第十一話 本格的な冒険の始まりです!
朝を迎え、旅立つラテル一行。
本格的な冒険に、ラテルは興奮と同時に不安を感じますが……?
どうぞお楽しみください。
一夜明けて快晴。
ラテル達は気持ちも新たに村を出発しました。
「じゃあ朝ご飯の時に打ち合わせた通り、魔物と戦いながら東に向かおう! で、戦う順番は、ソレイユ、リュンヌ、僕、でエトワルに行ったらもう一周ね!」
「了解」
「けっ。全部俺様に任せれば楽できんのによ」
「まぁそう言うな。旅の序盤にお互いの力を知っておく事は悪い事じゃない」
先頭はリュンヌ、次にラテル、その後ろにエトワルが続き、最後尾をソレイユが守ります。
前後左右、どこからの攻撃にも対応できる、バランスの取れた隊列でした。
「さーどっからでもかかってこーい!」
「今敵はいない」
「いいんだよ。こういうのは気合いが大事なんだからな。なぁ騎士の旦那」
「まぁそうだな。怯えていると身体が縮こまってしまう。敵が来ない事を願うよりは、待ち構えているくらいの気構えが良いだろう」
「そうだよね! 頑張っていこう!」
同意されて、更に元気を振りまくラテル。
「ただあんまりはしゃぎすぎるんじゃねーぞ。先は長いんだからよ」
「無理をせず、疲れたと思ったらすぐに言ってくれ」
「へーきへーき! 僕今元気いっぱいで」
「ラテル。敵だ」
「ぴっ!」
リュンヌの言葉に元気さをかき消し、ラテルは身体を強張らせます。
そこに昆虫の羽を持つサソリのような魔物が三体現れました。
「な、何あれ……?」
「飛びサソリか。では私だな」
驚くラテルの横を、すらりと剣を抜いたソレイユが駆け抜け、飛びサソリに突進します。
「はっ! せいっ!」
気合いと共に振った二筋の剣閃は、見事に飛びサソリ二体を両断しました。
仲間を斬られ、牙を打ち鳴らして威嚇する飛びサソリ。
しかしソレイユは意にも介さず、
「邪魔だ」
あっさりと斬り伏せました。
飛びサソリは核だけを残して消えていきます。
「言うだけの事はあるな、騎士の旦那」
「……すごい……」
「大した事はないさ」
「また敵。今度は自分」
大きなカラスが二羽飛びかかってきましたが、リュンヌの両手が素早く動いたかと思うと、二羽同時に首を短剣で貫かれ、地面に落ちて核になりました。
「へぇ、やるなぁ」
「斥候の基本」
「ここまでの精度の技はなかなかお目にかかれない。見事なものだ」
「……」
ラテルは二人の技に憧れるような、それでいて悔しいような、複雑な表情を浮かべます。
(僕はソレイユみたいに剣を使えない……。リュンヌみたいな技もない……。魔法もエトワルには全然敵わない……。僕が勇者でいいのかな……)
勇者に任命されても実績のないラテルは、仲間の強さに頼もしさを感じると同時に、焦りが込み上げてきました。
「つ、次は僕が戦うね!」
「あ、あぁ、それは構わないが……」
「大丈夫か? 肩の力抜けよ」
「また来る。今度は一体。大ガエル」
「よ、よーし!」
剣を抜き身構えるラテル。
その手は細かな震えに支配されているのでした。
読了ありがとうございます。
仲間が優秀だと、それと同じにならなくてはいけないと焦ってしまうものです。
自分にできる事をちゃんと見つけられれば良いのですが……、ラテルは……?
次話もよろしくお願いいたします。