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主人公はお嬢様と洞窟から帰ってきたあと、そのまま冒険に出かけました。
どうやら、お嬢様には隠された力が眠っていたので、戦闘要員としても活躍できるようです。
なんと才気あふれるお嬢様なのでしょう。
尊敬の念を禁じ得ないです。
今は、二人でキャンプをしています。
宿に泊ればいいなんて、野暮なことは言ってはいけません。
キャンプのワクワク感は誰しもが憧れるのです。
『ねえ、なにやってるの?』
『ああ、マヨネーズを作ってるんだよ』
『マヨネーズ?』
『ははっ。知らないか。びっくりするほど美味しいから、ちょっと待っててな』
出ました。
現代知識チートの定番、マヨネーズ作り。
異世界にきた主人公が必ずやるお決まりの展開です。
異世界にはマヨネーズがありませんから、主人公のひらめきで作られたとみんなが勘違いしてくれます。
そして、主人公の株は爆上がりするというわけです。
「見ろ。マヨネーズを作り始めたぞ」
「ええ、ですが、やけに作り方の説明が長くありませんか」
「たぶん、作者がネットで調べたんだろう。それをしっかり全部主人公に説明させてるんだ」
「だからって分量まで説明しなくていいのに……」
◆ ◆ ◆
主人公とお嬢様は最初こそいがみ合ってましたが、魔物を倒したあたりからちょっと仲良くなっています。
今も、お嬢様にいいところを見せようと主人公が一生懸命マヨネーズを作っているところです。
おや、どうやら出来上がったみたいですね。
『できたー! マヨネーズだ!』
『これがマヨネーズなのね? どれどれ……あら、美味しいじゃない! やるわね、あなた!』
うんうん。
こうやって絆が深まっていくんですよね。
定番の展開ですが、面白いからこその定番なのです。
これはこれで、やはりいいものです。
『それじゃあ、このマヨネーズをカレーの中に全部入れまーす!』
ええ!?
せっかく作ったマヨネーズを全部カレーの中に入れちゃいました!
ていうか、どこからカレー出てきたんですか!?
「二階堂さん、あれは!?」
「私も初めて見た……。たまげたなぁ……」
二階堂さんでもわからない展開が!?
「おそらくだが、作者の家ではああやってマヨネーズを使っているのだろう。つまり、カレーにマヨネーズを入れる家庭だったのだ」
「ま、まさかこんな形で作者様の家庭のカレー事情を知ることとなるとは……」
◆ ◆ ◆
主人公とお嬢様は旅を続けます。
ところで、この旅の目的ってなんなんでしょう?
……深く考えてはいけませんね。
おや、近くで馬車が停まっています。
どうやら、盗賊に襲われているようですね。
なるほど、次のイベントというわけですか。
『あの馬車を助けるぞ!』
『命令しないでよね!』
主人公とお嬢様は馬車に向かって駆け出します。
我々も木陰からこっそりとあとをつけて様子を見ます。
主人公たちは盗賊を瞬殺。
主人公とお嬢様は人生で初めての人殺しでしたが、特に躊躇とかはありませんでした。
手をかざして『ファイアーボール!』『やったぁ! ざまみろ!』とか言ってます。
最近の子どもは恐ろしいですね。
戦闘が終わると、馬車から人が降りてきます。
とても綺麗なドレスを着た女の子です。
『危ないところをどうもありがとうございました』
『へへっ! どうってことないよ!』
主人公が鼻をゴシゴシしながら得意げに胸を張ると、近くに控えていた護衛の一人がそれを咎めます。
『貴様。姫様に気安く話しかけるな!』
話しかけたのはお姫様のほうからだったと思いますが……。
まあ、態度に問題があるのは同意です。
『よいのです。セバスチャン』
『そうだよ。お前らが不甲斐ないから助けてあげたんだよ』
『その通り。あなたたちは反省しなさい』
護衛の人は『ちっ!』と舌打ちしながら引き下がります。
こらこら。姫様の前でその態度はいかんでしょう。
『城に来てください。たっぷりとお礼をします』
こうして、主人公たちはお城へと向かうのでした。
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