やられたらやり返す。ただそれだけのこと。
アナタは右の頬を打たれました。
アナタの友が左の頬を打たれました。
さて、その後アナタは如何したでしょうか?(問4、配点10点)
A1:己の受けた仕打ちに怒り、やり返す(採点、3点)
A2:友の受けた仕打ちに怒り、やり返す(採点、2点)
A3:アナタを打ったのは友で、友を打ったのはアナタなので痛み分け(採点、2点)
A4:倒れた友を武器として打った相手を仇打ち(誤字に非ず)。(採点、10点)
つまり、自分が一番大事というだけの話ですよ。
三回の攻撃、七番、八番が見事に凡退し、早くもツーアウト。
打席には孤軍奮闘する九番、ピッチャー、佐藤くん。右打席に入ります。
相手投手の菱川くんは現在被安打0、奪三振5の快投中。
そんな彼にとって相対する打者は格好の鴨さんって、感じなのだろうか。
悲しい。
しかし、そんなクソ雑魚野郎も無策ではないのですよ。
少しぐらい策を練ったりは出来るんですって。
まぁ、それが実を結ぶかどうかは期待できないけども。
初球、アウトコースの直球。
キレがすごいのなんのその。
ただ、速さで言えば三沢の方がえげつない。菱川何某も十分に速いのだが。
というか、小学生の時点であの速さの三沢がオカシイだけである。
とりま振っとこうか。演技大事。
「ストライック!」
狙わずとも空振りできるわ、この威力。
ギュインってなんやねん、ギュインって。
ったく、センス溢れる人たちは見ててヤになるね、ホント。
でも、凡人だって只やられるだけの舞台装置じゃねえんだよ。
ちょっとここで、4番くんの投球内容を振り返ってみようか。
佐川 ストレート、ストレート、スライダー
猿渡 スライダー、ストレート、ストレート
円城寺 ストレート、ストレート、スライダー、フォーク、スライダー、ストレート
砥部 スライダー、ストレート、ストレート、スライダー
内田 ストレート、ストレート、スライダー
鬼澤 ストレート、ストレート、フォーク
遠藤 ストレート、ストレート、ストレート
絹 ストレート、ストレート、スライダー
ストレートがゲシュタルト崩壊を起こしそうな字面だが、これをじっと睨めっこしていると、ある規則性があったりする。
それこそが唯一の突破口だろうなぁ、と思ったりしたが何分打撃能力の高くない某ではそれを口にしたところで信憑性は低い。
なれば、自らが結果を出してチームメイトの指針となるべきだろう。
何と言う献身性であろうか、これは全米も涙するに違いない。
まぁ、俺の勘が当たった所で、結果が出せるかというと確率はかなり低い。
バットに当たれば儲けものだろう。
まぁ、それでも、確率ないよりはだいぶマシだろう。
狙うは二球目、球種はストレート。
来たっ、あれ?
「ボーッ!」
直球か。
外れたな。にしても明らかボールだったな。
ん、視線を感じる。
捕手からか。
まさか、我の空振り演技が大根すぎて警戒させたか?
