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主人公一行は馬車に揺られて城を目指します。
馬車の中ではお姫様と主人公たちが楽し気に会話を繰り広げます。
『ちょうど歩き疲れてたところだったんだ。馬車での移動は助かるよ』
『ふふ。いつでもタクシー代わりに使ってくださっていいのですよ』
『ちょ、ちょっと、気安く主人公に話しかけないでよ。この人は私のフィアンセなんだからね!』
主人公とお姫様の会話にお嬢様が割り込む。
どうやら、お嬢様は主人公と結婚することを決意していたらしいです。
『まあまあ、それにしてもわざわざお城でお礼を渡してくれるとは気が利いてるね』
『これもノブレスオブリージュですから』
出た。
ノブレスオブリージュ。
「姫様って王族ですよね? ノブレスオブリージュって王族は使わないと思うんですけど」
「使わないな。まあ、作者がノブレスオブリージュって言葉を使いたいんだろ。だいたいのなろう作者はその単語が大好きだ」
「でも、この使い方だと読者から批判がきませんか? ちょっとセリフを変えさせたほうがいい気がします」
「いや、それには及ばない。なぜなら読者もよくわかってないからだ。そもそも王族と貴族のちがいすらわかってないと思うぞ」
「ええ、それはさすがに……」
「なろうの作者は基本的に知識がない。だが、それは面白いストーリーとは関係がないから別に問題ないんだ。三浦隊員も勘違いしないでくれよ。我々は誤字脱字や校正校閲をしにきたんじゃない。エタるのを回避するためだけにこの世界にやってきたのだ」
そういえば、そうでした。
いつの間にか読者の目線になってましたね。
「二階堂さん。どうですか、今のところエタる様子はありませんが……」
「いや、問題大アリだぞ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ、どうしようかと考え中だ」
◆ ◆ ◆
城に到着。
さっそく王様と謁見です。
アポ? そんなものは必要ないんですよ。
『おお、よくぞ我が娘を助けてくれたな。褒美を取らせよう』
『おー、ありがとう。太っ腹だね』
『そうね、本当にお腹が大きいわ』
『ほっほっほ! 愉快な若者たちだ! 気分がいい。宴にしよう!』
相変わらず目上の人に対しても不遜な態度。
そして当然のように主人公の振る舞いに対して「面白い奴だ」的な反応で上機嫌になる王様。
「違和感はありますが、みんな大らかな性格でいいですね。フランクで好感が持てますよ」
「作者が厳格な王族や貴族の振る舞い方を知らないからな。自然とフランクな性格になる。たぶん、この世界の王族や貴族はみんなフランクだ」
主人公は王様から褒美を貰って城をあとにします。
ちなみに、お姫様もついてきました。
なんでも『もっと広い世界を知りたい』らしいです。
若さゆえの好奇心ですね。
王様はフランクな人なので、自分の娘が見ず知らずの冒険者と一緒に旅することをさらりと許可してくれました。
◆ ◆ ◆
「まずいな」
「まずいですね……。って、すみません。なにがまずいんでしょうか」
二階堂さんが眉間にシワを寄せています。
かつてないほどの表情です。
仲間も増えて旅も楽しくなってきました。
三人とも楽しそうに歩いていますし、なにも問題ない気がします。
「三浦隊員。今、何話だ?」
「え? 今は六話ですけど……あっ! 更新が止まってるのが六話でしたね!」
「その通りだ。作者はこの先の展開を思いついていないんだ」
忘れていました。
もともと、この作品は六話で止まっていて、それをなんとかしようという話でした。
「ここからは我々で脚本を書いていく。正念場だぞ」
「は、はい! 頑張ります!」
いよいよ、我々の本格的な業務がスタートします。
かならずこの物語をエタらせることなく、最終回まで連れて行きますよ!
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