ユイの話
はじめまして。私の名前は、ユイっていうの。ユ、イ、覚えた?これからクラス一緒だよ、よろしくね。そうよ、純アジア系。ルーツは全員日本人だって、珍しいでしょ。だからユイは日本の名前。お父さんが調べて付けてくれた名前なの。ウェンディは私のこと「おしゃべりユイ」って呼ぶけど、それって失礼よね、そう思わない?
もちろんクローンよ、今時、純アジア系の天然物とかいないでしょ。私、1000年ぶりのクローンだって。ひどくない?もっと間隔を短くしてよ、みたいな。なんでこんな美女を1000年も眠らせていたのか、ってもちろん冗談よ、あはは。
双子のお姉ちゃんはね、3人いたよ。昨日公開されてすぐ見たんだ。写真見る? 順番にユキ姉ちゃん、ユカ姉ちゃん、ユナ姉ちゃん。ユキ姉ちゃんがオリジナル。みんな名前にユが付くんだよ、だから、私はユイなわけ。ほら、みんな似てるでしょ、一卵性双生児みたいなもんだから当たり前だけどさ。
身長はね、私が一番ちっちゃいのよ。ユナ姉ちゃんが、一番背が高くて細いの。
でしょ!ユナ姉ちゃん、クールビューティーよねぇ。私もこうなれるかな。私が一番、誕生日は遅いし、8月生まれだからね、たぶんこれから背は伸びるんだよ。
あはは、私の童顔はきっと個性なんでしょ。確かに髪型もあるかもね、前髪上げてみようかしら、どう?随分印象変わるんじゃない?ちょっと前髪切るのもありかな。え、染めないよ。黒髪いいじゃん、「闇の堕天使」みたいな。え、意味は分からない。なんとなく言葉の響きが格好良くない?
疲れたね、地球の歴史って勉強する意味あるのかな?どうせ私達、一生行かないわけだし、国境は船の中で関係ないし。だいたい戦争ばっかりしてて、意味わかんないよね。バカみたい。船が地球を出発した後だけで何度戦争してるんだって話、ほんと意味わかんない。なのにちっとも問題は解決してないじゃない?歴史とかいっても誰がどこを征服したとか、なにが面白いのかさっぱりだわ。そうよね、しかも全部後付けの理由ばっかりじゃない。作り物ね。学問って言えるのかしら。
そうね、そう言われれば、船の中の歴史を勉強するのは、もっと意味無いわね。なにも起こってないもの。じゃあ歴史なんて全部無意味ってことよ。昔のできごとを知りたければ、AIに聞けば良いだけだわ。でも試験はあるわけで、理不尽よね。
喫茶店?行こう、行こう。西街区の喫茶店はね、初めて来るんだ。へえ、おしゃれね。学校が移設してラッキーだったわ、だって飽きちゃってたもの、私ずっと南街区だったから。あ、私はミルクも砂糖もたっぷりよ、苦いじゃない?ありがと。
選択科目、アートを選択しようかな、絵を描くの好きだし。ほらこれ、ダンカン先生の似顔絵。上手いでしょ!楽器はね、あんまりやったことないからなぁ。楽しいかな?チュンリンは古典をやるんだ?!そっか、原書を読めるのは、なんとなく格好いいよね。格言とか古典語で言っちゃうんだ、えっ、違うの?私一つ古典の格言知ってるよ。Age quod agis (アゲ・クゥォド・アギス) どうよ、頭良さそうでしょ?「あなたがやるべきことを、あなたはやりなさい」っていう意味、深いでしょ。ラテン語よ、もう4000年以上前の言葉。あはは、そうね、宿題をちゃんとやれってことだわ。
