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勇者のトラウマに関して話し終わったジュディに、ラリサは、
「そんな事があったんすね……」
と、呟いた。
ジュディは、ラリサを穏やかな表情で見詰めながら、
「あんたは、どことなく、アレイダに似てるわ。雰囲気とか」
と、言った。
ラリサは、
「そうなんすか?」
と、目をパチクリさせる。
ジュディは、心の中で、
貧乳って所もね。
と付け加えたが、口には出さなかった。
勇者が巨乳好きになった理由は、アレイダが貧乳だったからだ。
貧乳少女を見ると、どうしてもアレイダの事を思い出してしまうため、いつまでもアレイダの事ばかりうじうじと考えながら生きるのではなく、前に進もうと考えていた勇者は、アレイダとは正反対の、巨乳の女の子たちをデートに誘うようになったのだ。
ジュディは、ラリサに、
「あの馬鹿は、今でもアレイダに救われた自分を、そしてアレイダを救えなかった自分を、許せないでいるわ。だから、あんたが同じような状況でアイツを庇った時に、ドラゴンの攻撃があんたに届いてしまった事で、それを防げなかった自分に対して怒ったのよ。勿論、あんたはこうして無事よ。でも、アイツは、きっと、〝また救えなかった〟って思ってるのよ」
と、静かに語った。
それを聞いたラリサは、
「そうだったんすね……」
と、言った。
ジュディは、
「あと、もう一つ。大事な事があるわ」
と言うと、こう続けた。
「アイツは、あんたがいなくなってしまう事が――あんたを失うのが、怖いのよ」
「!」
思わず立ち上がったラリサは、
「ほ、本当っすか!?」
と、聞いた。
ジュディは、
「間違いないわ」
と、答えた。
ラリサは、
「勇者さんが、自分の事を……」
と、呟くと、
「自分、やっぱり、勇者さんとちゃんと話をしたいっす!」
と、真剣な表情を浮かべた。
ジュディは、
「そうね。あたしも、それが良いと思う」
と、頷いた。
ラリサは、居ても立っても居られない、という様子で、
「自分、今すぐ勇者さんに会って来るっす!」
と言うと、ジュディの横を通ろうとした。
ジュディは、
「待って」
と言って、ラリサの腕を取ると――実際には触れていなかったが――、
「アイツがどこにいるか、分かるの?」
と訊ねた。
その言葉に、ラリサは、
「そ、そうだったっす……。王都中、色んな所を探したっすけど、見付からなかったっす……」
と、項垂れた。
ジュディは俯いて、何やら思考していたが、
「あたしに心当たりがあるわ」
と言った。
ラリサは、
「本当っすか!?」
と、顔を上げた。
ジュディは、
「ええ。まず間違いないと思うわ」
と、言った。
「さすがジュディさんっす!」
と、明るい声を上げるラリサに対して、ジュディは、
「ちょっとアイツを連れ戻しに行って来るわ。あんたはここで待ってて」
と言うと、立ち上がった。
ラリサは、
「分かったっす! ジュディさん、本当にありがとうっす!」
と、笑みを浮かべた。