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須磨

作者: 常満

4月1日俺の誕生日。俺はトラックに轢かれて死んだ。いつも通りの1日で死んでから誕生日だと気づいたくらいだ。周りには天国への階段(と思われしもの)があり、俺以外にも5、6才くらいの少女や、所謂不良と呼ばれるような男子生徒、初老を迎えたばかりのようなおじいさんなど様々な人が数十人見えたその誰もが終わりの見えない階段を上っていた。俺もその人たちを追ったらいいのだろうと思い、階段に足をかけようとした。が、俺の予測とは裏腹にその足は虚しく空を切った。何が起こってるのか脳の処理が追い付かなかった。俺は天国に行けるわけではないのか、そもそも天国地獄が存在するのか、だとすればここはなんなんだと色々考えが思い巡ったがこの先俺がどうすればいいか、ソレがわからず途方にくれていた。

何もできず呆然としていると、ふと後ろに人の気配を感じ振り替えった。すとソレは『人』と呼んでいいものだろうか、目があり鼻があり口があり髪があり手足があった。が、明らかに人とは違う部分があった。人になら必ずあるはずのアレがないのだ。こいつは何なんだと直視していると

「やだな~、そんなに見つめないでよ。僕だってそんなに見つめられると照れちゃうよ~。」

男より高く、女より低い中性的な声でソレは言った。間の抜けた顔をしているのが自分でもわかる。本当に何なんだコイツ。よくよく見ると本当に人に似ている。少し大きめの緋色の瞳。筋の通った少し高い鼻、色素は薄いが頬を染めている桃色がきれいに映えている肌。手足も女性のように華奢で、服で隠れている部分もおそらくそれほど肉が付いていないのだと想像できる。その短い黒髪や赤いパーカーと短パンからボーイッシュさと幼さがみられた。が、こいつからはただものではない気配がする。ただ、俺にはコイツの存在は計り知れない。


「君は選ばれた」


そいつがそう言ったところで俺の視界は黒く染まった。いったい何だったのか、当然その答えは見つかることはなく、俺の意識まで闇に消えてった。




 いつも通りアラームがけたたましく鳴った重たい瞼を仕方なく開けると朝の日差しが眩しかった。当然今日は平日で仕事があるため、また仕方なく用意をした。いつも通りの日常が始まる。だが、何かを忘れている気がした。少し心に引っかかったが気にせず家を出た。


 そして俺は何度目かの死を味わった。

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