば、殺さねーようにとっ捕まえるなんて簡単だぜ?」
「えっ!?」
「俺様の魔法には、眠らせたり幻覚で包んだり、混乱させたりできる魔法があるんだ。傷付けないで捕まえるなんて楽勝だぜ」
「なっ……! そ、それを先に言ってよ!」
「ラテルが決意する事が大事なんだよ。頼もしかったぜ、さっきの言葉」
「〜〜〜っ!」
楽しそうに言うエトワルに、ラテルの顔が恥ずかしさと少しの怒りで赤く染まりました。
「……エトワルのいじわる……」
「えっ」
「そんな試すような事して、僕をからかって……」
「ち、違うぞ! からかうとかじゃなくて、俺様はラテルの成長を促すためにだなぁ!」
「知らないっ」
「待ってくれって! 話し合おう! な!」
恨めしそうに睨んだ後、そっぽを向くラテルにうろたえるエトワル。
「くっくっく……」
「……んふ」
それを見たソレイユとリュンヌの口から、押し殺した笑いがこぼれます。
「おい! 二人して笑ってんじゃねぇ! 旦那なら俺様の意図はわかるだろ!? リュンヌもそうだよな!? 俺様は意地悪でしたんじゃないって言ってくれよー!」
「……ぷっ」
わたわたと弁明するエトワルに笑顔を取り戻したラテルは、機嫌良く歩き出すのでした。
「さ! 宿を探しに行こう!」
「おい待て! 話を聞いてくれラテルー!」
読了ありがとうございます。
エトワル大慌ては書いていて楽しいですね。
ラテルに続いて感情表現が豊かなので、今後もちょくちょくオチを担当してもらおうかと思ってます。
次話は宿屋イベント再び。
またもやラテルに女バレの危険が訪れます。
よろしくお願いいたします。