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裏エースですよ、佐藤くん  作者: うまひ餃子
8/15

一連の流れと言うヤツは確かにある



 鬼コーチの暴挙により、地獄ランニングに続いて練習開始となった。

 が、私のテンションは著しい低下の一途を辿っている。

 理由は明白である。

 しんどいのである。



 「づがれ゛だぁぁぁぁぁ」

 「鬱陶しいのぅ、おんどりゃあ。ちっとは黙ってやれっぺや!」


 

 そんな私めの態度に腹を立てているのが、201番鬼澤 勇人くん。キレッキレのオールバックボーイである。見た目からしてとっつきにくい奴かと思いきや案外コミュニケーション取ってくれる子でした。


 

 「しんどいもんはしんどいんだからしょうがないでしょう、鬼さん」

 「誰が鬼じゃ!」

 「え?コーチが鬼?言うねえ鬼澤くん」

 「何サラッと冤罪でっち上げとんじゃ!シバくっぺよ!」


 この様に茶化すとおもろい反応を返してくれるのが、彼である。

 何気に彼こそが常識人枠なのかもしれない。


 「佐藤! 真面目にやれよ!」


 炎上男に正論で怒られた。

 地味にショック。

 

 「わぁーった、わぁーった」


 二回繰り返す返事という奴は大抵分かっていない場合に見られる反応らしい。

 すぅぅ


 「(´;ω;`)ブワッっちこぉぉぉぉーい!!」


 

 天邪鬼とはよく言ったものである。





 にしても、皆上手いな、と思う。

 はっきり言って何故俺程度の奴が呼ばれたのか理解に苦しむ。


 超絶気に食わないが、やはり炎上マンの野球センスはずば抜けている。

 コーチの奴を見る目がアツいぜ。

 そして、奴に次ぐ、25番域成(いきなり)、48番三沢(みさわ)

 両者ともメインポジは投手っぽい。域成はサウスポーで三沢は右投げ。

 投手多いな、おい。

 この三人が第一集団。グループカースト最上位って奴。


 次の中間集団が、77番の猿から101番内田、124番佐川、149番絹。

 内田は三塁手、佐川は外野手、絹は二塁手とのこと。ちな、情報源は猿。

 この短期間にちゃっかりしっかり情報を仕入れている辺り、おさる式コミュニケーションちからに関してはグループ内で群を抜いていると言えよう。


 そして、最後が我々下位集団。

 180番遠藤、185番砥部、201番鬼澤、214番佐藤でございます。

 遠藤は外野手らしい。



 こんな三つの集団ではあるが、先述した通り俺以外の奴らは皆「コイツ・・・・デキる」な動きを見せている。折角の機会なので、技術的なことも色々尋ねてみよう。



 「ヘイ、絹やん!ショートバウンドを見切るのどうやってんの?」

 「え?えっとぉ、打球の回転を見て何となく、後は動くだけと言うか・・」

 「へっ、へぇー、ほぉーん」


 才能がダンチ過ぎて言葉も出ねぇYou!

 そんな、「何となく出来るんです」言われても困るぜ、全く。


 「ウッチー、強い打球にどうやって反応してるカンジ?」

 「そんなもん、勘に決まってんだろJK(常識)

 「そんな常識知らんのでYK(よろしくぅぅ)!」


 こいつもか。

 この才能魔神どもめ!



 「鬼さんや、俺はどうやら来るべき場所を誤ったらしい」

 「しゃーねーべ、俺で良いなら後で教えてやっから。だから鬼さんはやめろよな」


 何だかんだ言って優しい鬼さんでした。




 ◇




 「今日はこれまでとする!今日だけはグラウンドの整地はいらん。今から10分後に各自荷物をまとめてバスまで集合するように!」


 「はい!今日一日ありがとうございました!」

 『あざっしたぁー』

 「明日もよろしくお願いします!」

 『お願いします!』


 何故か俺が音頭を取っている不思議。

 練習途中から何時の間にかそういう役割を押し付けられていた罠。


 「それと、日程後半からは他グループとの試合も行っていく。その際の全てをお前たちに一任する!空き時間などでしっかりと話を詰めておくように!」



 と思っていたら、最後に弩級の罠ががが

 練習ではめっさ指示細かかったのに、試合は放任主義?

 皆、大小様々だが動揺を隠せないでいるのは一律なようだ。

 しかし、我々にはそんなことより重大な案件があるのだ。


 「とりあえず、集合時間を破らないように!さっさと準備しようぜ!」


 あのキチックコーチのことだ。

 時間を守れなかったら、「バスに乗るのは荷物だけで良いようだな。よし、お前らは宿まで走って行け」とか真面目に言いそうだもんな。

 つか、そんなことになったら確実にグループMの中から死者が出ちまうよ。


 「そやな~」

 「佐藤、どちらが早く集合場所に行けるか勝負だ!」

 「い、急がなきゃ」

 「手伝ってやっから、遅れんじゃねえっぺよ、砥部」


 およそ一名を除き大丈夫そうだな。

 つか、貴様は勝負せずにはいられん症候群か何かなのか?