不味いなぁ。
ボールとは言え、直球二球続いたぞ。
俺の見つけた規則性《直球は二球続けて投げる配球》ががが。
三球連続投げた場面もあったけど、それはツーストライクに追い込んでいた場合だけ。
カウントは1-1。
打者の様子をこまめに確認する捕手。
バランスの取れた好投手。
お、菱川が首振った。
恐らく、リスクをなるべく避けたがり、これまで通りの配球で行こうとする捕手。
恐らく、それなりに自らの実力に自信を持っている投手。
恐らく、両チームにおいて最弱の214番。
というか、この選考会最弱の自信すらある。
以上の推測から、次に来る球の予測ぐらい俺でも容易に立てられる。
バットは拳一個ほど短く持ち、立ち位置は僅かに後ろに、タイミングは、まぁ、運任せと言うことで。
狙いはまたもや直球一本。
ピッチャー振りかぶって第三球。
その整ったフォームから放たれたのは直球。
そして、コースはアウトハイ。
「ビンゴォォォォ!」
ミートに意識を注ぐ。
飛距離は気にしない。
だって金属バット様だもの。
当てて、振り抜く。
感触は、今までにないものだった。
甲高い音を残し、白球はグングンと伸びていく。
「ファウルボーッ!」
うん、知ってた。
つか、マジかよ。
もう正にって、打球だったのに。
ワイの人生一の当たりがファールとは。
あーあ、これで直球狙いがバレちった。
いや、元々バレてただろうけど、ここまで露骨な当たり見せたらもう投げてくれんよなぁ。
もう一球ぐらい直球ないかなー。ないよなぁー。
その後、当然のように佐藤くんはキレッキレのスライダーを喰らい三振に終わりましたとさ。
格式美、格式美。
ちくしょー。
◇
結局、相手の投手から点を奪うことも出来ず、我々チームMは0-3で敗れた。
結果、
《突発クエスト:勝負だ!が終了しました》
《判定結果、クエスト失敗となりました》
《これによる《能力》の獲得はありません》
《これによるペナルティーはありません》
なんとか、マイナス能力を取らずに済みました。
まぁ、良かった良かった。
因みに俺と円城寺の投球成績はこちら。
佐藤 大地 投球回5 失点3(自責点3)被安打5 四死球0 奪三振3
円城寺 投解流 投球回2 失点0 被安打0 四死球2 奪三振3
うーむ、圧倒的敗北だな。
四死球に限れば別だけども。
それ以外は見事に炎上マンに軍配が上がっているのが現実です。
まぁ、ぼちぼち巻き返して行きたくはありますが。
今は堅実に基礎練、基礎練。
「今回は僕の勝ちだ!」
「ドンッ!」と効果音付きそうな感じで輩が来ました。
これはあれかな、「ドンッ!」とド突いたらええんかな?
佐藤くんがアップを始めました。
「こらこら、ジョージはそう煽ったらあかんやろ?」
サルが割り込んで来たと思ったら、久し振りに良い事を言った。
よし、バナナ買ってやろう。
「まぁ、本人が気にしてねえっぽいからいいんでねえか?」
鬼さんや、それじゃあ、まるで佐藤のメンタルが鋼のように聞こえてしまうじゃないか!
俺は繊細なんだぞ!断固として扱いの改善を要求する!
「ほんに大丈夫そうやなぁ~、いらん心配やったか」
実際、凹んだりとかはないです。
だって、あまりにも他人との実力差がはっきりしているから、開き直っちゃうんですよね~
それに、経験値が結構入った気がするんだよなぁ、ウマウマ。
でも、登板はもう結構ですので・・・
◇
試合後、コーチさんや超高校級高校球児たちによる解説付きの反省会が各グループでありましたこわさ。
非常に有難い事なのですが、非常に眠くなる今日この頃。
体育の後の授業ってくっそ苦行だよね?
「で、最後に佐藤」
はい、元気です!
今日も佐藤は世界に安心と安全をお送りいたします!
「自身でも分かっていると思うが、投打の両面であらゆる要素が足りていない」
そうDEATHネー
つか、そんな直球で死球当てに来なくても良いと思うんだけども。
「打撃については日頃からバットを振るように。振った分だけそれが力になる筈だ。Bチーム4番との打席で見せた決め打ちは悪くなかったからな。しっかりと狙い球を仕留められるようになれば、きっと面白くなるぞ」
うぃっす。
前向きに検討致す所存であります。
「投球については、第一に手持ちの球の質を上げること。失点は何れも甘い球を痛打された結果だ。一球一球を意識して普段の練習に励むように。それと中途半端に新球種に手を出すなよ。今は質を高めることに注力しろ。分かったか」
イエッサー!
だけれども、コーチの気持ちが、言葉が、痛いです。。。
しかし、何か俺にだけ厳しくないですかねぇ?
気のせいなら良いのですが・・・
まぁ、言っていることは最もだからぐうの音も出ねえのですが。
ぐう。
「権藤、他に何かあるか?」
鬼コーチさんから話を振られたのは、190cm越えの長身に如何にも鍛えましたって感じの筋肉体した短髪青年。眼光が鋭いから、人付き合いで苦労してそうな、第一印象。
んで、基本無言がデフォみたいだから、そんな雰囲気と相俟って中々の非・堅気っぽさが凄いです。
そんな青年さん。
今夏、甲子園大会においてベストバウトと称される投手戦を屑野郎と演じた通称《悲運のエース》にして今秋におけるドラフト一位候補の逸材、権藤大吾と言う。
ド屑がその甘いマスクで圧倒的異性人気を誇るように、権藤氏はその圧巻のピッチングスタイルで圧倒的な同性人気を誇る。
因みに、拙も断然権藤氏派ですが何か?
