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 翌日。

 レストランにて一緒にお茶をしている時に、ラリサが、勇者に言った。

「ジュディさんとは、どういう仲なんすか!?」

 どうやら、大量菓子効果は一日しか持たなかったらしく、ラリサは、詰問する気満々だった。

 勇者は、うんざりした表情を浮かべつつ、

「アイツが言った通りだ。魔王討伐時のパーティ仲間だ」

 と言った。

 だが、ラリサはそれでは納得しない。

「勇者さんの恋人じゃないんすか!?」

 一生懸命睨んで来るが、全く威圧感が無いラリサを見ながら、勇者は、

「違うって言ってんだろ。俺たちは、あくまで〝仲間〟としかお互いの事を見ていない。異性として意識していないんだ」

 と答えると、溜息をついた。

 ラリサが、

「でも、ジュディさんは、巨乳美少女っす! 正に勇者さんの好みドストライクじゃないっすか!」

 と指摘すると、勇者は、

「うっ……。それはそうだが……」

 と、言葉に詰まる。

 そんな勇者に対して、ラリサは、

「ほら、認めたっす! 他の子は騙せても、自分の目は誤魔化せないっす!」

 と、勝ち誇ったかのように言う。

 勇者は、

(また菓子を大量に買って黙らせるか……)

 と思ったが、ふと、

(そうだ。もし、コイツが俺の事を本当に好きだと言うなら……)

 と、何かを思い付いた。

 そして、こう言った。

「ラリサ。お前は、俺の事が好きか?」

 その問いに、ラリサは、

「勿論っす! 大好きっす!」

 と、即答する。

 すると、勇者は、

「そうか。俺の事を好きだと言う癖に、俺の言う事は全く信じてくれないんだな……」

 と言って、俯き、悲しそうな表情を作って見せた。

 それを見たラリサは、

「あうっ……そ、それは……」

 と、返事に窮する。

 勇者が尚も、

「俺の言う事を信じてくれないなんて、俺は悲しい……」

 と、俯きながら、わざと悲しそうな声を上げると、ラリサは、

「わ、分かったっす! 勇者さんの事を、信じるっす!」

 と、慌てて言った。

 その直後、勇者は、

「そうか、信じてくれるか。ありがとう」

 と、顔を上げた。

 ラリサは、

「もう! そんな事されたら、そう言うしかないっす! 勇者さん、ズルいっす!」

 と言って、むくれる。

 勇者は、

「さて、何のことやら」

 と言って左手でジュースを飲みながら、至近距離に空間転移して来たモンスターを、聖剣で一瞬で屠った。

 プンプンと怒っていたラリサだったが、暫くすると、落ち着いたらしく、不意に、

「あ、そう言えば、魔王討伐の時って、勇者さんは何人で挑んだんすか?」

 と聞くと、

「まさか、ジュディさんと二人っきりだった、とかないっすよね!?」

 と、眉を顰めながら付け加えた。

「んな訳ないだろうが」

 と言った勇者は、

「四に――」

 と言い掛けた後、

「……いや、俺を含めて三人だ」

 と、言い直した。

 先程の演技と違い、勇者の目には悲しさと寂しさが見て取れる。

 が、ラリサは、

「……そうだったんすね」

 と、その理由は、聞かなかった。

 そして、

「三人目の――もう一人の仲間は、どういう人なんすか?」

 と、代わりに聞いた。

 勇者は、気を取り直して、

「マイルズといって、筋骨隆々で、常に上半身裸でいる男だ」

 と、答えた。

 ラリサは、

「武闘家っすか。何か、物理攻撃に特化したパーティー編制っすね。勇者さんが後衛で魔法での支援に専念すれば、バランスは良くなるかもしれないっすけど」

 と、珍しく賢そうな事を言った。

 その言葉に、勇者は、

「ん? 何言ってるんだ? マイルズは、魔法使いだぞ」

 と、言った。

 ラリサは、

「そうっすよね。筋骨隆々の魔法使い……って、はい!? 今、魔法使いって言ったっすか!?」

 と、思わず聞き返す。

 勇者が、

「ああ、そうだ」

 と、頷くと、ラリサは、

「でも、『筋骨隆々で、常に上半身裸でいる』って言わなかったっすか?」

 と、聞いた。

 勇者は、

「だから、筋骨隆々で、常に上半身裸でいる魔法使いだ」

 と、答えた。

 ラリサは、

「意味が分からないっす……」

 と、混乱していた。

 勇者は、

「まぁ、確かに見た目は、魔法使いっぽくはないな。だけど、腕は確かだ。魔法戦闘でアイツを倒せるのは、世界中で俺しかいない」

 と、勇者なりの最大限の賛辞を述べた。

 ラリサは、

「はぁ、そうなんすね……。不思議な人っすね」

 と、呟いた。

 勇者が、

「まぁな」

 と呟いた。

 ――直後――

「!」

(来る!)

 何かを感知した勇者は、

「『空間転移(ワープ)』」

 と、即座に空間転移魔法を発動した。

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