表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏エースですよ、佐藤くん  作者: うまひ餃子
11/15

口だけ野郎には強制を(労働)



 ジョバンニ2点を失ったものの、域成氏はその後を0で凌ぎ続けました。

 毎回ランナーを背負いながらも粘りのピッチングで初回以降は追加点を譲りません。

 お見事!


 が、流石に疲労が見えて来たのでここら辺がスイッチポイントかなぁ。


 「イッキー次の回から」

 「三沢に代える、だろ?分かってる」


 おう、中々話が早くて助かる。

 なんつーかイッキー一皮剥けた感じ?

 よく分からんけど。

 ま、細けーことはいいんだよ。


 「では次の回からは三沢を投入します!頼んだ!」


 つぎは三沢、君に決めた!

 ぼくですか?まだゆっくりしていたいので・・・


 「ここまでものぐさやと却って清々しいわ~」

 「佐藤、俺が投げる!」

 「しゃぁぁぁらっぷ!貴様は出番があっても最終回じゃ!それまですっこんどれ!」

 「本格的に監督に成り切ってっぺよ?」

 


 チームメイトたちがやいのやいの言いますが、そこでぶれるのは三流です。

 ワタシはビシッと一本筋を行きますよぉぉぉ。


 「で、イッキーが頑張ってるんだから、チミたちもさっさとあのモブ野郎打てや。佐藤を打てずして貴様らアピールできると思ってんのか?おん?」


 そう、只今5回表で、スコアは0-2。

 ここまで、佐藤という輩に上手く躱されている我らがグループMなのでした。

 ぐぬぬ、佐藤めぇぇ。


 「私怨も私怨やなぁ」

 「みっともねえべ」

 「ダセェなJK(弱者)


 黙らしゃぁらっぷ!

 と、言っているうちに先頭打者のエンドゥーがあっさりフライ打って戻って来たぞ。

 貴様、あっさり打ち取られるとはなんじゃあああ!そこに直れェェ!!


 「佐藤、ならお前が代わりに出るか?」

 「エンディーお疲れー!次は頼むぞー!!」

 「変わり身早すぎるやろ」

 「んだんだ。えげつねぇ」

 「さ、佐藤くん、め、目が笑ってないよ」


 

 危ない危ない。

 コーチの魔の手は油断できんから困る。

 心無いグループメイツが何やらヒソヒソ話しているが知ったこっちゃない。

 さぁ、三沢くん、キャッチボールしようか。



 結局、この回も得点をあげることは出来なかった。




 ◇


 


 三沢行則という投手は非常に分かりやすい。

 それは投手としての分類並びに投球スタイルが、である。

 直球のスピード一点特化、これに尽きる。

 小学六年生にして彼の最高球速は111キロ。

 今選考会の全投手の中で球速に限れば、上から数えて三番手に入る逸材なのだ。


 つまり、彼の生命線は何と言っても直球である。

 組み立てのベースは直球。カウントを稼ぐのも直球。決め球も直球。

 評するならば《直球馬鹿》という言葉が相応しい人種である。




 そんな三沢少年の立ち上がりであったが、



 「ットライーック、バッターアウッ!」

 「・・・・よし」


 絶好調であった。



 「さ、三者連続三振だ!」

 「すごいスピードボールだ!」

 「スケールが大きい子だ。将来が楽しみだな」


 ギャラリーの熱も一段と増したように思われる。

 まぁ、目に見えて際立ってるからなぁ。

 なんつーか、炎上野郎とは違う感じの華があるし。



 「おっけーい!ナイピッチ三沢っち!」

 「・・・・あぁ」


 相変わらず口数は少ないがちゃんと反応はしてくれる。

 あ、

 

 「さがわぁぁぁぁ!でろよぉぉぉぉ!」



 うちの一番打者が何時の間にかカウントノーツーになってるジャマイカ!

 何と言う俊足っ振り(誤用)

 と、思ったら三球目を叩き付けるバッティングで打球はワンバウンドして三塁手(サード)の頭上へゆっくりと落ちていく。

 三塁手が取ってすぐスローイング諦めましたわ。

 内野安打Huuu!

