精霊の舎-26
マギは、ソファの前で佇んだまま、
しばらく床を見つめていた。
「・・・やっぱり、そうなのね。
だったら、どうして、あの人生で・・・
いえ、せめてここに来てからすぐにでも
教えてくれなかったの?
あんなに強く心に焼き付いた相手で
ありながら、人生上の接点が全くないなんて
不自然すぎるのよ。
ああ、腹が立ってきた。
運命も、人をからかうのは、いい加減に
して欲しいわ。
彼は今、どこにいるの?
カイは・・・」
その名を聞いたとたん、ホンナは
うっと唸って、目を覆った。
「・・・ホンナ?」
「ミューズが宿ると、君の光は強すぎて・・・」
「ミューズ?」
「カイは、君のインスピレーションの源だった。
なのに実生活上、ほとんど接点を持たずに
終わった。それが君の結婚しなかった理由?」
「もちろん、それだけじゃないわ。
でも、カイを知って、物を書きたいという
衝動にかられた。
カイが私の運命を変えたと言っても過言じゃない。
でも、それと結婚とは・・・」
「どうして、カイとは、この世界で
会わないの?」
ホンナの他人行儀な言い方に、
マギは腹を立てた。
「あなたは知っているんでしょう、ホンナ?
私は何も知らない、ただ、カイとのことは
運命に委ねようと・・・」
「この世界にいて、まだ、運命というものを
信じているんだね」
ひどく意地悪な口調になったホンナに、
マギは急に不安になり、首をかしげる。
「なんだか、変よ。
ねぇ、まさか、近くにカイがいるの?
それで、そんな小さな男の子みたいに
拗ねてるの?」
ホンナは黙ってソファから起き上がると、
マギを抱きしめた。
マギは驚いてしまう。
「私の態度に驚いているの、
それとも、カイが本当に近くにいるかも
しれないと思って驚いてるの?」
「両方よ!」
マギは、ホンナを見つめて叫んだ。
続




