各地の勇者の母乳を飲みに行く事になりそうな話。(8600字)
神様にスキルを貰って転生する。
これは大変素晴らしい。神様にもらえるスキルは程よくチートで素晴らしいスキル。きっと薔薇色の転生生活が待っている。
そして前世の知識を持って赤ちゃん時代から転生する。これも大変素晴らしい。なんせ赤ちゃんの内から努力が出来る。魔法の勉強や様々な知識を早い段階で取り込むチャンスだ。若い内は覚えが早いって言うしね。
で、今の俺はそんな状態。
おお、乳児(0歳児)に転生か。
「ほやあ。ほやあ。ほやあ。」
乳児の俺が本能に身を任せて泣いているみたい。どうやら俺が赤ちゃんの主導権を握る「俺モード」と赤ちゃんのを本能のまま動かしておく「本能モード」とあるようだ。その本能モードだと感覚を手放す感じ。よし「俺モード」になってみよう。
……うわっ、何にも見えん。えっ、世界がぼやけて見える。視力的に言うと0.01とかそれぐらい?とにかくなんも見えない。あと手や足も自由に動かせない。物もうまく掴めない感じだ。
くそっ、ある程度成長しないと何も見えないし何も出来ないのか……赤ちゃんって。
なんて。
俺には神様から貰った【スキル】がある。それは【超能力】。物を動かす「サイコキネシス」を始め透視や小さな物の物体転移なんかが出来る。まだ赤ちゃんだからそれぞれ効果は小さいけど。
で、【透視】を使って周囲を見渡すぐらいの事はとりあえず出来る。俺の今いる場所はどこかな。貴族の家か? はたまた王族?
……おお、ここは【孤児院】か。教会併設の孤児院。俺は捨て子なのか。これはどうなんだ!? 当たりかハズレか。あっでもこの孤児院は結構キレイだぞ? シスターさんの服もキレイに洗濯されているし孤児達の顔色も良い!
中々に良さそうな環境。
「あらあら【ケイン】君、おっぱいなの?」
齢25ほどの若いシスターさんだ。この人は【母乳】が出るらしい。それを俺に飲ませてくれるだと! 母乳……どんな味がするか気になるけど……最初につまづくとアレだからまずは「本能モード」で身を任せよう。
「チュウチュウチュウ。」
あー、本能の奴、スゲー美味そうに母乳を飲んでる気がする。ちょっと俺と代われ! 「俺」モードにチェンジ!
本能モードの真似をして母乳を飲んでみる。んほ〜、これはたまらなくうめえ! 鉄っぽいっていうか血の味にも思えなくないけどとにかくうめぇ!
「はい。右のおっぱいはこれでおしまい。次は左のおっぱいね。」
飲んでる途中で急におっぱいが離れたと思ったらおっぱいチェンジだった。ちょっとびっくりしたぜ。あっ、じゃあ左のおっぱいもこれくらいの時間飲んだら離されるのか?
まずい、今の内に飲め! 出来るだけ飲め!
「はい。おしまい。たっぷり飲んだかしら?」
はい! たっぷり頂きました! 思う存分いただきまし……あっ、……なんだか急激に眠くなった……。
「あらあら、お腹いっぱいで寝ちゃうのー。」
そうれす。眠たいれす。……あっ、もっとこの世界の事を、知らなくちゃいけないのに。とっても眠い。……まあでもまだまだ時間はある。なんせ俺は赤ちゃんなんだからー。……ぷぅ。
ーーーー
2週間が過ぎてこの世界が大体わかってきた。
この世界は【魔力量】が全ての世界。
魔法の使用や技の使用、俺の「超能力」のような特殊スキルの使用それぞれ【魔力】を消費する。魔力量の持分が大きければ大きいほど魔法の威力やスキルの効果、持続時間が増えるし、何発も繰り出せる。
ただ魔力量には個人差がある。魔力は体内の【魔蔵】という内臓に蓄積されるけど「魔蔵」は10歳までに成長の限界を迎えるとされる。
その魔力量を増やす研究は各所でされているけどわかっている事は少ない。魔力量は【血統】で決まるんじゃないかって言われてたり世界の各【聖地】を訪れる事で魔蔵が成長して魔力量が増えるんじゃないかとか言われている。
ここまでが前提っていうか、
世界で判明している一般常識。
これは本質だけど魔力量が個人で違うのは【精霊に愛されているかどうか】だ。精霊は普通の人には見えない。俺は【透視】の力で見る事が出来るけどね。
