第十二話 勇者の力を示します!
仲間との差を感じ、焦りを覚えるラテル。
果たして勇者としての力は示せるのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
ラテルは剣を構えて大ガエルに立ち向かいます。
その頭の中は様々な考えがぐるぐると回っていました。
(皆みたいにさっと格好良く勝たないと……! 一発で倒すにはやっぱり頭かな!? こいつどんな攻撃してくるんだろ……! 魔法の方が効くかな……!?)
考えているうちに、大ガエルはラテルにじりじりと近付いていきます。
「ら、ラテ」
「……」
「待ちな」
大ガエルが近付いているのに動かないラテルに、ソレイユが手を貸そうと足を踏み出しました。
その横で短剣を構えるリュンヌ。
それをエトワルが小声で押しとどめます。
「な、何故止める?」
「緊張は明らか。危険」
「ラテルにはラテルなりの覚悟があって、あれに立ち向かってるんだろう。俺様達が考えなしに手を貸していいもんじゃねーよ」
「しかし怪我をしたりして、魔物に恐怖心を抱いたりしたら……」
「旅の危機」
「そん時はそん時だろ。どの道怪我を避けていけるような旅じゃねーんだよ」
「……」
「了解」
エトワルの落ち着いた言葉に、ソレイユは剣の柄から手を離し、リュンヌは短剣を構えた手を下ろしました。
「信じよーぜ。俺様達の勇者をよ」
ラテルは近付いてくる大ガエルに気圧されながらも、真っ直ぐに睨み付けます。
(無駄に突っ込んで攻撃を外したりしたら、絶対格好悪い! 確実に勝たないと……!)
その動きの少なさを、大ガエルは戦意を喪失した獲物と捉えました。
にたりと笑うように口を歪めると、舌を伸ばします。
「くっ!」
大ガエルの動きに注視していたラテルは、それを剣で弾きました。
思わぬ反撃に、大ガエルの身体がよろめきます。
「ここだ!」
ラテルは駆け寄って、思いっきり剣を振り下ろしました。
剣は大ガエルの頭を直撃!
しかし倒すには至らず、
「うわっ!?」
ラテルは剣を持った手を舌に絡め取られてしまいました。
「し、しまった……!」
パニックになりかけるラテル。
そこにエトワルが気楽な声をかけます。
「おー、いー形になったじゃねーか。ぶちかましてやれよ、ラテル」
「……? ……!」
一瞬戸惑うラテルでしたが、すぐにその意図を理解して、
「数多に散る火の精霊よ……! 我が手に集いて力を示せ! 火球!」
呪文を放ちました。
大ガエルは無防備な口の中に火球の直撃を食らい、どうっと倒れるとそのまま核を残して消えていきます。
「……や、やったぁ!」
ラテルの勝利の雄叫びが、草原に響き渡りました。
読了ありがとうございます。
ソレイユとエトワル、そしてリュンヌの、ラテルに対するスタンスの違い。
これが今後どう影響していくか……。
次話もよろしくお願いいたします。