第十六話 隣国の王様との謁見です!
気さくと名高い王様と謁見する事になったラテル一行。
果たして謁見は無事に済むのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
城に入ると、王様との謁見はすぐに許可が出ました。
案内に続いて、四人は城の中を進みます。
「おいおい、本当にあっさり通されたな。気さくな王様っていうのもあながち嘘じゃなさそうだ」
「まぁ各国の王の中でも珍しい方だ。あまり王族という身分にこだわりがないようでな。町の人とも気軽に話をするそうだ」
「それはすごいね……。うちの王様もそうならいいのに……」
「だが我が国の国王陛下のように威厳を示す事が、国の安定を図る上で必要な事もある。庶民に近いのが一概に素晴らしいとは言い切れないな」
「わかる。死を命じるのは主。友にそれはできない」
「お前の発想はなーんか物騒なんだよなぁ……」
そうこう話しているうちに、四人は謁見の間に到着しました。
「入られよ」
声と共に扉が開きます。
中へと進むと、正面の玉座には恰幅のいい男性が座っていました。
「おお! 勇者ラテル! よくぞ参られた!」
「は、初めまして……」
「アンシャンテ王から話は聞いておる! 若さと可能性に満ち満ちておるな! 魔王討伐には期待をしておるぞ!」
「あ、ありがとうございます……!」
にこにこと笑う王様に、少し緊張がほぐれるラテル。
王様の目は次にソレイユに向けられます。
「そなたは確かソレイユと申したな!」
「覚えていただき、ありがとうございます」
「そなたが付いておれば勇者の旅も安泰であろう! よろしく頼むぞ!」
「勿体ないお言葉、かたじけのうございます」
続いてエトワル。
仮面も帽子も取らない態度も、気にした様子はありません。
「魔術師殿! お名前を聞いても良いかの!?」
「……エトワルだ」
「うむうむ! 強者の雰囲気が漂っておる! これなら魔王討伐も容易く達成できようぞ!」
「えっ、あ、その、ありがとう、ございます……」
不意に誉められ、照れるエトワルから、王様の視線はリュンヌに向きました。
「そなたの名は何と申される?」
「リュンヌ」
「ほう! 良い名であるな! してその出立ちは……」
「斥候」
「そうであったか! 口数が少ないのもそのためであるな! 己が声は何よりも響くが故に、周りの音を聞く斥候は自然と口数が減るそうだな!」
「そう」
「見事! これならば勇者にかかる災難も打ち払えようぞ!」
「……勿論」
最後に全員を見回した王様は、満足そうに頷きます。
「勇者ラテル一行よ! 魔王の闇に怯える民達を救う希望の光よ! そなたらの旅の成功を心より祈っておるぞ!」
「ありがとうございます! 頑張ります!」
元気よく答えるラテル。
その様子に王様はうんうんと頷きました。
「そこで一つ頼みがある!」
「頼み、ですか?」
「うむ! 盗賊退治である!」
「!?」
王様の意外な言葉に、ラテルは固まります。
(魔物退治じゃなくて盗賊退治!? 僕、人間相手の戦いなんてした事ないよー!)
ラテルの動揺をよそに、王様はその盗賊について詳しく語り始めるのでした。
読了ありがとうございます。
ラテルの国の王様の名前を出す必要があったので、慌てて作りました。
アンシャンテはフランス語で『初めまして』の意味だそうです。
まっさらな町と同じ感覚です。
わかりやすいって良いですよね(迫真)。
次話もよろしくお願いいたします。