慎みは母のおなかの中に
涼子ちゃんのノブドンから回復した某はホテル脇の練習場にやってきました。
オカシイ、我、風呂にいるはず・・・
サルをシバいていたら、コーチさんに
「元気が有り余っているなら、練習して来い」
というまさかの指令を謎のプレッシャーと共に受け敢え無く現着した次第。
あの人、俺のこと嫌いだよね。
俺何かしたっけ?
練習中、ふざけて怒られ
試合には出ようとせず
出れば負け投手
うん、そりゃ菩薩様でも鬼の形相待ったなしですね。
気を付けよう、マジで。
てか、ホテルの傍に練習スペースがあるってすごい(語彙力の低下)
近隣に配慮した防音性マックスの練習場にはそこそこ人がいるようだ。
うーむ真面目ちゃんどもめ。よーやるわ。
ワイと一緒に来たのは猿、鬼、砥部、域成、三沢あとこっそり炎上マンそれに、
「おい、あれ」
「海布の権藤じゃね!」
「うわぁ、生権藤とかヤバい」
何故か、ダンマリ高校球児の権藤氏が付いて来ていた。
涼子ちゃんも来たそうな素振りだったけど、流石に女子を夜に連れ出すのはアレかな~と思い権藤氏に諫めてもらった。
その代わりと言ってはアレだが、権藤氏はサインしまくって涼子ちゃんの機嫌を取っていた。
サンキュー、ゴッド。君の犠牲は忘れない。
「権藤さんやっぱり知名度高いっすね。視線が凄いですよ?」
「・・・・・・」
相変わらずの無言デフォである。
コミュニケーションという言葉をご存知だろうか?
「サトやん、周囲の視線が痛いわ、これ」
「年代最速投手ってのはやっぱ別格だべな~」
「う、うん。こんな、ぷ、プレッシャー、き。キツイよぉ」
砥部ちゃんの心が二次被害でヤバいことに。
恐るべし、権藤大吾!
相変わらずの無表情です。
「まぁ、気にしててもしゃーなしだから、さっさと自主練始めよーぜ」
当初の目的を忘れちゃあいかんよなぁ。
で、問題は振り分けなんだが。
どうすっかなぁ。
「とりま、猿と砥部は壁役やってもらって構わん?」
「任しとき!」
「う、うん」
じゃあ、投手の方は
「イッキーと三沢先に投げてや。で、それぞれ俺とコイツと後で交代」
「分かった」
「・・・承知した」
「で、鬼さんはトスバッティング。機を見て猿と交代。トスは投球練習してない投手陣で」
「妥当だべな」
こんなもんで良かろうか?
まぁ、問題が出て来たら臨機応変にと言うことで。
それでは、夜練開始!
◇
「鬼さんや、どうだい?」
「んっ、もうちょい低めのっ、くれっ」
現在、私トス上げ中。
このトスが案外難しい。
一定の間隔で、なるべく同じ位置にボールを持って行かねば、打ち手は練習にならないのである。
鬼さんは低めの球を練習したいらしい。
確かに鬼さん、低め得意じゃないからなぁ。その分高めの球には鬼強いけど。
「了、解、でーす」
アウトロー、アウトロー、インロー
え?同じコースに投げないと意味がない?
そんなバハマ。
狙ったコースにボールが来ることなんか、まずないでしょ。
「ッチィ。佐藤もっと寄越すべや!」
ほうら鬼さんもそれが分かってるから文句言わないでしょ?
断じて俺の性格が悪い訳じゃないんですよ。
にしても、鬼さんのスイングは何時見ても掬い上げてるなぁ。
フライアウトの多さに納得だね!
