緊急招集
6話
西の酉に入ったサウロは人の流れに逆らって動いた。一人の貴族が西の酉の姿をみて声を掛けた。
「何をしている?西の酉、緊急召集だぞ。」
サウロは何か事が起こっていることを察した。サウロは声掛けを無視し、走った。この場所から離れなければ。
市長に入った西の酉は召集された貴族と高級奴隷たちに命じた。
「西の酉がこの市に太陽と砂の国から手に入れた、秘剣の秘密を知り、奪って逃げた。西の酉を見つけ次第捉えよ。そして、生け捕りにせよ。この場で殺すのだ。」
西の酉に入ったサウロはポリスの端の門にたどり着いた。
ポリスは柵に囲まれていた。門が一つあり、そこまでたどり着いたが門は固く閉まっている。門を一人の力で開けるのは無理だ。
何処かから脱出しなくては…しかし変だな。門番どころか人影がない。先程の人の流れだろうか。
闘技場はポリスの中程にある。いま闘技場には貴族と高級奴隷達が集まっている。サウロはそのことを知らない。しかし、サウロは考えた。人が私と反対に動いていた。私は丘の上の市長の屋敷からそのふもとの闘技場を横切ってきた。丘の上から見たところ、この場所の中心にあるのは闘技場、そこに人が集まっているのか。人がいる場所からは離れた方が良い。
サウロは空を見上げた。そのとき、人が高い見張り台の上に登っていくのがみえた。その者は見張り台の頂に灯火の火を灯した。また何かの合図だろうか。そうだ、高いところに登れば様子が見渡せるかもしれない。
──オーッ、オーッー──
人々の大きな声が聞こえる。何か不穏だ。急ぐぞ。
その頃貴族達と高級奴隷は西の酉を捕まえるために闘技場から動きだそうとしていた。
一人の貴族が言った。
「西の酉を捕まえるぞ、あいつにはうらみがあったんだ。」
また別の貴族が言った。
「西の酉には悪いが、死んでもらうのも面白そうだ。戦士の奴隷達よ。抜かるなよ。」
サウロは見張り台までたどり着いた。見張り台には戦士の奴隷が一人目を光らせていた。まだ、サウロの姿は気付かれていない。サウロはこっそりと梯子を登っていった。
頂上にたどり着く寸前、戦士の奴隷に気付かれた。戦士の奴隷は戸惑った。西の酉の貴族、何故見張り台なんかに、わざわざ来てくれるとはありがたい。皆が集まれば、見張り台の下には降りられまい。
戦士の奴隷は見張り台の青銅の鐘を叩いて、叫んだ。
──カーン──
「おい、西の酉がいるぞー!」