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裏エースですよ、佐藤くん  作者: うまひ餃子
12/15

育成初期の試合パートは厳しいけど楽しい




 憂鬱とは正に今のような状態を指すのだろう。




 恨めしい眼でジーっと見つめてくるヤンデル・オ・レナゲールマン。


 それを華麗にスルーしてアップに励む仲間たち(死語)。


 そんな最悪な雰囲気の中、問答無用で投げろオーラを放ち続けるコーチさん。



 「これはあれかな、孔明の罠的な?」

 「コウメイってなんや?」


 これだからおさーるは。

 諸葛亮氏を知ってる俺がまるで厨二かぶれみたいに見えるジャマイカ!


 「スゲー偉い人だよ」

 「ふーん、そんな人がおんねんなぁ」


 なんと知能指数の低い会話なんだ。

 インテリジェンスの欠片もあったもんじゃないな。

 

 と、内心毒づきながら猿渡とキャッチボールして肩を慣らしていく。

 あー、試合がもうすぐ始まるぅぅぅ。

 うつだー。


 「サトやんってやっぱ変わっとるよな。練習はめっちゃ気合入っとんのに、試合になるとテンション下がるて。ふつー逆やろ?」


 うるせー。

 俺は試合パートより育成パートが好きなんだよ。

 溜めに溜めた経験値で能力が上がるあの瞬間こそが至高なんだよJK(常識)

 試合パートとか作業ゲーだろKT(苦痛)



 「それは人それぞれ異なる感性と言うヤツがあってだな「佐藤!」はぁぁ」


 その背に大炎を纏いデンジャラスマンがカットイン!

 あー、その勢いで先発の座も奪ってくれるとひじょーに助かるんだが・・・



 「この試合、どちらが相手を抑えられるか勝負だ!」

 「えー」



 ピコン

 《突発クエスト:勝負だ! が発生しました。》



 えー、俺返事してないのにー。

 強制スタートとか、神ゲー要素よ、何処行った?


 『(今クエストは投球内容での勝負となります。打撃成績は考慮されませんのでご注意下さい)』


 まぁ、これは当然ですわな。

 打撃含めた勝負とか話にならんし、主にワイが。


 ポンポンと気安く肩を叩く猿にイラッとしたのはここだけの話。

 それでは早速両チームのスターティングメンバ―を紹介しよう。

 先ずは我らチームM。


 一 中 佐川

 二 遊 猿渡

 三 右 円城寺

 四 捕 砥部

 五 三 内田 

 六 一 鬼澤

 七 左 遠藤

 八 二 絹

 九 投 佐藤



 はい、グループHの試合から全く変わらないオーダーです。

 砥部の負担を減らす為打順を変えようかとも思ったけれど、やっぱり四番捕手(キャッチャー)の浪漫には勝てなかったのです。

 ソーリー砥部。


 さて、続きまして対戦相手チームBのスターティング表がこちら


 一 捕 船井

 二 三 土生

 三 中 白石

 四 左 大嶺

 五 投 菱川

 六 一 世田川

 七 左 西村

 八 遊 由井(ゆい)

 九 二 長万部(おしゃまんべ)


 控えは豪傑路(ごうけつじ)南土佐海(みなみとさかい)



 

 うん、控えの二人の方が強そうに見えるよなぁ。

 名前のパワーワード感が半端じゃねぇ。

 見るからに小学生離れしたガタイしてるし、つかなぜベンチスタート?



 「ワイの情報網には掛かってないけん何とも言えへんわ。でも、見るからに曲者やなぁ」

 「そうだっぺな。あれはデキるべ」


 いやいやいやいや、明らかに堅気じゃねえだろ。

 つか顔が小学生じゃないし。スーツ着たらすぐにその筋から声掛かるリアルフェイスだろ。

 え?皆さん、その「只者じゃないっ・・・、」で片付ける感じ?