でもまぁ、上手く当てりゃあ難なく長打コースに飛ばすからなぁ。
そんな鬼さん、ちょいと駄弁っているとどうやら地元にオサナナジミなるナマモノがいるらしい。
口煩くて、喧しい奴とのことらしいが、鬼さんのハニカミが眩しすぎて辛いです。
なんで俺の傍には幼馴染なる存在が見当たらないのか。
かくもこの世は不平等に満ちている。
「チクショウがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おい、アイツ」
「ああ、なんというトスのスピード・・・」
「しかも、各コーナーに寸分の狂いもなく、だぞ」
「!!!」
強い感情は良くも悪くも原動力となる。
しかし、それが本人の望む形で実を結ぶのかは定かではない。
◇
「あーっ!」
ウホッな輩が出たのかと警戒して尻を隠したが、どうやら違うようだ。
ん? 何やらお客さんだ。
なんとな~く見覚えが。
「おい、モブ顔!」
コイツ余程ヌッコロされたいらしい。
人の身体的特徴をディスるとは、ウンコミテーナ髪型しやがって球児の風上にも置けない糞野郎だな!
え、ナニカ?
「はい?どうされました?トイレはあちらですよ?」
一緒に髪も洗い流して違う型にして来やがれ!
「便所じゃねぇ!おい、テメー俺を忘れたってのか!!」
「えええ?ぼかぁ、君なんか知らないよぉ~」
こういう時、海鮮一家に婿入りした旦那さんの口調ほど煽り要素があるものを俺は知らない。
やはり長寿番組は偉大である。
「ざっけんなコラァァァー!!
いやぁ、最近の子は怖いなぁ。
急に大声を出すなんて。
「何処にでもいそうな顔してるくせに、この輝かしい個性の塊、南雲 光太郎様を忘れるって有り得ねーだろ!」
アリエルリン!
って言って分かる人がどれ位いるだろうか。
イタキスは良かった・・・
はぁ、俺のヒロインは一体何時現れるのだろうか。
「勝負だ薄味野郎!!」
はぁ
「聞いてんのかよ、おい!」
いくら、佐藤くんでもね
「無視すんなよ!」
限界と言うヤツがね
「うがああああああ!こっち見ろォォォ!」
あったりするんだよね
「よし、そこまで言うならやったろう。後で吠え面掻くなよ」
仏の顔も三度まで。
しょけいじゃ
◇
「さぁ、突如として始まりました。南雲光太郎選手と佐藤大地選手の一打席勝負!実況はワイこと猿渡文貴で、解説は世代最速の剛腕ピッチャー権藤大吾さんにお願いしとります。権藤さんお願いしますぅ」
「・・・・・・」
「それでは両選手の紹介をしてまいりましょう!先ずは南雲選手。個性的なキャラクターに独特な髪型がトレードマークな彼ですが、情報によるとバッティングはガチガチのミート重視で、苦手なコースは特にないそうです。今選考会における打率はなんと驚異の5割越え!そして足も速く、堅実な守備力も持っているとの情報も」
「・・・・・・曲者だな」
「それに相対するは佐藤選手。えーっと、極々平凡で何処にでもいそうなフツメンフェイス。しかし、そのキレやすさは天井知らず。その強気なマウンド度胸は天下一品!これでもかと打者の内角を抉って来るスタイルから今選考会で着いた渾名が《インナーデビル》!」
「・・・・・・」
「そして、聞く所によると、この両選手には浅からぬ因縁があるとの情報も入っており、その辺りも含めて楽しみな所です。おっと、どうやら互いに準備が整ったようです。それではプレイボーッ!」
「・・・・・・」
何やらお猿が喚いていたけど、それは後でじっくりO.HA.NA.SIするとして。
この目の前のクソ野郎(文字通り)をどうするかだが、以前修学旅行で戦った時は三打席勝負で一安打一三振一死球だったよな。
つまり引き分け
うん、引き分けということにしておこう。
バッティングスタイルはバリバリの俊足巧打タイプで、打ち取りに行くより読みを外して三振狙う方が安牌なやつだったな、確か。
見た目と言動喧しい癖にバッターボックス入ると、ピタッと静かに構えるのは気持ち悪いったらありゃしない。
「プレイボーッル!!」
オープンスタンス気味で構えてるけど、打たれたのはアウトロー直球だった筈。
ふむ、ならば初球は当然、
そ こ だ よ な ! !
