宇宙で一番いらないこ
冷たい風が頬をなぶる。朋は思わず巻いていたマフラーに顔をうずめた。
一二月になったばかりの街は、日が暮れかかっている。びっしりと雲に覆われた空が、ものも言わず暗くなっていく様は、見ている者の気持ちまで暗く沈ませた。
保護猫カフェから自宅までは徒歩で十分程だ。
寒さから早足になりながら、朋はふと道の横に広がる空き地を眺めた。傾いている立て看板には「マンション建設予定地」とある。
朋が暮らすこの街は新興住宅地で、こういった空き地は珍しくない。
空き地を迂回するように歩いている内、上履きの方の靴裏から冷気がビリビリと上がってきた。
上履きのゴム底がこんなにも薄いものだったなんて。学校で履いているときは意識すらしなかった。
朋が忌々しく思っていると、ぽつりと一粒頬に水滴が落ちてくる。
(うそ、雨?)
見上げれば空はますます重さを増し、今にも破れて落ちてきそうだ。どこからか、遠く雷鳴まで聞こえる。
(天気予報では何も言ってなかったのに)
今日は折りたたみ傘を持ってきていない。自宅まで走ろうかと、カバンを肩に掛けなおした、その時だった。
青白い閃光があたりを包む。
その後間髪入れずに、朋が今まで聞いたこともない轟音が鳴り響いた。
朋は恐怖を感じる間もなく固まってしまった。カバンを掛けなおした姿勢のままその場に立ち尽くす。
どうも、迂回していた空き地の真ん中に雷が落ちたらしい。
(周りに沢山背の高い建物があるのに、どうしてこんな空き地に)
朋は訝しがり、その雷が落ちた場所へ目を向けた。
「!」
そこには人の大きさくらいの黒い塊があった。もしかしたら、雷に打たれたのかもしれない。
「大丈夫ですか!」