精霊はどこにでもいる。属性ごとに多少「場所」の偏りがあるかなって思える程度で湖には水の精霊が鍛冶場には火の精霊が少し多いって感じ。
その精霊にも【気まぐれ】なのや【偏愛的】なのがいる。【気まぐれ】で一目見ただけで気にいるような精霊だったり家族代々をふかーく愛してくれている【偏愛的】な精霊がいたりだ。
これだけで魔力量に差が出るし得意な属性も決まる。ほとんどの人は0〜1歳のうちに何かしらの【精霊】がつく。俺の一歳上のお姉さん赤ちゃんは【土の精霊】がついている。
また精霊は縄張り意識があるからか同属性の上位の精霊が下位の精霊を退かす事はあっても1人が多くの精霊に愛される事は稀だ。
というわけですべて見えない【精霊】によって各個人の魔力量が決まる仕組み。
じゃあ俺も【魔力量】を増やすために精霊に愛される必要があるかって? それはそうなんだけど俺のスキルは【特質属性】。このスキルのせいでまず他の属性の精霊からは見向きもされない。そして【特質属性】の精霊はどうやら稀。今、住んでるこの町には居なかった。
で、ここからがチートなんだけど俺は本来、精霊に愛される事で貰える【魔力の素】を【自分で調達】できる。だってその辺に落ちてるのが【透視】で見えるし。
その微量な特質属性の魔力の素をせっせと自分の体内に【テレポート】する。これで俺の魔力量は増加した。今の俺は赤ちゃん界ならトップクラスに魔力が高いはずだ。
ただ魔蔵も肉体的に成長する【内臓器官】だ。体の成長に合わせて少しずつ容量が増える。赤ちゃんの内はまだまだ小さくて10歳でほぼ成長が止まるようだ。
赤ちゃんの間の魔力量は限界があるので俺は魔蔵の片隅で魔力の素を【結晶化】させて貯めておく事にした。
俺の魔蔵が成長したら結晶が溶けて俺の魔力となる仕組みだ。これで俺は10歳になる頃にはチート並の魔力を持つはず。
成長が待ち遠しいぜ。
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教会併設の孤児院に生まれて良かった事。
それはシスターさん以外からも【母乳】をいただける事。敬虔な信者様達からの母乳だ。ここの教会の教えは「貧しい者やか弱い者には救いの手を差し伸べましょう」としているから特にか弱い存在代表の赤子の俺は色んな人から助けて貰える。
「ケイン君。私のおっぱい飲むかしら?」
はい。飲みますとも。この【料理屋の奥さん】は良い物を食べてるせいか母乳の栄養も高くて安定感のある味わい。
「私のおっぱい最近よく張るのよ。でもケイン君が柔らかくしてくるから助かるわー。」
この【道具屋の奥さん】は甘いものを良く食べるせいかやや甘めの母乳。そしておっぱいが張りやすい性質らしくパンパンだ。母乳が溜まりすぎているせいなんだけどそれを俺は柔らかくする。柔らかくなるぐらいまで母乳を飲み切るんだ。
「あら、私もおっぱいも張りやすいのよ。ケイン君に一度、飲んでもらおうかしら。」
このムキムキの【鍛冶屋の奥さん】の母乳は中々に血の味というかタンパク質、鉄分豊富な味だ。飲んでいると元気が湧いてくると言うか。
とにかく俺は奥様方の信頼を集めてたくさんの人から母乳を飲めるようにしている。……なぜかって? 母乳が無い時は淡白な味わいの「ゴートミルク」を飲まされる。これが微妙に不味くてそれよりかはおっぱいにむしゃぶりついて母乳を飲む方がいい。赤子の体だと他に楽しみが無いし。
「ゲフゥ。」
ゲップを出した。
「あら、ケイン君、ゲップが出やすい子ねえ。楽で良いわ。」
いや俺はゲップが出やすい性質とかじゃ無い。「サイコキネシス」自分の背中をトントンしてセルフでゲップを出しているんだ。
ちょっと困り事の一つにこうして自分で解決してしまうと割とほったからしにされるという事がある。
以前、トントンが甘かった時に俺が自分でトントンしてゲップを出したら「ゲップが出やすい子」扱いされてそれ以来、奥様方のトントンがいい加減になっている。
ゲップを出すためにきちんと背中トントンしてくれよ!
