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吸血鬼は青年から血を吸い取りたい

作者: 幻影刃

学校の文芸部の作品として書いたものです。割と時間もなかったので適当に書いたものなので、そこまで期待はしないでください。

 日が沈み月明かりに照らされる深夜帯。子供は眠り大人達が出歩く、言わば大人の時間だ。そんな時間に活動するのは人間という生き物以外にも沢山いる。主に夜行性の生き物が挙げられる。

 しかし、それだけでは無い。人間達が言う伝説上の生き物もその時間帯に活動を開始する。その生き物とは──吸血鬼である。


「ふふふ、今夜も馬鹿な人間達が沢山いるわね!」


 私は高層ビルの最上階から人間達が歩く道を見下ろしながら言う。

 私の名前はエリザべーテ。見た目はゴスロリドレスを着た少女に見えるが、その正体は五百年もの月日を生きた立派な吸血鬼だ。そして、人間の血を主食としてきた伝説上の生き物なのだ。


「さて、今夜も人間共の血を貰いに行くわよ。ついて来なさいアカネ!」


 眷属であるアカネにそう命令して、私は背中に生える吸血鬼の翼を広げる。さあやってやろうじゃないか。


「あーはい。え、違います、Mサイズを二枚です。Lサイズ二枚じゃないです。チーズ特盛でお願いしま」

「ちょっと待って!?」

 さっきから後ろで何をしてるのかと思ったら何ピザの注文頼んでるのこの子!? 今夜の食事は人間の血って言ったじゃん!

「あ、エリ様もチーズ特盛ですか?」

「あ、私は普通ので、って違う! 今夜は人間の血だって言ったじゃない!」

「私大食いなのでそれだけじゃ足りないんです」

「とにかく、夜の街に出るわよ! ピザが家に届く前にさっさと血を吸って帰るの!」

「結構前向きに考えてるじゃないですか」

「う、うるさい!」


 アカネの手を引いてビルの最上階から飛び降りる。そして翼を使って夜空を滑空する。

 目指すは多くの人間達が歩く繁華街。その辺で適当に人間をとっ捕まえて吸っちゃおうという予定だ。予定通りに進んだのならば十分たりとも掛からないだろう。

 よし、早く血を吸って帰ってピザを食べて眠ろう。私はこう見えてもインドアなのだ。吸血鬼じゃなければ家でゲームでもしているところだが、血を吸わなければ生きれない吸血鬼なためそうはいかない。全く不便なものだ。


「さあやってきたよ繁華街!」

「……の割には店とか色々閉まってて人気がないんですが」

「まさか、新手の地球外生命体による侵攻か!?」

「どうやら今日は休日のようです。それも国が定めた全企業の休業日とのことです」


 アカネが手に持つスマホを見ながらそう言う。全企業の休業日なんて、それはつまり家でゆっくりしてねという国からのメッセージなのだろうか。あれでも、さっきいたビルの電気ついてたよね。


「そこは触れない方がいいというやつです」

「さりげなく心読まないで?」


 まあとにかく、繁華街がダメとなると殆どの場所がダメということになる。最終手段としては独身の人間の家に入り込んで血を吸うという手段だ。私は人間ていうロリなので少し芝居をすれば軽々家に上げてくれるだろう。


「そうと決まれば次の作戦ね」

「家に攻め込むんですね!」

「そうだけど、さすがに直で家に向かうのは警戒されるから散歩中の人を狙おう。例えばー、あの人とか?」


 私が見る方向にいるのは大体二十代か十代の青年。薬指を見ても指輪はしてないので少なくとも結婚はしていない。あとは芝居をしての反応で独身かどうかはわかる。


「五百年の勘は当たるというしね」

「千年の間違いじゃないですか?」

「どっちでもいいの!」


 私が合図をするまではあの青年に気づかれないようについて来いと命令した後に、例の青年の元に歩いて行く。そして、翼を隠して青年のこの先通るであろう道に座って待つ。


「ん、子供?」


 お、聞こえた聞こえた。そろそろ来る頃だと思っていたよ青年よ。さあ、家に上がらせろ!