「・・・・・・小野寺コーチの仰る通り、です。・・・・・・自分からは、何も」
以上、そんな権藤選手からのリポートでした!
って、そりゃないぜ!
憧れの選手からの言葉って奴は良くも悪くもデケェんだ。
恩師の有難い説教や家族からの温かい応援ってのも確かにデケェが、何も分かってねえガキンチョに一番効果があんのが憧れから自分に向けられた言葉なんだよ。
テルミーアドバイス!プリーズ、プリーズ!!
「・・・・・・飯を、食え」
私の熱い視線に折れたのか、権藤氏は投げやりな一言。
あざーっす!兎にも角にも一言頂けました!
いや、でも、これはあどう゛あいす?
「では、ミーティングは以上だ。明日もダブルヘッダーなので早く寝て疲れを残さないように。解散」
『あざっしたー』
そっこー風呂入ろうと思って部屋を出ようとすると、突如扉が襲い掛かって来た。
扉の先制攻撃。
クリティカルヒット。
佐藤に致死的ダメージ。
「ぐぉっ!」
「失礼します!あの、権藤選手は、あ」
無防備で喰らう一撃ってホント痛いのね。
佐藤くんは蹲るしか選択肢がございませんでした。
食ったもんが出そう。
「本当にごめんなさい!」
犯人は可愛らしい少女でした。
副島涼子さん。本日の第一試合で快投を見せた美少女選手である。
申し訳なさそうな顔も、イイね!
「いや、全然平k、って訳じゃないけど、大丈夫だから」
こういう時強がってしまう男という生物はホントアホだと思う。
でもよ、目の前にとても申し訳なさそうにしている美少女が居たら誰だって許すと思うのですよ。
「サトやん、生まれたての小鹿みたく足がプルプルしとるで?」
「くっ!」
「こ、じ、か。クククッ」
おどれらは後で必ずシバく。
でも、今は目の前の美少女よ。
「副島さん、権藤選手に会いに来たんでしょ。行って来なよ。多分、今が最高のチャンスだよ?」
今選考会で試合以上に少年少女たちが熱を入れるのが、夜の自由時間である。
自由時間とは文字通り自由行動が許される時間である。
つまり、練習しようが、自室で寛ごうが、憧れの選手のもとへ行こうが本人の自由なのだ。
そして、多感なお年頃な少年少女たちの取る行動と言えば《突撃、憧れの選手は○○です!》一択な訳でして。
御多分に漏れず、副島さんも憧れのヒーローに突撃して来たのだろう。
突撃喰らったのは俺だったが。
「いや、でも」
目線がチラチラ無口の方に行ってますよ?
にしても少女なら下衆の方に憧れそうなもんだが、珍しい。
「ええからええから、おっちゃんの言うこと聴いときな。チャンスの女神は前髪しかないんやで?」
おろおろする彼女の後ろに回り背中を押す。
これは善意です。決して下心などありません!
「ご、ごめんね!ありがとっ!」
副島さんは権藤氏のもとへ行きましたこわさ。
ふぅー、一仕事終えたが、俺にはまだ仕事が残っている。
「さぁ~て君たち、覚悟はいいかい?特に猿」
「ヒェッ」
皆も友人を弄る時はその塩梅に注意しようネ!
佐藤 大地 の 経験値 が 溜まった
佐藤 大地 の 基礎能力 が 上がった
権藤 大吾 の 評価 が 上がった
副島 涼子 の 評価 が 上がった
佐藤 大地 12歳 身長169cm
ポジション:投手 左投げ右打ち
MAX98→100km/h 球種:ストレート カーブ
能力:《ツッコミ》《短気》《怒髪天》《非情》《煽り》《度胸》《太胆浮敵》《火付け役》
称号:《益荒男》
好敵手:円城寺 凪解流
敵 :乙女たち
仇敵 :神界 真