振りかぶって投じた一球はクロス軌道で左打者の外角に逃げていく。
良いカンジ。
「ボウッ!」
ちっ、コース掠ってんだろ。
振りに行けよな。
あんなキャラしてるくせに選球眼もあるってなんやねん。
ギザウザスだわー
構えは変わらず、無駄がないカンジが更に腹立たしい。
業腹ものである。
なので二球目は決めました。
内角高め を ど う ぞ め し あ が れ ?
「ットライーク」
ヘッドがしっかり動いたな。
初球は微塵も揺れなかったのに。
内角狙い?ウーン分からん。もう一球放れば分かるだろ。
更に厳しく、内角低めにでりゃ!
キィーーーン!!
右足を大きく一塁側に踏み出し、体に巻き付くかのようなスイングで一閃。
字にするとこんな感じ。
打球はファールゾーンに入るというより、フェアゾーンを外れると言った具合に逸れていく。
ストライクゾーンから僅かに外れてたんだが、命拾いしたんだろうか?
せふせふ。
「権藤さん、今の当たりはどないでしょうか?」
「厳しく攻めた分、ファウルになったとも言えるが、あの当たりを見て安堵できる投手はいない」
「ほうほう、つまりは南雲選手がさとや、佐藤選手を追い込んだと?」
「カウントで言えば追い込んだのは投手だ。打者はタイミングを合わせてきている」
「然り然り」
「事実はこの二点。しかし、最後にものを言うのは実力だ。運など介在しない」
「それは・・・今年の甲子園で権藤選手が敗れた試合のことを暗に言うて張るんですかね?」
「・・・・・・」
「失礼しました。実況に戻りますぅ。カウントは1-2。佐藤選手有利ながらも南雲選手のバッティングは脅威たっぷり。サイン交換を行い、佐藤選手ゆっくりと振りかぶります」
外角、内角、内角ときて相手はタイミングぴったりと。
セオリー通りならカーブでタイミング外して打ち取るのがベスト若しくはベターなんだろうよ。
でもなぁ、それやったら|殺≪や≫られるぞって俺の第六感が警報発令してる訳でね。
意外と当たるのよ?
それに、こいつに決め球カーブ使うのは嫌なんだよなぁ。
逃げるわけじゃないけど、なんか癪に障る。
おお、つまりは一択と。
なる、単純じゃん。
難しく考えるこたぁないのね。
ならば、コースは?
安牌に外角?ナイナイ。
意表を突いてど真ん中?俺はアホじゃないよ。
なるほど、これも一択だったわけですね?
おろ?
砥部っちもそういう感じ?
意外と強気じゃん。いいねいいね。
なんだか乗ってきたよー
右足を少し引く。
肩に余分な力は入ってねえな。
左足を一塁に向け、右足を持ち上げる。
お、なんかいい感じ。
グラブを前に出しながら、体を傾ける。
お、体重移動がスムーズやぞ。
グラブを引っ張りながら、左腕を振り下ろす。
ボールを喰らいな!!
白球は指先を離れ、一直線に打者の膝元へと突き進む。
バットが振るわれる。
「ストライーック、バッターアウッ!!」
バットをすり抜け、ミットに収まったそれは投手の勝利を物語っていた。
「うっし・・・
ナグモざまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
佐藤 大地 は そこそこ の 経験値 を 得た
権藤 大吾 の 評価 が 上がった
グループメイト の 評価 が 上がった
南雲 光太郎 の 評価 が 上がった
世間 の 評判 が 下がった
南雲 光太郎 の 友好度 が かなり 下がった
佐藤 大地 12歳 身長169cm
ポジション:投手 左投げ右打ち
MAX100km/h 球種:ストレート カーブ
能力:《ツッコミ》《短気》《怒髪天》《非情》《煽り》《度胸》《太胆浮敵》《火付け役》
称号:《益荒男》
好敵手:円城寺 凪解流
敵 :乙女たち
仇敵 :神界 真