「んー、君お母さんかお父さんは?」

「家出したの。喧嘩しちゃって……」

「そうか。よし」


 この反応は正しく私の求めていたもの。つまり、俺の家に泊めるかと言うはず──


「とりあえず交番行くか。こういうのは警察の仕事な気がするし」

「待て待て待て待て待て!」

「はい?」


 どうして!? ここは普通とりあえず俺の家に泊めるかってラブコメの主人公みたいなセリフ吐くんでしょ!? なのに交番って、さてはこの青年オタクじゃないな!


「あ、いや、えーっと、あんまり警察の人にお世話になりたくないから……。お兄ちゃんの家に泊めてくれない?」

「え!?」

「だめ~?」

「……仕方ない。ただし、明日起きたら家に送るからな。もしくは警察に」

「わーい、ありがとう!」


 なんと見事な芝居だろう。こうも簡単に騙せてしまうとは。

 いやまあ、もしもここで無視してどこかに行くようならば飛んだ外道になるわけだが。雰囲気からしてこの青年はそんなことはしないと初めからわかっていた。だからこそこの青年を選んだのだ。

 ……少し物陰の方でアカネがニヤニヤとしているが後でこき使ってやろう。ピザの等分とか等分されたピザを私が多く取るとかしてやろう。


 それからしばらくしてその青年の家であろうワンルームマンションに到着し、中へとおじゃまする。


「お世話になりまーす」

「飯は食ったのか?」

「まだ食べてないからお腹空いたー」

「なら、適当に作るから待ってろ」

「あ、その必要は無いよ」


 私はキッチンへ向かおうとする青年にゆっくりと近づいて行く。

「それはどういう……」


 私の言葉に疑問を抱いた青年がこちらを見ると同時に私は隠していた翼を広げる。それを見た青年は驚きを隠せずにいた。言葉も出ないのか、ずっと黙ってこちらを見ていた。


「私は吸血鬼。今宵の食事は貴方の血なのよ」

「吸血鬼……?」


 背後の窓から差し込む月光がいい感じに私を照らしている。これ結構かっこついてるんじゃないだろうか。ザ、吸血鬼って感じが出ているのではないだろうか。このまま締めまでやってしまおう。


「痛くはしないわ。むしろ、気分がいいわよ」


 私は青年に近づき、そのまま腕を後ろに回し込む。そして安心させるように青年を落ち着かせて腰を下ろさせる。首筋が丁度いい高さに来たところで、私は口を開き──


「ちょ、ちょっと待った!」

「何よ、今いい所なのに」

「ここは対等に行こう」

「対等?」


 突然の青年の発言に疑問を抱く。取り引きを求めているのだとしても、血を吸わせることに対等なこととはなんなのだろうか。


「……一応聞いとくわ」

「とても簡単だ」


 青年は部屋に一つだけあるクローゼットを開け、その中から工具箱のようなものを取りだし、私の目の前に置いた。私に何らかのメカを修理しろとでも言うのだろうか。そう思っていたが、その工具箱を開けると、中に入っていたのは工具ではなく沢山のカードの束であった。


「これでひと勝負。それだけだ」

「暇なの?」

「いや、対戦する相手がいないだけだ」

「悲しいわねそれはそれで……」


 何か肉体労働を求められるのかと思ったら、まさかのカードゲームでの対戦申し込みとは意外だった。肉体労働ならば容赦なく血を吸って帰っていたが、カードゲームくらいならばしても問題ないだろう。

 幸いにも、今目の前にあるカードは見覚えがある。いつも家で暇な時にアカネと一緒にやっていたカードゲームだ。ルールは既に頭の中に入っている。


「ルールはスタンダード。デッキはこの中の三種類から」

「なら私は私自身の種族である『吸血鬼』シリーズのデッキを選ぶわ」

「なら俺は『魔法使い』シリーズで」


 家で私が使っていたのもこの『吸血鬼』のデッキ。パッと見たがカードの種類も殆どが私が使っていたものだ。勝てる気しかしない。


「この勝負に勝てたらすっからかんになるまで血を吸っていけばいい。だが、勝てるまでずっとこのカードゲームは続くぞ」

「はっ、私を甘く見ないで頂戴。このカードゲームなら我が家でもしてるし今も尚負け無し。負ける気がしない」


 部屋のど真ん中にある机にフィールドが描かれたプレイマットを敷き、そのうえにルール通りにデッキを置く。そしてお互いに五枚のカードを手札に加える。


「アカネ! 決闘開始の宣言をしろォ!」

「了解しました!」

「うわ何だ!?」


 突然ベランダの扉が開き、そこからアカネが入ってくる。パッと見完全不法侵入だがそういう所は気にするな。鍵を閉め忘れているこの青年が行けないのだ!


