決意!!
朱里の私服をただ言われるままに着せられる。いや、抵抗はもちろんしたよ?けど、全く思い通りに体が動かないの。『女子化のへーがいだ。』『体に慣れるまで無理しちゃダメ。』って朱里に言われた。僕、もう子どもじゃないんだけどな (子どもだけど)。なんとかしてスカートは履かないことを条件にとりつけた。心がつらい。
「これも着てみよっか♪」
「そういえばさ。」
「ん?」
「元に戻る方法はないの?」
「あるよ?」
朱里の顔には、清々しいまでの笑顔が浮かんでいる。
「その薬は女子化薬の効果が切れかけのときに飲まないと意味無いけどね。」
「……」
「全力を尽くして作ったから……効果は一年とちょっとは続くよ?一年後になって戻りたかったら、戻してあげる。」
「……」
こうなると、六年生の福本 光希として、もとの学校に戻って卒業することは、もう諦めたほうが良さそうだ。朱里を信じるなら、一年間でいいんだ。そうすれば、男に戻れるかもしれない。
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「じゃあ次はこれを着てね〜♪」
「……」
差し出してきた妹の手には、紺の布地に白の縁、軽量化を突き詰めた結果、まだ肌寒いこの季節にとても似合わない服が握られていた。
学校の水着…だよね?
「別にスカートじゃないでしょ?」
だからといって、やっていいことと悪いことがあると思う。
結局、今はまだ肌寒いからダメ。と強くいったら、しぶしぶ引いてくれた。
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僕に着せたいらしい服は、どうやら全部着たか断ったかしたらしい。そういえば、両親になんの相談もしていなかった、と朱里が呟き、早急に朱里と一緒に両親に洗いざらい全てを話した後、今後の生活について相談した。が、両親はふわふわしている。無邪気に、実は娘が欲しかったと喜んでいる。この家族大丈夫だろうか……
それはそれとして、今後の生活で、僕としては、年下に混ざるのは、さすがにやめた方がいいと思ったので、そのまま別の人間として中学一年生になることがいい。
また、友人にこの姿を見られたくない、という気持ちもあるので、ここから離れたところにある叔母さんの家に住んで、そこから遠くの中学校に通うことになった。
一応は今の小学校を卒業して、ということになるらしい。安心した。今の友達に会えなくなるのは悲しいけれど、一生会えないわけではないことを僕は知っている。また一年後、何もなかったみたいにまた戻れるんだ。それまでは我慢、我慢。
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僕は、しばらく女子として生きていくことになる。名前は……漢字はそのままで読みだけ変えよう。
「光希」と書いて「みつき」。生まれてはじめて声に出したはずのその名前は不思議としっくり来た。
よし、僕は今日から、福本 光希だ!!