 「それでも菱川の前には霞むわなぁ」

 「んだんだ」

 「ほ、本物の菱川くんだぁ」


 何故か皆様相手チームの先発推しだし。

 アイツそんなスゲーの?

 確かに気に食わない位顔整ってるけども。


 尋ねたらびっくりされた。

 チミは潜りですか的な目で見られた。

 おい、貴様ら気付け。俺の他にもう一人目線を彷徨わせている円城寺(アホ)がいるぞ。


 そんなこんなで私は猿と鬼さんからしっかりと説明を受けました。

 名前は菱川(ひしかわ)大器(たいき)

 同世代の中ではずば抜けてる選手の一人らしい。

 メインポジは餅の論でピッチャー。

 現在、我々の世代で上から数えて五指に入る奴らしい。

 ついでに言うと何処のポジも軽く熟すらしい。

 ビブスの番号は4でウチのアホより上と来たもんだ。

 尚、菱川グループなる財閥の御曹司で成績優秀、眉目秀麗、性根清涼らしい。


 ナニソレ、何処の乙女ゲー攻略キャラですかね?

 とりあえず、俺が勝てそうな点がない事だけははっきりと分かりましたので、早速コンテニューを

 え、出来ない?

 うん、やっぱりこの世界(ゲーム)、クソゲーだわ。



 溜息を吐くと幸せが逃げると言うが、果たしてそれは正しいのだろうか。

 不幸だから出るのが溜息なのではなかろうか。

 哲学者佐藤、爆誕である。



 「サトや~ん、戻ってきぃ~。そろそろ始まるで~」



 如何やら地獄の扉は目前らしい。

 一先ず頑張ってはみようと思うが、結果は保証しないので悪しからず。




 ◇




 プレイボールで第一球、投げました。

 鋭い金属音、振り返ればファウルゾーンに切れて行く打球。


 うん、なんかもう先が見えている気がしてなりません。

 何だよ、先頭打者初球本塁打的なアレを狙ってたのかい?

 結構良いとこ投げたつもりだったんですけど・・・


 「バリバリ打たれてくんでよろしくぅぅぅぅ!」


 返って来るのは野次罵声。

 おかしい、ここは温かい声援が返ってくる筈なんだが。


 

 気を取り直して第二球。

 あ、逆球。

 踏み込んだ打者の手元に向かって行って、判定はボール。

 ヒッティングゾーンに入らなくて良かったな。


 三球目は首を振って内角の直球を所望してみる。

 右打者の内角、つまり


 ク ロ ス ファ イ ヤー


 うらっしゃああああああ!



 内角きわっきわに線を引くイメージでどうじゃ!



 ボールは打者の胸元を見事に抉った。

 見逃しでストライクツー。

 キモティィ


 あれえ?

 何だか打者くんの顔色が悪い気が。

 まぁ、えっか。他人を気にする余裕など我にはないのだ!



 第四球、続けて内角の直球。

 おろ?バッターくんが身体を退いてストライクスリー。

 見逃し三振です。ちょっと大げさな気がする、がラッキーということで一つ。



 続いてのバッターはど、ど、どしょう?

 あぁ、はぶ(・・)ね。って、読めんわ!



 逆切れのファーストストレートォォォ!

 見事に打ち返されました。

 あー、こりゃヒットかなぁぁ。


 ズサァァ、パシッ、シュッ!

 「アウッ!」


 何とサル吉が見事な捕球から流れるような送球を見せつけツーアウト。

 やっぱ守備に限ってはピカ一だな、アイツ。

 サンキュサンキュ。


 グラブを向けて礼を示す。

 やっぱり親しき中にも礼儀って大事よね、って何を驚いた顔をしとんだお前。

 もしや、私が礼を言うような人に見えなかったと?ほほーん、どうやら君とはお話する時間が必要みたいだねぇ。


 それでは次の打者をさっさと片付けてベンチ裏へ行こうか。

 ちょっと俺、切れちまったよぉ。



 三番打者は初球を高い高いセンターフライにしてアウト。

 ヒィヒィ言いながら抑えきることが出来ました。お前ら褒めろ!