 何と言う俊足っ振り(本日二度目)


 いやぁ、僕はねアイツやればできる奴だと思っていたんですよぉ(視線キョロキョロ)

 スピードスター佐川、如何にも速くお荷物(得点)を届けてくれそうではないですか!


 

 『二番、ショート、猿渡君』


 何処からともなく聞こえて来るウグイス嬢のアナウンス。

 フロイラインよ、貴女は何処(いずこ)に。

 ま、異世界(ゲーム)だから何でもありか。


 おっと、相手守備は前進でバント封じの体勢を取っているぞ。

 さるのことを典型的2番打者と見積もっているのだろう。

 その通りだよコンチクショウ!

 

 初球は高めの直球で様子見、判定はボール。

 投げると同時に一塁手三塁手が猛チャージして二塁手遊撃手がそれぞれ一塁二塁にカバーに動く。


 つか中堅手の慶本何某まで内野のカバーに来てんじゃねえか!

 おのれ等、この短い合宿中に何処まで連携仕込んどるんじゃ!

 少年野球ってもっと、ワイワイガヤガヤ俺が!ワイが!おいどんが!って感じじゃねえのか?

 なんでサインプレーを着々とやってんだよ!(逆切れ感)


 憤りに溢れていると、モンキーが打席外して尋ねて来た。


 「シュバババ!(どしたらええ?)」

 「シュ、ババ!(とりあえずガンバ!)」

 「シュバババッバ!(そりゃないで!)」

 「シュバババッババババ!(俺は選手の自主性を重んじる監督なり!)」

 「鬼ッ!サトやんのアホゥッ!(シュ、シュッシュ!)」

 「あっ、言いやがったな猿!この野郎テメェ!(シュ、シュシュシュシュッシュッシュ!)」


 「君たち!いい加減にしなさい!」

 『すいません』


 球審さんに雷を落とされてしまいました。

 私としたことが・・・


 球審さんから急かされて奴は不承不承に打席に戻った。

 ったく、これだからゆとりウッキーはよぉぉぉ。


 気を取り直して相手P第二球投げました。

 ウッキーこれをバスターで打ち返した!

 って、佐川やんにスタートのサイン送ってねぇよ!

 どうすんだよ!


 と、慌てているのは僕でした。

 佐川スタートしてました。

 ベンチの中にも一塁ベースにも見つかりません。


 ついでに、猿の叩き付けた打球はワンバウンドしてから二塁手の頭上に落ちていく。

 その間にランナーは二塁へ到達。

 当然猿はアウトとなり、ワンアウトランナー二塁。


 続くバッターは、神に二物(顔と才能)を与えられた我らが疫病神(ヒーロー)


 『三番、ライト、円城寺君』


 赤髪の奇行子ならぬ貴公子。

 ムカつくことに打席に入る姿も、構えを取るまでのフォロースルーも凄く様になっている。


 相手Pのエセ佐藤くんもどうやらイケメンを警戒しているご様子。

 キャッチャーとのサイン交換に掛ける時間がモンキーと比べて大分長い。

 そして漸く投げた第一球は外へ逃げるスライダー。

 コースは中々良い所へ投げ込んだと思う。

 外枠ギリギリ、微かに高かった程度のほぼほぼ完璧なそれを奴は




 カキーン





 難なくライト方向に弾き返し、打球を確認するまでもないと言った態度でベースランニングを始めた。

 塁審さんが腕を回す。

 同点ツーランホームラン。

 何と言うか人間本当に呆気に取られると思考が止まるもんなんですね。

 チームメイトたちも相手チームもその一撃に衝撃を受けているっぽい。



 中でも打たれた佐藤何某君のショックは尾を引きそうな感じでした。

 「え、ナニが起こった?」って思考停止と言いますか、寧ろ思考放棄かアレは。



 直視したくない現実って辛いよな。うんうん。

 自分と同類だと思っていた同期が癒し系美女と結婚すると知ってからの一週間は想像を絶するものだったなぁ。

 



 つまり、某が言いたいのは気持ちを切り替えるのって存外難しいよねってことで、



 (相手Pの崩し時だよね)



 と黒い笑みを浮かべてみる。



 『ピッチャー佐藤くんに代わりまして副島(そえじま)さん。八番ピッチャー副島さん』



 おうふ。

 まさかの即交代とはよぉ。

 流石の俺もぉ予想外だったぜ。


 


 ん?




