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「勇者さん!」

 と、明るい声を上げるラリサ。

 勇者は、

「そいつは、俺のおん――デート相手だ。勝手に連れ去ってんじゃねぇよ」

 と言うと、マイルズを睨み付けた。

 マイルズは、

「コソコソ隠れて、様子を窺ってやがったのか? ハッ! ケツの穴の小せぇ野郎だな、てめぇは!」

 と、でかい声で罵った。

 勇者は、

(ちげ)ぇよ! ラリサを探していて、丁度今、見付けたんだ!」

 と、否定したが、実は、マイルズの指摘した通りだった。

 あの後、飛行魔法で空からラリサとマイルズを探していた勇者は、間も無く二人を見付けた。

 しかし、二人きりでテラス席に座る姿を見て、何故か話し掛ける事が出来ず、つい、物陰に隠れてしまった。

 そして、出現するモンスターを倒していては流石に気付かれてしまうため、モンスターが空間転移して来る気配を感じ取る度に、荒野に空間転移して、聖剣を一閃して瞬時に殺し、また物陰に空間転移魔法で戻って来て二人の様子を見る、という事を、先程まで何度も繰り返していたのだ。

 勇者は、

「行くぞ、ラリサ」

「え? わ、分かったっす!」

 と言って、ラリサの手を取って――触れてはいなかったが――その場から去ろうとした。

 だが、マイルズが、

「逃げんのか? そんなに俺様が(こえ)ぇか。ハッ! 情けねぇ野郎だ」

 と、挑発すると、勇者の肩が、ピクッと反応した。

 そして、

「お前の事なんか怖がる訳ないだろうが!」

 と言うと、勇者はラリサの手を離し、一瞬迷った後、マイルズの隣に座った。

 ラリサは、気まずそうにしながら、

「二人は久し振りの再会っすよね? 積もる話もあるだろうし、自分は席を外すっす」

 と、立ち上がった。

 が、マイルズが、

「その必要はねぇ。主役がいなくちゃな」

 と言って止めて、勇者も、

「お前はそこにいろ」

 と言った。

「そ、そうっすか……」

 と呟くと、ラリサは、落ち着かない様子で再び座った。

 勇者は、注文を取りに来た店員にジュースを頼むと、

「そういや、お前、旅はどうしたんだ?」

 と、右に座るマイルズに聞いた。

 マイルズは、

「色んな所に行って、十分満喫したからな。それで、戻って来たんだ」

 と答えた。

「……へぇ~」

 と、勇者は言いながら、空間転移して来たモンスターを一瞬で倒した。

 以前にも見た事があり慣れているのか、はたまた元からそうなのか分からないが、突如現れたモンスターとそれを倒した勇者を見ても、マイルズは全く動じない。

 店員が運んで来たジュースを受け取り、一口飲んだ勇者に対して、マイルズは、

「それにしても、てめぇ、さっき現れた時は、相当切羽詰まった顔してたぜ? そんなにラリサが好きなのか?」

 と、笑みを浮かべながら、大きな声で訊ねる。

 勇者は、ほんのりと頬を朱に染めつつ、

「な、何言ってんだ!? 別に、そんなんじゃねぇよ!」

 と言うと、顔を背けた。

 言葉では否定しているものの、照れ隠しのようにも見えるその様子に、ラリサは、

 もしかして、勇者さん……!?

 と、少し、嬉しい気持ちが湧き上がって来た。

 ――しかし、その直後――

「! 危な――」

 ――邪悪な笑みを浮かべたマイルズが、顔を背けた勇者に対して密かに魔法の杖を向けて、至近距離から、最上級氷魔法を放とうとしていた。

 マイルズの魔法発動は、悲鳴にも似たラリサの声よりも早く、間に合わない――

「がぁ!?」

 ――かと思われたが、それよりも一瞬早く、顔を背けたままの勇者が、聖剣でマイルズの身体を、椅子と魔法の杖ごと上下に一刀両断していた。

(今の手応えは――)

 と、振り返った勇者が、マイルズを見ると――

「――なんてな」

「!」

 斬られたはずのマイルズの身体は、全く出血しておらず、上半身と下半身それぞれの断面から触手が無数に蠢いているのが見える。

 それを見た瞬間、勇者は、

(これ以上コイツとここで戦うのはマズい!)

 と直感し、

「『空間転移(ワープ)』」

 と、自分とマイルズの二人に対して、空間転移魔法を発動した。

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