表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/55

23

 それから数日間。

 勇者は、ラリサとランチデートをしたり、お茶をしたりと、変わらぬ日々を過ごした。

 新しい服でも買ってやろうかと勇者は言ったのだが、ラリサは、

「大丈夫っす! もう、これを買って貰ってるっすから! えへへ」

 と、勇者から貰った帽子を大切そうに触った。

 ドレスに関しては、母親から貰った物で、思い入れがあるらしい(母親の死から数年が経っているが、胸が殆ど成長しなかった事が幸いしているのか、今でも問題なく着る事が出来ているようだ)。


 そんなある日。

 勇者は、ジュディに週一回の〝生存報告〟をしに行く事にした。

 前回の反省を活かして、今回は、きちんと一週間経つ前に、余裕を持って行う事とした。

 一人で行こうと思ったのだが、ラリサが、

「自分も行くっす!」

 と言って聞かなかったため、仕方なく二人で一緒に向かった。

「俺の事を信じてくれるんじゃなかったのか?」

 と、大通りで空間転移して来たモンスターを瞬時に聖剣で屠りつつ、勇者が聞くと、

「勿論、信じてるっす! でも、それとこれは話が別っす!」

 と、隣を歩くラリサが答えた。

(いや、それは、〝本当は俺の事を信じてない〟って事になるんじゃないのか?)

 と思いながら、勇者は溜息をついた。

 ジュディの武器屋に到着して、店の中に入る。

 店内には、客が数名おり、それぞれ商品を吟味している。

 カウンターには、ジュディの姿は無く――

「あ! 勇者さん、いらっしゃいませなの!」

 ――と、青髪ショートヘアの巨乳美少女が、勇者に向けて笑顔を向けた。

 武器屋にも拘わらず、美少女は何故か、白と黒を基調としたメイドの格好――エプロンドレス――を身に着けている。

 勇者が美少女に声を掛けようとするが――

「この国の武器屋の店員は、全員巨乳じゃなきゃいけない法律でもあるんすか!?」

 ――と、一瞬早く、カウンター越しに美少女の豊満な胸を凝視しながら、ラリサが声を上げた。

 美少女は、

「えっと……あの……勇者さん、この方はどちら様なの?」

 と、明らかに困惑しながら呟く。

 勇者は、

「何かうちの連れがごめん、クリス。コイツの事は気にしないで良いから」

 と言うと、「自分は、ラリサっす! 気にして欲しいっす!」と噛み付くラリサを無視して、

「ジュディはいないみたいだね」

 と言った。

 クリスは、

「ごめんなさいなの。仰る通りなの。店長は、仕事で出掛けているの」

 と、申し訳なさそうに、頭を下げた。

 勇者が、

「いや、良いんだ。いつも通り、大した用事じゃないし。待たせて貰うよ」

 と言うと、クリスは、

「はい、ごゆっくりどうぞなの」

 と、微笑んだ。

 他の客がいるため、勇者はラリサと共に、一旦店外に出た。

 流石にジュディの店の前にモンスターの死体を散乱させておく訳にはいかないので、空間転移して来るモンスターは炎魔法で一瞬で灰にして行く。

 そうして、暫く待っていると――

「あら、いらっしゃい、ラリサ」

「ジュディさん、こんにちはっす!」

 ――ジュディが戻って来た。

「俺の生存報告なのに、俺より先にラリサに挨拶するって、どうなんだ?」

 と、勇者が不満を訴えると、ジュディは、

「うるさいわね。男が細かい事を気にするんじゃないわよ。だからあんたはモテないのよ」

 と、冷たくあしらった。

 勇者は、

「いや、お前が週に一度は来いって言ったから来ているんだが、それで貶されちゃ、堪ったもんじゃないぞ……」

 と言うが、ジュディは完全に無視して、

「お菓子あるわよ、食べる?」

「わぁ~い! 食べるっす!」

 と、ラリサと一緒に店内へと入って行った。

 それを見ながら、勇者は、深々と溜息をついたが、

(まぁ、今回は殺されそうになる事も無かったしな)

 と、前回と違って斬り掛かられる事も無く、無事に生存報告を済ます事が出来たという事で、良しとする事にした。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