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 そして、翌日の昼。

 勇者は、約束通り、ラリサをデートに連れて行った。

 昨日とは別のレストランのテラス席に座る勇者。

 その隣には、ラリサ。

 そして、勇者の向かいには――赤髪ロングヘアの巨乳美少女。

 ラリサは、自分抜きで巨乳美少女と談笑する勇者に対して、

「いや、確かにデートに連れて来て貰ったっすけど、これ、自分のデートじゃなくて、他人のデートじゃないっすか!」

 と、突っ込んだ。

 しかし、勇者は、「これはあくまでも、俺と巨乳美少女との二人きりのデートだ」とでも言わんばかりに、徹底的にラリサを無視していた。

「いい加減に……!」

 と、ラリサが、怒りでわなわなと震え出した。

 ――次の瞬間――

「グアアアア――ガハッ!?」

 ラリサの直ぐ後ろに突然現れたオーガ――鬼の半獣人のモンスター――を、聖剣で一刀両断した勇者は、透かさずラリサの両脇の下に手を入れて持ち上げて――触れない(代わりに、何か透明で無機質な薄い金属のカバーのような物に触れているような感覚がする)が、持ち上げる事は出来るらしい――オーガ(の死体)とラリサと自分とデート相手が一直線になるようにする事で、デート相手に返り血が掛からないようにすると同時に、自分自身も血で汚れないようにした。

 これが、〝ラリサを盾代わりにする〟という、勇者が思い付いた作戦だった。

 思った通り、ラリサが返り血を弾くため、ラリサよりもこちら側には、一切血が飛んで来ない。

(完璧だ!)

 と思った勇者が、ラリサを下ろしつつ、

「大丈夫だったかい?」

 と言いながら、赤髪ロングヘア美少女の方を振り向くと――

「きゃあああああああああああ!」

「!?」

 ――勇者の努力虚しく、悲鳴を上げる赤髪美少女の姿があった。

 逃げ出そうとする彼女を見た勇者は、必死に呼び止める。

「え、な、何で!? ま、待ってくれ! その内、モンスターが全部いなくなるまでの辛抱だから! 頼む! あと十年待ってくれ!」

「そんなの、無理いいいいいいいいいいい! いやあああああああああああ!」

 勢い良く走り去って行く赤髪美少女。

 取り残された勇者は、呆然としながら、力なく呟いた。

「デート相手も俺も、両方とも返り血を浴びない、完璧な作戦のはずだったのに……何でだ!?」

 すると、先程の怒りはもう静まったらしいラリサが、

「……勇者さん、意外とアホなんすね……」

 と言った。

 馬鹿にされた勇者だが、怒る気力もない様子で、ラリサを弱々しく見やる。

 ラリサは、

「返り血とか、そういう問題じゃないと思うっすよ?」

 と言うと、こう続けた。

「多分、普通の女の子は、モンスターが現れて、それを目の前でスプラッターにされて、ってのが耐えられないんだと思うっす」

 そして、最後に、

「それに、そもそも、デートに他の女を連れて行くってのも、相手の女の子的には、無しっすよ?」

 と、付け加えた。

 勇者は、

「……うるせぇ……」

 と、小さく呟くと、金を払って、店を後にした。

 ラリサは、大通りを歩く勇者の隣を歩きつつ、

「その点、自分だったら、目の前で勇者さんがどれだけモンスターを倒しても、全然平気っす! どうっすか? オススメ優良物件っすよ!」

 と、科を作ってアピールした。

「……誰がモンスターなんかとデートするかよ……」

 と、勇者は呟いた。

 ラリサは、

「もう、そんな事言わないで欲しいっす~! デートしたいっす~! 一ヶ月だけっすから~!」

 と、尚も食い下がる。

 が、勇者は、無視して歩き続けた。

(次は……次こそは……!)

 と、思いながら。

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