オムツもそうだ。
オシッコとかウンチとかもう垂れ流すしか無いんだけどこれがオムツに溜まると中々に気持ち悪い。だけど布オムツは汚れたらすぐに交換とかそこまで頻繁に替えてくれない。1日に数回替えてくれたら良い方。
だから俺は汚物はテレポートで外にポイッとしてキレイにしている。
「あら、ケイン君はあまりウンチしないねえ。」
ほら、こういう勘違いをされる。前にオムツを確認される直前にウンチをオムツに戻してやろうか? とも思ったけどそれはそれで面倒だしやめた。テレポートは割と魔力を使うんだ。
だからと言って「本能モード」に気持ち悪いのを肩代わりさせても泣き叫ぶばかりなのでそれで嫌われるのも嫌だし正直に「いやいやシスターさん、僕、ウンチはテレポートさせてるんですよ?」と【テレパシー】で伝えるのもちょっと。俺のスキル【超能力】は特殊っぽいしなるべく他人にばれないようにしたい。
諸々は成長するまでの我慢だ。
「ケイン君、やっほー。」
あっ、メイお姉ちゃんだ!
「ケイン君、私が来るとすごい笑顔になるー。」
「ケイン君はメイが大好きなのね。」
メイお姉ちゃん。この孤児院出身で冒険者をしている成人したばかりのお姉ちゃん。サラサラの金髪が赤ちゃんの俺でもわかるくらいフワフワした良い匂いを運んでくる。
「わー、ほっぺたぷにぷに。」
「あうー、あーうー!」
俺も全力で対応する。あー、メイお姉ちゃん良いなあ。出来るならばメイお姉ちゃんの母乳を飲みたい。かなり胸が大きいから出る母乳もさぞ美味しいだろう。
……そういや、女の人ってどうやったら母乳がでるようになるんだ? ……年齢なのかな? 何か出るようになる仕掛けがあるのか? うーん、わからん。メイお姉ちゃんから早く母乳が出るようになれば良いのに。
なんて平穏な日常はとある神父の発言で脆くも崩れ去った。
「ケイン君、なんだか成長が遅いようですね。ちょっと見てみましょう。」
教会の神父さんだ。かなり上位の精霊に愛されていて魔力量も高い人。
「……!この子は大変な呪いを受けています。【魔王の呪い】。そのせいでずっと【乳児……0歳のまま成長しない体】のようです。」
「あ、あうあうあーー(な、ななんですとーー)!」
えっ? えっ? 魔王の呪い? なんで魔王が俺なんかに呪い? なんで? 俺なんかしました? ねえ、魔王さん? しかもなんで殺すとかじゃなくて成長できない呪い? なんで?
「この呪いは魔王を倒すか……魔王の呪いを跳ね返す「抗体」を打つかになるね。」
抗体?
「いわゆる「勇者の血」が必要だ。いや、体液でもいけるのかな? とにかく7種類の呪いが複合的にかかっているから別々の「勇者の血」7人分が必要という事だ。」
俺が成長するには「勇者の血」が必要。だけど世界にいる勇者は今、現在「誰が勇者かわからない」らしい。わかっている勇者もいるけど魔王の魔の手から逃れるために隠匿されているとの話も。マジか。
「この子はどうしようか?」
「どうしましょうねえ。」
神父とシスターが思い詰めた顔をしているがもしかして俺を捨てる相談をしているのか? いやいや、確かに俺は【超能力】のスキルがあるけどまだ魔蔵が小さいから大きな超能力も使えないし赤子の体ではほとんど何も出来ない。
「ほやあ!! ほやあ!! ほやあ!!」
今までコツコツと魔蔵に貯めてきた魔力もほとんどが無駄無駄無駄。だって俺、成長できないんだもん。魔蔵が成長しないなら魔法も「超能力」も満足に使えない。
「あらあら、ケイン君がこんなに泣くなんて。」
「私達の気持ちが伝わってしまったかねえ。」
「ほやあーー! ああーーー!」
「ケイン君がこんなに泣くなんて珍しい。」
ぐすっ。……あっ、メイお姉ちゃん。
「神父さん、私ケイン君と散歩してくるね。」
「ん。……ああ。気をつけて。メイ。」
「はーい。行ってきます。」
孤児院から町に出るのは久しぶりだ。で、メイはどんどん歩いて門を抜けて町の外まで出た。
「ほらー、風が気持ち良いでしょう。」
「あうー、」
町の外の草原だ。風がとっても気持ち良い。
