お風呂っ!?
家に着いたのは、三時四分だった。たった四分なのに、三十分間走り続けていたような気分。
「ただいまー。」
家の中には誰もいない。つまり、朱里はまだ帰ってきていない!!いつも走って帰ってる朱里がいないなら間に合った!!セーフ!!
ふぅー。安心して体の力が抜けた僕は、カップうどんの蓋を開けた。
そういえばお湯入れて十分ぐらい放置でも美味しいんだっけ?試してみようっ!!その間は……シャワーでも浴びよう。汗と砂を流さなきゃ。
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「ただいまっ!!光希ちゃんっ!!」
シャワーを浴び終えたときに、ちょうど朱里が帰ってきた。
「おかえりー。」
「むむっ!?汗と砂のにおいっ!!」
えーっ。さっき流したんだけどな……
「これはお風呂に入れてあげなきゃいけないなー。せっかくシャワー浴びてくれたんだけどなー。しかたないなー。」
ひっ!?背筋に寒気が、ってこんな感覚なんだ。できたら一生知りたくなかった。
「そういえば女の子のお風呂の仕方おしえなきゃなー。」
め、目が笑ってないっ!!
結局、普通に力負けして風呂場に押し込まれた。
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「さてっ!!女子のお風呂はっ!!大変ですっ!!」
妙にテンションが上がっている。
「これから光希ちゃんにはそれを体…というか頭で覚えてもらいます!!」
嫌だなぁ……
「まず髪をしっかり櫛でほぐす!!」
櫛とか使ったことほとんどないんだけど……
「次に熱すぎないお湯で十分に髪と頭皮の汚れをよ~く落とす!!シャンプーはそれから!!」
シャンプーのボトルに伸ばした手をはたかれた。
「シャンプーはきちんと泡立てる!!小刻みに頭皮を洗うイメージで!!終わったらしっかりと洗い流す!!少なくても3分、出来れば5分はすすいでっ!!」
途中からほとんどされるがままになっていた。髪というか頭がサッパリした気がする。
「明日からは自分でやってもらうからね!!」
うげぇ。
「次は体!!……お湯は温度変えずにでいいからっ。そこのスポンジ取って!!ボディソープ泡立てて!!」
言われるがままにスポンジを取って、ボディソープを……何これめっちゃ泡立つ。
「その泡を使って手で体を洗ってね。肌が傷ついちゃうからね。」
ふわふわしてて、ちょっとだけ楽しくなってきた。
「最後によく流して終わりだよ!!」
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「明日からは一人で毎日やってもらうからね。ホントは髪も乾かしてもらいたいけど……そこは私がやるよっ。」
ふぅ。疲れたー。そういえば何か忘れてるような……
ドアを開けてリビングに入ると、出汁の匂いがした。
「うどんのこと忘れてた……」
意外にも美味しかったのは、流石の技術だなぁ、と思った。