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その後。
まずは、勇者は、洋服屋で手早く黒のベレー帽を買って来て、ラリサに渡した。
「わぁ! 勇者さんから自分への、初めてのプレゼントっすね!」
と、明るい声を上げるラリサに、
「そんなんじゃない。ただ、角を隠すためだけのものだ。モンスターだとバレると面倒だからな」
と、勇者はすげない。
だが、ラリサはそれでも嬉しいらしく、
「ありがとうっす、勇者さん!」
と、笑みを浮かべた。
そして、早速ベレー帽を被ったラリサは、
「どうっすか? 似合ってるっすか?」
と、頬を紅潮させながら、上目遣いで聞いた。
勇者は、
「ああ、似合ってる似合ってる」
と、明後日の方向を見ながら、適当に答える。
ラリサは、
「もう! ちゃんと見て欲しいっす!」
と、頬を膨らませるが、勇者は無視して、
「あ、そういや、尻尾もあったな……どうするか……」
と、ラリサの細長い尻尾を見ながら、呟いた。
ラリサは、
「ちょっとここで待つっす!」
と言うと、直ぐ近くの十字路を左に曲がり、周囲に誰もいないのを確認して、何やらごそごそと動いた。
そして、
「お待たせっす!」
と言って戻って来たラリサは、もう尻尾が外に出ていなかった。
「へぇ。服の下にしまえるのか」
と、勇者は言った。街中でどのようにやったのかは分からないが、ラリサは、どうにかして尻尾をドレスの中に収納したらしい。
「えへへ。頑張ったっす!」
とはにかむラリサを見た勇者は、
(これなら、取り敢えずは大丈夫だな)
と思った。
角と尻尾が隠れた事で、一目見ただけではモンスターだと気付かれる事はまずないだろう。