なんでハイスクールはテストが多いのかしら。おかしくない?ほとんど毎週テストがあるって。あと調べりゃわかることを覚える意味無くない?まったくもう。ちゃんと私勉強したのよ、なのに沈没。参ったわ、放課後補習よ、補習、はああ。テレサも?おお、仲間、仲間。でも、あれって絶対問題が悪いよね、悪問よ悪問。歴史の試験じゃなくて、国語の試験よ、あれじゃあ。問題をAIが作ったのなら、AIはバカね。
うん、秘密にするよ。絶対誰にも言わない、約束する。えっ、そうなの?ヤンが急に?ずっと初等部から一緒だったじゃん。そういえば、ウェンディは最近ルイスと仲良くしてたもんね、それじゃない?ヤキモチというか、独占欲というか。それにしても急に告られても困るわね。で、ウェンディとしては、どうなのよ。ヤンが嫌いなわけじゃないでしょ?まあね、それはそうね、彼氏彼女っていうのはね。
私は男子と付き合ったことないからなあ。えっ、ホントだよ。アリとは仲が良いだけ、幼馴染みだからね。うーん、実はある。ジュニアハイスクールの第2学年の時。相手は秘密ね、狭い船の中だし悪いじゃない?昔のことだし。私は彼氏とか興味なかったからさ。相手が勝手に盛り上がっちゃってね。困った。
それもそうね。そうよ、ちゃんと話した方が良いよ、あいまいにしているとこじれるから。でも誤解されてもイヤじゃん、友達のままが良いってハッキリ言った方が良いよ。ある意味、残酷だけど。でも、ほら、ウェンディの気も変わるかもだし。ヤンは、悪い奴じゃないしね。あはは、ピンとこないって言うのはわかる、ウケる。でもさ、変に気を持たせるのは、良くないよ。きちんと話した方が良いよ。
お兄ちゃんが、ちゃんと片付けないからダメなんじゃない。床にそんなに物を置くからわかんなくなるんだよ。ボックスは見た?なんで無いの。誰かに間違えて貸しちゃったんじゃないの。棚にも無いの?借りておいて、借りたことも忘れるなんて最低。弁償してよね。結構大事にしてたんだから。はあ、なに言ってるの?ホント最低。言い訳するの?あ、そう。それ言い訳だよ、言い訳すんなよ。待てない。いますぐ返して。イヤだ。またそうやって言い訳する。いますぐここに持ってきて。関係ないでしょ、そんなこと。なんでそういうこと言うの?お兄ちゃんが無くすのが悪いんじゃない。謝ってよ、ここで謝ってよ。
いいね、行こう、行こう。リアルの公園のピクニックは良いよね、ほんものの草の匂いが私は好き。わかった。そうね、あと誰かもう一人誘おうか?ああ、北街区の人なのね、名前も知らないよ。そうなんだ、珍しいね。じゃあ後でメッセしてね。
チャンスなんだからね、もう二度とない機会かもよ。はあ?なに言ってるの。お兄ちゃん、ヘタレね、ヘ・タ・レ。私は、妹として情けないよ。これだけ私がお膳立てしてるんだから、バシッと決めちゃいなよ。いいじゃない、減るもんじゃないし。当たって砕ければ良いのよ。そうよ、無責任よ。なんで私が責任感を持たなきゃいけないのよ。
はじめまして、ユイです。こっちがお兄ちゃんのウィルです。テレサとは親しいんですか?そうなんですか。男性では珍しいですものね。素敵だと思います。え、これアランさんの手作りなんですか?凄く美味しいです!えへへ。それほどでもないです。ただパンに挟んだだけ。恥ずかしいです。そうなんですか?あはは、大変ですね。え、いいんですか?行きます、行きます。えっと、後で連絡します。是非!