 とりあえず、バスの中で皆爆睡していたことだけは確かだった。


 


 佐藤 大地 の 体力 が 大きく 下がった

 佐藤 大地 の 経験値 が 大きく 増えた

 佐藤 大地 の センス が 微増 した

 グループメイト の 評価 が 上がった

 コーチ の 評価 が 僅かに 上がった

 円城寺 投解流 との 友好 が 深まった

 猿渡 文貴 との 友好 が 深まった

 砥部 飛丸 との 友好 が 深まった

 鬼澤 勇人 との 友好 が 深まった

 

 

 




 「さて、コーチ諸君。事前に伝えていた通り、今日一日で各々が担当するグループ内から代表内定選手(・・・・・・)をそれぞれ一名ずつ決めてくれたかと思う。では、早速Aグループから行こうか」


 正狩泰芯という傑物の言葉は簡潔である。

 故に力強く、並の者なら委縮してしまうのが常であった。


 「それでは、私が推すのは・・・


 次々と有望選手たちの名が挙がって行く。

 それこそ、当確と言える選手たちばかり。

 当然と言えば当然なのだが、予想通りと言うことは、予想を覆すナニカに欠けると言うことと同義であった。

 正直、正狩という男は失望していた。


 「次はグループMだな」



 返って来た言葉を聞くまでは。



 「はい、グループMですが。今の所検討中です。ですので、この場での発言は差し控えさせていただきたく思います」



 一瞬、会議室が完全な沈黙に包まれた。

 皆がグループM担当コーチの言葉に虚を突かれた形となった。

 しかし、日本最強の男の立ち直りは早かった。



 「そりゃあ、現時点でコーチの目に適う選手がいなかったってことか?」


 その目は鋭い。

 しかし、コーチがその視線に怯むことはなかった。


 「いえ、私が判断を下し切れないというだけです。申し訳ありません」


 一定の深さまで下げられた頭。

 しかし、その姿には少しの委縮も見られなかった。


 「ほう、そんなに有望な奴らだらけだったってか?」

 「・・・いえ。単純にこの段階で線引きをしたくないから、ですかね。私的な理由で重ね重ね申し訳ありません」


 コーチは何処か楽し気であった。

 まるで懐かしい何かを見つけたかのように。

 その様子に、正狩という生きる伝説は笑みを浮かべた。


 「なるほど・・・。分かった。グループMの推薦枠(・・・)は潰す。当然、その旨を選手たちに伝えることは禁止な」

 「はい」

 「それじゃ、次で最後だな。グループN。・・・・



 それから数十分して指導者たちによる会議は終わりを迎えた。

 皆が席を離れて行く中、座席を立とうとするグループM担当コーチに声が掛かった。


 「小野寺ぁぁぁ、」

 「なんだ正狩」


 それは上司であり、気の置けない友人であり、鎬を削り合った好敵手であった。


 「オイオイ、仮にも上司にタメ口はねえだろ?」

 「会議は終わった。つまり、仕事の時間は終わったと言うことだ。それに何より、常に誰にでも対等な口を利こうとする貴様はどうなんだ」

 「俺は良いんだよ。だって俺だからな」


 笑いながらそう口にする男の顔は何処か稚気を孕んでいた。

 童心と言っても良かったかもしれない。

 

 「それで?用件は何だ」

 「おう、ちょいと確認しときたくてよ。オメーが決まり事を破ってまで見極めたいナニカって奴が知りたくてな。おら、さっさと吐けや」

 「それなら会議で話した通りだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 「いーや、何かある。俺様の勘がそう言ってんだ。さぁ、キリキリ吐け吐け」

 



 それから、幾度かの押し問答が続き


 「あー、埒が空かねぇ。なら、自分で見て判断する。文句は言わせねーぞ?」


 我慢できなくなった男が駄々を捏ねるに至ったのだった。


 「・・・・・・仕方ない。ただ、選手たちの邪魔になるようなら叩き出すからな」


 そして、そんな同級生(上司)の我が儘を渋々受け入れるのが同期(部下)の悲しい宿命であった」





 正狩 泰芯 の 注目 が ちょびっと 傾いた

 


 


 佐藤 大地 12歳 身長169cm 

 ポジション:投手 左投げ右打ち

 MAX98km/h 球種:ストレート カーブ

 能力:《ツッコミ》《短気》《怒髪天》《非情》《煽り》《度胸》《太胆浮敵》

 称号:《益荒男》


 好敵手:円城寺 凪解流

 敵  :乙女たち

 仇敵 :神界 真


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