「それでは、決闘開始!」

「貴方に勝って血をたらふく貰うとするわ!」

「よーし、俺だってかっこいいとこ見せてやるぞー」

「どうして棒読みなのよ!?」

 そしてカードゲームによる決闘が開始された。


 それから数分後。カードゲームの勝負はお互いに一歩も譲らない……ように見えたが、割と直ぐに私が追い詰められていた。


「そ、そんな馬鹿な……攻撃力二万!?」

「こいつはモンスターではない、神だ!」


 このカードゲームにおいて攻撃力二万のモンスターなんて早々出せやしない。出せたとしても長い時間を使ってのことだからっとっくに決着が着いているはずなのだ。そんなモンスターを開始僅か三ターンで出してくるなんておかしい。あり得ない!


「終わりだ!」

「あああああ!」


 そして私は見事に惨敗した。しかしこれでは終わらない。今回は偶然相手の手札がよかったのだ。次やれば私が必ず勝つという絶対的な自信がある。


「もう一度だ! 次は負けない!」

「俺は何度でもしていい。だが、吸血鬼さんの体力は果たして持つかな?」

「私より年下なのにずいぶんな言いようじゃないか。次こそぼこぼこにしてやる!」


 という感じで第二回戦が開幕した。しかし、今回も結構あっさりと負けてしまった。

 何故だ、どうして勝てないんだ。もしかしていかさまされているのではないのだろうか。だが、そんなことをしているようには見えない。もしアカネが見ていたのならば即座に私に知らせるようにと命令してある。本当にいかさまはしていないようだ。

 そうだ、きっと今回も運が悪かったんだ。そうに違いない、きっとそうだ!

 そう思って何度も挑むが、あり得ないくらいに全敗している。確率的にもそろそろ勝ててもいいだろうに。


「どうじでえええ!?」


 何度も挑み、負け、挑み、負け……、


 ──気が付けば日が昇っていた。


「わ、わたしの、勝ちよ……」


 そして私はやっとの思いで青年に勝つことができた。本当に長い戦いだった。


「ふぁー、そうだな。んじゃ、好きなだけ吸え」

「そうしたい気持ちは山々なんだけど、疲れで体が動かない……」

「あーあ、折角勝ったのにお預けだな」


 そう言って青年は立ち上がり、キッチンの傍に置いていた鞄を手にして部屋の扉に向かって歩き出す。


「ちょっと、どこ行くの」

「大学だ。これでも学生でね。あ、血ならそこの冷蔵庫に入れてあるから勝手に飲めよ。こんなところで死なれちゃ困るからな」


 なんと気の利くことだろうか。最低限血を飲めば吸血鬼は生きられる。人間から直接吸った方が美味ではあるが、外を見ればもう朝方。こんな時間に吸血行為をすれば目立つだろうし、何より日の光に当たったら吸血鬼は死んでしまう。ここは大人しく青年の用意した冷蔵血液を飲むとしよう。


「そんじゃ、勝手に帰れよ吸血鬼さん」


 そう言って青年は部屋を出ていき学校へと向かった。

 それはさておき、早く血を飲もう。のどが渇いて燃え尽きそうだ。


「おーいアカネー、起きろー」


 爆睡しているアカネに声をかけた後に冷蔵庫の扉を開ける。そして用意されたであろう血を探すと、それらしきものが見つかった。コップの中に赤い液体が見える。ほんの少しだが。


「足りるかいなこんな量!」


 いや、これだけの量でも今夜までは余裕に耐えられる。だが、あまりにも少ない。私はダイエットをしているわけじゃないんだぞ?


「あいつめ帰ってきたら、今度こそ血を吸ってやるからな!」


 コップに入った血を半分飲みながら、今夜こそあの青年から血をいただいてやると、私は強く決心した。


「エレ様ー、そういえば頼んだピザは」

「……私の楽しみがああ!」


 同時に楽しみにしていたピザが食べられなかったという恨みも晴らしてやると考える私であった。食べ物の恨みは怖いのだ。

唐突なカードゲームという。

私、文芸部なので度々自分が書いた部活の作品をちょくちょく投稿してます。

あ、他にも長編とか書いてるのでよかったら読んでみてください。

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