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その後。
〝魔法攻撃を無効化するガーゴイル〟をジュディが倒し、モンスターの大群の残りを全て殺したマイルズが、もう一匹の〝物理攻撃を無効化するガーゴイル〟に止めを刺した。
それ以降、勇者は、人が変わったように、鬼気迫る様子で修行に打ち込むようになった。
無論、それまでも、時間を見付けては、一生懸命に修行していた。
だが、アレイダが死んでからは、一緒にいるジュディとマイルズが狂気を感じる程に、修行にのめり込んで行った。
勇者は、毎日、巨大な岩を背負った状態で筋トレをし、その状態のまま走った。
そして、当時、それぞれ剣技と魔法に於いて自分よりも強かったジュディとマイルズに頼み、ボロボロになるまで実戦訓練を行い、剣技と魔法を磨いた。
ジュディとマイルズが、新たな僧侶をパーティーメンバーに入れないかと提案した際、勇者は、「俺がアレイダの分もやる!」と言って、支援・回復役を買って出た。
そして、わざと自分の腕や脚を聖剣で貫いて、まだ使えなかった中級回復魔法を発動出来なければマズい、という状況を作り出し、中級回復魔法を習得し、次に自分の腹部を刺して、そのままだと出血多量で倒れる、という窮地に追い込み、上級回復魔法を会得し、最後は、自らの心臓を突き刺して致命傷を与えて、そのままだと死ぬ、という状態にして、最上級回復魔法を物にした。
常軌を逸した修行を続ける勇者を、ジュディは本当は止めたかった。
が、アレイダを死なせてしまった責任を感じているが故の行動である事は分かっていたため、止める事が出来なかった。
〝それならば、せめて、自分が勇者の目標としてあり続けよう、自分ももっと強くなろう、もう二度と、仲間が誰一人欠けないように〟。そう思ったジュディは、自分自身も必死に修行を行った。
マイルズも、〝抜かされるのは癪だ〟という理由ではあったが、懸命に鍛練を行った。
そうして、三人とも、いつしか人智を超えた力を手に入れていた。
中でも、勇者の成長は目覚ましく、人間としての限界を超えた凄まじい強さを会得していたジュディとマイルズを、それぞれ剣技と魔法の力で凌駕するに至った。
そして、三人は、魔王を討伐した。
ちなみに、魔王を倒すまで、勇者は、〝聖剣で戦いながら、自分と仲間たちに防御魔法を掛け、仲間たちが傷付けば回復魔法も発動し、攻撃魔法で攻撃もする〟という、尋常では無く神経を擦り減らす戦い方をし続け、常に神経を張り詰めていた。
そのお陰で、現在の、〝二十四時間三百六十五日、いつモンスターが至近距離に空間転移して襲って来るか分からない〟という状況にも対応出来ている。