宇宙で一番いらないこ
「それ」が始まったことに、きっかけはなかった。
高校二年生の秋、二学期が始まってすぐのことだ。
朋がいつものメンバーに声をかけても、みんなが朋を避けるように離れていく。そして朋を抜いたそれ以外のメンバーと談笑を始める。
(あ、これは、アレだ)
朋はすぐにピンときた。そしてそれ以上、彼女たちに声をかけるのをやめた。
というのも中学生の頃にもそういうことがあったからだ。
中学生の頃はもっと直接的で、体操服がなくなったり、教科書にひどいことが書き込まれたりと物証があった。それゆえにいじめだ、と自分自身も確信が持てたのだが、今回はもう少し巧妙だった。
朋からは話しかけない。だから無視ではない。けれど誰からも話しかけられない。時々、クスクス笑われている。けれど笑われているだけで悪口かどうかは分からない。気のせいかもしれない。
これはいじめなのか、いじめではないのか。朋には判断が付かなかった。少なくとも先生には「いじめではない」と言われるに決まっていた。
そんな風にして過ごすうち、あっという間に二か月が経っていた。
そんな朋のモヤモヤに決着をつけるかのように今日靴がなくなったのである。