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王都――の大通り――に戻って来た勇者が見ると、直ぐ傍に、ラリサも空間転移していた。
勇者は、
(やっぱりそうか)
と思った。
魔王の呪いによって勇者を殺すために空間転移させられたラリサだが、まだ勇者を殺せていない。
そのため、勇者が空間転移魔法を使うと、同じ空間転移魔法を用いた魔王の呪いが、それを〝勇者が逃げようとしている〟と判断して、ラリサを勇者の所へと空間転移させるのだ。
歩いたり走ったりして距離が離れた場合は呪いが反応しないのは、戦闘中でも、戦略的に一旦距離を取る事があり得るからであろう。
勇者は、改めてラリサを見詰めると、
「さっき、クラーケンが――」
と、早速質問しようとした。
だが、
「さ、さっきは、何でクラーケンが来るって分かったっすか?」
と、先にラリサが聞いてきた。
勇者は、
「俺は、大体、どんなモンスターが来るかを直前に感じ取れるんだ。多分、今まで数え切れない程モンスターと戦って来た事と、俺が空間転移魔法を使える事と、その二つが関係してるんだと思う」
と答えた。
ラリサは、
「なるほど! さすが勇者さんっすね!」
と頷くと、今度は、
「だから、砂漠に空間転移したんすか?」
と、質問した。
勇者は、
「そうだ。出来るだけ、相手にとって不利で、自分にとって有利な場所を選んで空間転移するようにしている。今回は、海の最上級モンスターが空間転移して来る事を察知したから、砂漠地帯にしたんだ」
と言った。
ラリサは、
「そうだったんすね!」
と言うと、
「えっと、じゃあ、あとは……」
と、尚も質問しようとするが、それを勇者が、
「もう良いだろ。さっき、クラーケンが言ってた事はどういう事なのか、そろそろ教えろ」
と、遮った。
ラリサは、
「……分かったっす……。……全部、話すっす……」
と、観念したかのように言った。
先程のレストランに戻り、店員に事情を話して、再び席についた二人。
ラリサは、
「あのモンスターが言ってた通りっす。自分は、魔王の子どもで、最後の〝忌み子〟と呼ばれてるっす」
と言うと、静かに生い立ちを語り始めた。