「あっちの山がジーフ山っていってダンジョンがあるのよ。あっちのダーヒー山脈の麓には鉱山都市があるの。武器を買うならあそこの町よ。」
「あーうー。」
赤ちゃんにそんな事を言われてもわからないと思うんだけどメイお姉ちゃんはしっかり説明してくれる。メイお姉ちゃんのこういうところが好きなんだ。
……俺はいったい何に絶望していたんだろう? 景色はこんなにキレイで世界は美しいしメイお姉ちゃんは優しい。……勇者の血が必要ならなんとかして集めれば良い。そうだ。勇者の血を集める旅に出よう。そうしよう。でもできたらメイ姉ちゃんとやりたいな。
(メイお姉ちゃん。ねえ。お姉ちゃん。)
「えっ、誰? 誰なの?」
(僕だよ。メイお姉ちゃん。ケインだよ。)
「えっ、ケイン君なの?」
(そうだよ。今、頭の中に話しかけてるんだ。)
「えーっ、そうなの? そうなのケイン君。」
「あーうーー、」
満面の笑みをメイお姉ちゃんに向けた。
(メイお姉ちゃん。実は……)
ーー
「そうだったの。魔王の呪いで。」
(うん。でもありがとう。神父さんに宣告された時はすっごく落ち込んでたけどメイお姉ちゃんのおかげで元気が出たよ。メイお姉ちゃん大好き。)
「あら、ありがとう。うふふ。」
(……メイお姉ちゃんにお願いがあるんだ。)
「うん、なあに?」
(僕と一緒に勇者を探す旅に出て欲しいんだ。)
「えっ!? でもケイン君、赤ちゃんだし。町の外はモンスターも出るのよ? この辺はいないけど遠くの方は強いモンスターもたくさんよ。」
(その辺は心配ないよ。ほら。)
「わわっ、ケイン君が空中に浮かんでる!?」
(うん。これが僕のスキル【超能力】さ。これは【サイコキネシス】って言って、他にもその辺の石を……えいっ!)
「わっ、すごい! 石が飛んでったわ!」
(この力で弱いモンスターなら倒せると思うんだ。だからお願い。その代わりメイお姉ちゃんの魔力を……)
ズズーン!
言いかけた所で何かが飛んできた。
「魔族!? デーモンも! 何でこんな所に!」
「ふん。なぜだと。わからんか? 小娘。」
魔族だって? 魔族は魔王の手下とされる存在。人里離れた所に普段は暮らしているっていう話だ。
「……まさかケイン君を狙って!」
「は? そんな赤ん坊を狙ってどうする。小娘。お前を狙って来たのだ。なぜかわからんか?」
なんだ? 魔族はなんでメイお姉ちゃんを狙っているんだ? メイお姉ちゃんは普通の中クラスの【水の精霊】に愛されてる冒険者だが。
「ギゼル様、こいつ、本当に知らないみたいですぜ。」
「ああ、デーモン共この小娘を殺せ。」
「「「キキー!!」」」
デーモンがメイお姉ちゃんに襲いかかった。
(メイお姉ちゃん!)
「ケイン君下がってて! ……水よ。我を守りし盾となれ! アクアシールド!」
自動展開式の盾を出してデーモン5匹を剣で迎え撃つ。お姉ちゃんは盾を上手く使って人数の不利を無くして戦っている。強い。そんな中、僕も石をサイコキネシスで投げつけて援護した。
(えいっ! えーいっ! くらえ!)
「ぐえっ、なんだ? どこから石が。」
「む。まさかその赤ん坊がやってるのか? どれ。」
「……ケイン君危ない!」
(あっ……。メイお姉ちゃん!)
魔族からの【風魔法】に気が付けなかった。メイお姉ちゃんは僕を庇ってその攻撃の直撃を受けて……体から血が飛んだ。浅くない傷だ。
「ふん。だから人間は間抜けなのだ。」
(メイお姉ちゃん! 大丈夫!)
「ん……ケイン君、ごめん。こんな事に巻き込んで。これは……もう……ダメかな……。」
お姉ちゃんが僕を抱えて泣いている。そんな。こんな所でやられるなんて。
……
……
お姉ちゃんの涙の味、しょっぱい。
……
あっ? これは……? 自分の中で何かの楔が外れる気がした。……体に魔力が溢れる。これは……この力は……! いける。魔力が足りなくて使えなかった超能力「○○」が使えそうだ。
(○○!)
閃光とともに俺と体が変化する。さっきまでの赤ん坊の体とは違う体。これは【6歳児程度の肉体】か。
「む。何が起こった? なんだこのガキは?」
「……メイお姉ちゃんを泣かせた事、傷つけた事。万死に値する!」
パイロキネシス!