あ、私、そろそろ用事があるので、ごめんなさい。えっ、ありがとうございます!じゃあテレサ、お兄ちゃんが、それ全部食べちゃわないように見張っててね、って冗談だよ、またね。
わざわざ、ありがとうございました。私、背が低いし童顔だから、子供に見られるんです。でもでも、去年から2cm伸びたんですよ。そう、成長期なんです!あ、楽しみにしています。はい、今日はご馳走様でした。あと、送って下さってありがとうございました。
はあ?進展無し??テレサとなんの話をしてたの。蟻?なんで蟻の話?バカじゃないの。ムードもなにも無いじゃないの。なにやってるのよ、苦労してセッティングしたのに。お兄ちゃんは、そんなんだから、いつも振られるんだよ。なんで女の子と二人になって蟻の話をするの?知らないからね、私にできることは、ここまでよ。あとは自力で頑張んなよ。まったくもう。
テレサ、なんでもっと早くアランさんを紹介してくれなかったのよ?!そうよ。興味が無いというのは昔の話、アランさんには興味大ありよ。格好いいし、優しいし、おまけにケーキ食べ放題だよってのは冗談だけど、超絶良い物件じゃないの。彼女とかいるのかな?調べてよ。えええ、それ無理無理無理。それはあり得ないでしょ。テレサは、いじわるね。じゃあそうしようか。そうね、その後、直接攻撃ね。わかった。
でもなんか知ってるでしょ、あんた万能AIなんだから。個人情報だから教えられない?役立たず。なんで教えてくれないのよ。だから、そういう話じゃなくてさ。バカじゃない、それでもAIなの?ヒントくらい提示するのはいいじゃない。じゃあ質問を変えるよ。はあ?いいじゃない、誰にも迷惑かけないのだから。ええ、そうよ。じゃあ私が玉砕したら、あんたの責任だからね、そこんところ、よく考えて答えた方が良いよ?!この、わからず屋、ポンコツAIはもう黙ってていいよ。
ああ、そうね。いいんじゃない、別にどっちでも。ええ、相手にされなかったわ、子供扱いよ、信じられる?女の子が思い切って告白したのに。全然よ。ケーキで誤魔化すなって。違うわよ、困ったのはこっちの方よ。最悪ね、本当に。断り方ってもんがあるじゃない。年の差を理由にするって、どういうことよ、意味わかんない。納得いかないから、つきまとってやろうかしら。なんでよ。じゃあテレサ、Home Coming Dayのお祭りの時にでも、もっと良い物件を紹介してよ。ああ、もう最悪。一週間くらい学校休もうかな、やってられない。ありがと。もういいよ、また泣いちゃうからさ。うん、私は大丈夫。
そうよ、ベタに髪切ったわよ、気分転換よ。前に見せた写真に似てるでしょ。双子のユキ姉ちゃんの髪型を参考にしたのよ、ほら。似合うでしょ。でもさ、こんなに可愛い私を振るってどう思う?目が悪いというか、頭おかしいというか。なによ、人が落ち込んでるっていうのに。わかってるわよ、そんなこと。でも、そういう風に思わないと悲しくなっちゃうじゃない、そういうこと。ありがと。でも落ち込むわ、マジ。まあ、そうかもね。あはは、それは太るよ。でも、いいわね、今度行こう。そうよね。でもさあ。わかった。ありがと、また明日ね。
ねえねえ、聞いた?ダンカン先生辞めちゃうのよ。そう、大学院に行くんだって。あはは、そうかも。だよね、向いてないよね。でも残念だね。結構、私、先生のこと好きだったのに。いやいや、そういう意味じゃないけど。うん、そんな感じ。じゃあ、お別れ会を企画しよう。いや、先生をビックリさせようよ。アリとチュンリンにも言っておくよ。他の学年にも声を掛けようか?そうね、確かに。いろんな意味でね。
ウィル兄ちゃん、凄いじゃん。まさかと思ったよ。いまだに信じられない。見直したよ。どうしちゃったの?まさに愛の力だね!いやいや、褒めてるんだよ。いやあ、信じられん。そうなの?奇跡じゃん。それってストーカーって言うんじゃないの?相手が私ならどん引きするわ。しかし、なにが幸いするかわかんないわね。もしかしたらウィル兄ちゃんのいつもの妄想じゃないの?あはは、冗談だよ。いやあ、でも信じられない。私も見習わないとな。いや、こっちの話。
はじめまして。私の名前は、ユイっていうの。ユ、イ、覚えた?ウェンディは私のこと「おしゃべりユイ」って呼ぶけど、それって失礼よね、そう思わない?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
4代目のユイちゃんは、ひたすら明るい元気な少女です。
なので、文体もそれに合わせて、これまでとは大きく変えています。
ユイちゃんのマシンガントークを、楽しんでくれましたか?
では、縁がありましたら、またお会いしましょう!
あっ、追伸です。
第4話は、短かったので、もう少し暇つぶしになにか読みたいな、と思ったそこの貴方、
https://ncode.syosetu.com/n7340fc/
にアクセスして、「死神見習いと過ごす最後の1年」を是非どうぞ。
すがすがしいまでの、宣伝でしたw
結構、面白く書けたなと思ってますです、はい。
でわでわ