 副島さん(・・)




 もしかして、女の子?








 続く我らの主砲砥部、五番内田は敢え無く三振に打ち取られたのであった。




 何時の時代も女子がツエーのは変わらんのですなぁ。

 トホホ。





 ◇





 結局、試合は二対二のまま最終回まで続き、引き分けでゲームセットとなった。

 ちな、私は代打で登場し、見事にレフトフライに終わりましたこわさ。


 

 副島さんテラ強すぎ。

 直球ワイよりスピードあるんですが。

 かなりショックですわ、いやマジで。


 

 んで、その副島さんは燃える男をロックオンしてました。

 ワイ?無論アウトオブ眼中ですがナニカ?


 

 美少女の熱い視線も軽くスルーとか流石イケメン、腹立つわぁ。

 取り敢えず、登板機会なく終わり機嫌のよろしくない炎上マンをしばきながら私はふと思いました。



 「次の試合はオメーが先発だからそのジト目をやめろ。ぶっ飛ばすぞこの野郎?」

 「サトやんも大概口悪いなぁ」

 「黙れ猿。おやつバナナ没収」

 「うぎゃぁぁぁぁ、やめてぇぇぇな!」


 マジでサルかよコイツ。

 ま、いいや。


 バナナをポイして猿を黙らせて思考の海に戻ろうか。

 この試合でなんとなぁく分かったことが幾つかある。


 一つ。

 ビブスの番号はある程度の基準にはなるが、確たる指針にはなり得ないと言うこと。

 例を挙げるならばうちのイッキーこと域成くん。

 番号は25と選考会参加者の中でも上位に位置するが、この試合ではそこそこ打たれていた。

 まぁ、結果なんてコンディションに左右されるものだが、それにしてもあっさりと相手チームに打たれていた印象が強い。

 逆に短いイニングとは言え、48番の三沢はノーヒットピッチングで相手を完璧に封じ込めていた。

 107番の副島さんも鬼強かったし、ビブス番号を額面通りに受け取るのは好ましくないと考えられる。

 


 二つ。

 この世界の女子選手は世界観(ゲーム)通り男子選手とガチンコ対決出来るスペック持ちが居ると言うこと。

 今まで女子選手に出会わなかったから、いねーのかなぁと残念に思っていたけどそうじゃなかった!

 しかも美少女!

 おいでませと手ぐすね引いてお待ちしております!



 三つ。

 能力値はどんな選手だろうと一律年齢にそぐわしいものであるということ。

 小学生でいきなり140キロ投げる奴が居たらそんなクソゲー即ポイする自信ありますわ。

 まぁ、一部例外(炎上マン)もいるようではあるが、それはあくまでも同世代の中でずば抜けているという話であって、世代を超えて他を圧倒するとまではいかない訳でして。



 こんな所でしょうか。

 一先ず某は次の試合をどうやって切り抜けよ(サボろ)うか策を練ろうかと思います。



 え、やだなぁ、コーチさん。

 ヤル気マックスですってば。ええ。

 なら、次の試合は先発しろ?

 またまたぁ、オーダーは選手の手に委ねられて

 はい!分かりましたぁ!粉骨砕身頑張りまっす!



 だから、その絶対零度を抑えてくれると大変助かります。



 この世はままならないものである。

 とりあえず、炎上マンをどうやって宥めるか考えなきゃいかん。

 あー、メンディ。




 佐藤 大地 は 経験値 を ちょびっと 手に入れた。

 佐藤 大地 の やる気 が 下がった。

 



  佐藤 大地 12歳 身長169cm 

 ポジション:投手 左投げ右打ち

 MAX98km/h 球種:ストレート カーブ

 能力:《ツッコミ》《短気》《怒髪天》《非情》《煽り》《度胸》《太胆浮敵》《火付け役》

 称号:《益荒男》


 好敵手:円城寺 凪解流

 敵  :乙女たち

 仇敵 :神界 真



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