2本の指を立てて魔族に向けて超能力【パイロキネシス】を放った。魔族とデーモンを炎の渦が襲う。炎を出す超能力の1つパイロキネシスは赤ん坊の頃だとライターくらいの火しか出せなかったがこの成長した体では魔蔵も成長し威力の高い超能力が出せる。
「「「ギャアアアアア!」」」
「「「くっ、上位の火魔法か!」」」
デーモン5匹は倒した。が魔族は炎を【水魔法】を使って上手く振り払いまだ生きている。
「ケイン君なの? 水よ! 我を……我を癒せ! アクアヒール!」
その隙にお姉ちゃんは傷を回復している。
「クソが、このガキ……。」
「ふん。お姉ちゃんをいじめる奴は死ね。 ……ん? あれ?」
さっきは消えたと思った体の中の「楔」が再び現れそうな気配を感じた。これは……。
確定した事は「メイお姉ちゃんは勇者である事」。その体液を飲んだから楔が緩んだ。だけど緩んだだけで消えてはいない。
やはり「勇者の血」を飲まないと楔が完全に消えないのか? メイお姉ちゃんの血を飲む? だけどそれははばかられる。……そうだ!
「メイお姉ちゃん、【おっぱい】出して。」
「えっ、えっ、なんて? おっぱい!?」
「そう! おっぱい! 早く!」
ぺろん。
「えっ、こ、こう? 出したよ、ケイン君!」
「オッケー! せい!」
お姉ちゃんのおっぱいに向けて2本の指を立てて超能力を発動。お姉ちゃんのおっぱいから【母乳】が溢れた。結局母乳が出る原因はわからなかったけど母乳が出る仕組みは【透視】を使って研究したんだ。
ドピュピュピュ、
ピュピュピュ〜!
「え? え? ふえ〜。母乳が! なんで? 私、妊娠も出産もしてないのに!」
俺はメイお姉ちゃんの母乳を飲んだ。
「え? ちょ! 歯を立てないで。」
「あ、ほへん、ほへえひゃん。」
「なんだ。何をしている? 目の前で乳繰り合うなど。」
お姉ちゃんの母乳を飲むと「楔」が完全に消えるのを感じた。やっぱり。母乳はほとんどが血で作られている。ましてや与える栄養として作られる母乳だからやはり「抗体」が含まれていた。
まだ7本の内1本の楔が消えたに過ぎないがその分俺は少し成長してさらに上位の「超能力○○」が使える気がした。
(○○!)
閃光とともに俺の体がさらに変化する。今度は【10歳児程度の肉体】。一時的なものだけどこれで魔蔵は容量最大値。最大の魔力が使える。
「おい。お前、お姉ちゃんを殺そうとしたんだよな?」
「ふん。語る必要などあるまい。赤ん坊に化けていた勇者の護衛。……闇よ! 忌々し光を消し潰せ! ダークボール!」
無数の「闇の球」が俺達を襲う。俺はそれに対して2本指を立てて超能力を行使する。サイコキネシスで全ての「闇の球」を打ち返した。
「何!?」
闇の魔法は触れるだけで人間の体のみならず万物を侵食する。だから触れずに対処すればよい。それだけだ。
パイロキネシス!
さっきよりさらに高温の炎が魔族の周りを踊る。それを魔族は「自身を霧に変化させて回避」そして上空へ飛んで逃げた。
「勇者め。すでにこのような魔法を使う仲間を……ここは引くか。魔王様に報告せねば。」
「あっ、魔族が逃げちゃう!」
「大丈夫だよ。お姉ちゃん。奴の弱点は既に捕捉したからどこにいても倒せる。」
心臓とは別の魔族たるゆえんのもの【魔結晶】という核。魔族はいくら頭や心臓を潰したとしてもこの【魔結晶】が体内のどこかにある限りいくらでも再生するし何かに化けて逃げられる。【透視】を使って奴の【魔結晶】の場所を捕捉した。
奴の【魔結晶】を狙い撃つ。炎を出す超能力パイロキネシスを俺はさらに高温高圧の炎をイメージする。超高温で高圧縮された炎は形態を変えて光線となった。
パイロキネシス・レーザーだ!
「くっ、……なん、だと……。」
超速のレーザーが魔族の胸の【魔結晶】を貫き魔族は絶命した……。
ーー
「わわっ、ケイン君が赤ちゃんに戻った!」
(そりゃ、一時的な変身だったからね。……あっ、魔力を使い過ぎて……眠いや。でもお姉ちゃんを守れて良かった。)
「うん。ありがと。守ってくれてありがと。ケイン君。」
(また、おっぱい飲ませてね。お姉ちゃん。)
そう言うとお姉ちゃんの顔は真っ赤になった。
「もう! 起きたらしっかり説明してもらうからね! 私の母乳の件!」
怒っているお姉ちゃんの声を聞きながら睡魔に身を任せた。