 「サル、ナイスプレー!」

 「猿くんGJ(グッジョブ)!」

 「KO(奇跡が起きた)


 うん、とりあえず貴様ら其処に並べや、順番に打ち首じゃァァァ!




 ◇




 うん、とりあえず菱川くんすご。

 直球はえーし、変化球キレッキレ。

 どうやったら君みたいになれるの?と訊いてみたい所だ。


 一番佐川、二番猿渡共に手も足も出ず三振。

 で、続く才能マン同士の勝負はと言うと。



 「ファールボーッ!」

 「ットライィーク!」

 「ボウッ!」

 「ファール!」

 「ボォーッル!」

 「ファール!」


 うん、競ってます。

 ハイレベルな攻防とは正にこれを指すのだろうというような感じ。

 あ、凡人の諦め鼻ほじ会場はこちらでよろしかったでしょうか?



 そんな感じでボーっと見ていた訳ですが、三沢氏にキャッチボールせよと急かされるので止む無く肩を整える佐藤くんでありました。



 結局、赤髪(アホ)茶髪(御曹司)に打ち取られました。

 センターライナー。うん、飛んだ場所が悪かったさ。



 二回表

 先頭打者の四番くんは構えが大きい。

 直球待ちな気がするが、とりあえずボール一つ投げてみましょう、ていっ。


 ぐわしゃかきぃぃぃん!!!


 

 よし、申告敬遠のコマンドは何ボタンかな?

 おろ?そんなものないと。ほー。

 ざっけんな!あんな物凄い音させて特大ファール見せられたら誰でもビビるわ!


 

 砥部の要求は・・・カーブか。

 あんまりコントロールに自信ないから大振り四番くんに投げるのはちょっとなぁ。

 でも、打たれるときは直球変化球関係ないし、いっか。


 えーっと、河原で胡散臭いおっさんに教わった投げ方は、っと


 『一つ、レッグアップからダウンに移行する際は両手で二つ弧を描け!』


 最初は意味分からんかったなぁ。

 

 『一つ、ステップは感覚で!』


 それは最早投げっぱなしと言うヤツでは?


 『一つ、コントロールは大きな円を投げる瞬間まで絞って!』


 何となく分かるが、おっさん野球魂大好きマンだろ。


 『一つ、肩に力を入れるな、腹に込めろ!』


 小学生には厳しいですぜ。

 まぁ、やるけども。


 『一つ、投げる瞬間想像しろ!


 「スイングは泳ぎ、体勢を崩し、それでも悔し気にこちらを見つめるしか出来ない打者の無様を、だっけ?」


 あのおっさんも大概性格悪いよな。

 まぁ、俺にはピッタリな教えだったけども。




 指先から放たれたボールの軌道が分かる。

 格ゲーのボタンを押す前にヒットが分かるような感覚って言ったら良いだろうか。

 浮き上がったボールは、打者を嘲笑うかのようにバットをすり抜け、深く沈み、キャッチャーミットに吸い込まれる。



 「ットライーック!」


 球審の声が上がる。

 気持ちイイぜ。

 

 とりえずカーブのおっちゃんありがとう。

 今度供物(10円駄菓子)お供えしとこ。

 つか、あのおっちゃん名前も知らねえな。

 やっぱり不審者として通報しとこ。




 佐藤 大地 の ストレート 経験値 が 増加 した

 佐藤 大地 の カーブ 経験値 が 増加 した。

 ???? の 評価 が 上がった


 


  佐藤 大地 12歳 身長169cm 

 ポジション:投手 左投げ右打ち

 MAX98km/h 球種:ストレート カーブ

 能力:《ツッコミ》《短気》《怒髪天》《非情》《煽り》《度胸》《太胆浮敵》《火付け役》

 称号:《益荒男》


 好敵手:円城寺 凪解流

 敵  :乙女たち

 仇敵 :神界 真




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