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店の外に出ると、案の定ラリサが、
「遅いっす! 遅いっす! 遅いっす! 遅いっす! 遅いっす!」
と、これ以上ない程に頬を膨らませて、御冠だった。
「何してたっすか!?」
と詰問するラリサに、
「ただ話をしていただけだ」
と答え、視線を逸らす勇者。
ラリサは、顔を顰めて、
「何すか、ただ話をしていただけって!? 浮気っす! 浮気はダメっす!」
と、喚き散らす。
勇者が、
「だから、ただの〝振り〟なのに、浮気も何もあったもんじゃないだろうが」
と言うと、ラリサは、
「振りでも、ちゃんと全力で演じなきゃダメっす! だから、浮気っす! ううん、これはもう、浮気どころじゃないっす! 不倫っす! これはもう不倫っす~!」
と、叫んだ。
勇者は、
「いや、浮気でも意味不明なのに、不倫とかもう訳分かんねぇよ! そもそも結婚してねぇし!」
と突っ込むが、ラリサは尚も、
「浮気っす! 浮気っす! 不倫っす! 不倫っす~!」
と、不平不満を爆発させる。
勇者は、深い溜息をつくと、
「露店で、好きな菓子を、何でも、好きなだけ買って良いぞ」
と言った。
すると、ラリサは、
「え!? 本当っすか!? やった~!」
と、満面の笑みを浮かべた。
どうやら、機嫌は直ったらしい。
その後。
大量の菓子が詰め込まれた数多の袋を持たされた勇者と、幸せそうに菓子を頬張るラリサの姿があった(その状態でも、勇者は問題なく、空間転移して来るモンスターたちを素早く殺して行った)。